異常受精を繰り返し正常な受精卵が育たない

顕微授精を行っても異常受精が続くのはどうしてでしょうか?

蔵本ウイメンズクリニック 蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990年オーストラリア・PIVET メディカルセンターへ留学。帰国後、1995 年蔵本ウイメンズクリニック開院。JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。久留米大学医学部臨床教授。
相談者 : モモさん(37歳)ショート、ロング、アンタゴニスト法で採卵を3回し、合計28個の卵子が採れましたが、顕微授精を行っても毎回異常受精(2核でなく4、5、7核など)を繰り返し、正常な受精卵は1個のみ(胚盤胞3BB)でした。血液検査の結果、抗核抗体が陽性ということでプレドニン® を飲んでいます。昨年3BBを移植しましたが着床せず陰性でした。現在は治療を休んでいます。異常受精を繰り返す場合はどのような対策があるでしょうか?

異常受精を繰り返す原因には、どんなことが考えられますか?

蔵本先生●血液検査で抗核抗体の値が高く、顕微授精を行っても正常受精卵(卵子由来と精子由来の前核がそれぞれ1個ずつ、合計2個)が非常に少なく、3回の採卵で胚盤胞1個しか胚移植できていないとのこと。モモさんは抗核抗体が陽性であることから「抗セントロメア抗体陽性」ではないかと思われます。セントロメアは染色体のほぼ中央にあり、短腕と長腕が交差する部位に紡錘体が付着しています。紡錘体は卵子の減数分裂の時に遺伝子情報である染色体を均等に分配する役割をもっているものです。自己抗体である抗セントロメア抗体は卵子の紡錘体が付着しているセントロメアと結合するため、均等に卵子染色体が分配できなくなり、その結果、卵子由来の前核が1個ではなく2個以上できる(多前核)異常受精卵となります。抗セントロメア抗体があると、顕微授精を行っても多前核が多くできてしまうのです。

抗核抗体が陽性ということについては、ほかに何か問題がありますか?

蔵本先生●抗セントロメア抗体が陽性の方は、抗核抗体が高値で、強皮症、シェーグレン症候群、関節リウマチなどの自己免疫疾患がみられるケースもあります。念のため、膠原病内科で一度詳しく検査をしてみられたほうがいいかもしれません。異常があれば治療を行うことをおすすめします。

今後のアドバイスをお願いします。

蔵本先生●現在、治療をお休みされているとのことですが、モモさんは採卵された28個のうち1つでも受精をしているわけですから、妊娠できる可能性はあります。正常受精卵の数は少ないかもしれませんが、もう少し頑張って回数を重ね、一つでも多くの成熟卵子を獲得し、正常受精卵ができるよう治療を続けてみられるのがよいかと思います。
 抗セントロメア抗体陽性に対しては、当院の場合ですと、自己抗体抑制の目的でプレドニンR(ステロイド剤)や漢方薬の柴苓湯などの服用をおすすめしています。また、顕微授精を行う場合は、PIEZO(圧電素子)を用いた方法で行います。通常の顕微授精は、先端の尖った針で卵子に穴をあけますが、PIEZOは、先端が平坦なピペットを特殊な装置によって微細に振動させて穴をあけるもので、卵子の細胞骨格へのダメージを少しでも軽くする目的で行うものです。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。