年齢が上がっていくことに対する不安や、どんな治療を 継続していけばいいのかなど、不妊治療に対して何かと 悩んだり心配事が増える 30 代。妊娠できる確率、不妊 の原因として考えられること、主治医との向き合い方な ど、相談者から寄せられた質問に大島クリニックの大島 隆史先生が答えてくれました。
ドクターアドバイス
年齢的な悩みや心配事が 増える年代だからこそ、自分をしっかり知りましょう
妊娠できる卵子は4個に1個で、 妊娠のチャンスは1年に3回だけ?
妊娠の確率は人それぞれ。不妊原因をしっかり判断しましょう
インターネットの記事を見たとのことですが、1990 年代後半 に一般女性が最初の月に妊娠するのは 20 〜 25%の確率だとい う論文が発表されたので、25%=4回に1回ととらえたのでしょ う。治療を開始して1年以内に 80 〜 90%の人が妊娠しますが、 全員ではなく個人差があります。
それよりも m さんの気になる点は子宮外妊娠です。原因とし てもっとも多いのは感染症ですが、胚に問題がある場合もありま す。受精のメカニズムは、卵管采に卵子が取り込まれて卵管の膨 大部で精子と受精し、分割を経て子宮へと戻っていきます。その 途中の狭くなった卵管部分を受精卵が通過できるよう広げる役 目を果たしているのが黄体ホルモンです。そのため排卵時に黄体 ホルモンの量が不十分だと子宮外妊娠を起こしやすくなるとい われています。黄体ホルモンの分泌量が少なくて子宮外妊娠した のかもしれませんし、たまたま妊娠できなかった周期なのかもし れません。確率には個人差があることを理解し、不妊の原因がど こにあるのかしっかりと判断して治療に取り組みましょう。
子宮筋腫の開腹手術後、まったく妊娠する気配がありません
開腹手術は原因にはなりません。 それより早めの積極的な治療を
子宮筋腫は、できた場所によって漿膜下筋腫、筋層内筋腫、 粘膜下筋腫の3タイプに分かれます。妊娠しづらいとされて いるのは粘膜下筋腫ですが、それでも妊娠する方もいるので、 筋腫が必ずしも不妊原因とはいえません。また、帝王切開を する前と後とで妊娠率は変わらないので、開腹手術をしたか らといって必ずしも不妊になるということは考えられません。
あずささんの気になる点は、3年前に2回流産していると いうことです。流産を繰り返す原因の約7割は卵子だと言わ れています。39 歳という年齢では卵子の染色体異常が 30% 程度、受精卵の染色体異常が 60 〜 70%になるということが すでにデータでも示されているように、あずささんの年齢を 考えると妊娠する気配がないのは卵子の老化に原因があるの かもしれません。
ではどうすればよいのか。まずは排卵誘発剤を併用したタ イミング療法で妊娠を目指してみましょう。そして、それで も妊娠できなければ別の方法を試してみるなど早め早めのス テップアップを心がけていただきたいというのが私からのア ドバイスです。流産を繰り返しているので反復流産も疑われ ますが、3回続けて流産した方でも妊娠できる確率は6〜7 割あるといわれています。とにかくスピード感をもって治療 にチャレンジしていただきたいですね。
おりものがオレンジ色なのは異常?
心配事を早く解決するためにも 積極的に主治医に質問しましょう
おりものがオレンジ色のようになっているのは、出血が混 じっているからだとは思いますが、ちょっと難しい質問です。 クロミッドⓇ服用3日目ということは月経周期約6日目頃に なるので、その頃なら生理が終わっていない人もいますし、 クロミッドⓇを飲み始めてからなのでクロミッドⓇの影響があ るのかもしれません。これが異常かどうかと言われると「な んとも判断がつかない」というのが正直な答えではあります が、これまでの経験上、おりものがオレンジ色のようだった としても、そのあとの排卵に異常があったという患者さんは 記憶にありません。痛みや不快な感じなどの症状がなく、子 宮内膜も厚く形成されて卵胞も育っているようでしたら気に しなくてもよいのではないでしょうか。
すみれさんのようなケースの場合、卵胞の大きさや子宮内 膜の厚さなどを調べ、総合的に判断してもらうことが最善だ と思いますから、ぜひ主治医に相談してください。不妊治療 中、相談や質問をしづらいと感じている方もいるかもしれま せんが、心配事はなるべく早く解決していただきたいですし、 患者さんは決して安くはない治療費を払って治療を受けてい るのです。すみれさんも、実際に診察している主治医に何で も相談や質問を投げかけ、不安要素を取り除くようにしてい ただきたいですね。