卵子の老化が進み、妊娠率がかなり下がってくるといわ れる 40 代。厳しい状況のなか、妊娠・出産を叶えるた めに検査や治療はどのようなスピードで進めていけばい いのでしょうか。また、年齢とともに増える婦人科系疾 患があった場合の対処法は? 浅田レディースクリニッ クの浅田義正先生に詳しいお話を伺いました。
ドクターアドバイス
卵巣の予備能を調べるAMH検査だけでも早めに。治療方針も立てられます
検査を受けるタイミングや病院を選ぶポイントは?
現在の常識として女性が 40代で結婚するのはそれほど珍しいことではありませんが、昔は 代で不妊治療をしている人はほとんどいませんでした。本来、女性の生殖能力を考えたら、 40代で検査や治療をスタートするのはとても特別なこと。猶予はありません。結婚して赤ちゃんが欲しいと思ったら、すぐに検査を受けていただきたいですね。
不妊に関する基本的な検査はもちろんですが、ほかに必ず受けていただきたいのは卵巣の予備能を調べるAMH(アンチミューラリアンホルモン)検査。年齢に関係なく、卵巣に残っている卵子の数には個人差があります。AMH 値が低ければステップアップを早く進めなければなりません。
採れる卵子の数が少ないと予想されれば、とにかく早く卵子を採って凍結保存しておく。年齢とAMHで治療方針やステップアップのスピードも決まります。
検査や治療を受ける病院を選ぶポイントですが、ひと言でいうと不妊症のことをきちんと理解し、熱意を持って不妊治療に向き合っているドクターがいる施設を選んで欲しいと思います。それを判断するのはなかなか難しいと思いますが、目に見える形としてはちゃんと生殖医療専門医の資格を持った医師がいること。不妊治療を行う施設として厳しい基準をクリアしたJISART( 日本生殖補助医療標準化機関) の認定取得などもポイントになるかもしれません。
医師にどれくらい熱意があるかということは、培養室の設備や災害時のリスク対策などにどれだけのこだわりと費用をかけているかということでわかる場合も。これは施設のホームページなどで紹介されているので、選ぶ際はチェックしていただきたいですね。
どんな治療をどの程度の期間で進めていったらいい?
一般不妊治療においてはタイミング法、人工授精の順序で進んでいくことが多いと思います。検査で異常がなければ、当院の場合、35 歳以下なら半年を目安にまずタイミング法を行い、結果が出なければ排卵誘発をしてタイミングをとる。それでも難しかったら人工授精に進むという流れで治療していきます。
人工授精は35 歳だったら5回、 38歳だったら3回という風に、年齢によりトライする回数が変わってきます。大きな不妊原因がなく、30 代半ばくらいまでの年齢だったら1年くらいかけて一般不妊治療を行うことになりますが、 40代は卵巣予備能が低く、確実に卵子が老化し始めているので、そんなに長い時間をかけられません。
タイミング法、人工授精各1、2 回程度トライして、結果が出なかったら次は体外受精にステップアップするというスピード感になるかと思います。
40代に多い婦人科系の疾患は不妊治療は続けられますか
40代だと3人に1人くらいは子宮筋腫があり、年齢が上がるにつれて子宮内膜症の罹患率も上昇してきます。あまり大きな筋腫があると血液の循環が悪くなって卵子も育ちにくく、採卵もしにくいのですが、不妊治療ができないわけではありません。
まずは採卵をして、できるだけ多くの卵子を確保しておく。疾患の程度がひどい場合は、その後、子宮の手術を実施。術後、子宮が移植可能な状態に回復するまで半年程度かかりますから、高齢の方はその間にも卵子が採れそうならまた採卵にトライします。
1回の採卵で採れる卵子は1、2個程度の方もいらっしゃいますが、貴重な時間を無駄にせずに済みます。担当のドクターに相談をして、最善の策をとっていただきたいですね。
検査のタイミング
生殖機能を考えたら、40代で不妊治療を始めるのは特別なこと。今の 体の状態を確認するためにとにかく早く検査を受けましょう。
病院の選び方
不妊症のことをきちんとわかっている病院を選ぶことが大切。そのために 少なくとも生殖医療専門医の資格を持つドクターがいる施設の選択を。
必要(重要)な検査
基本的な不妊治療検査のほか、必ず受けていただきたいのがAMH 検査。卵巣の予備能を調べることで治療方針も立てられます。
治療の進め方
通常は1年程度かけて行う一般不妊治療ですが、40代の方だと時間 の猶予がありません。タイミング法、人工授精各1、2回を目安に。