“子どもがいない人生”を歩む選択について

36歳の親友が結婚後すぐに妊娠、出産。私もすぐに授かると思っていました

37歳で結婚、専業主婦に。1年後、不妊治療を開始。

「子どもが欲しい」という一心で治療を続けましたが、43 歳の時、子どもを諦めました。

30代後半とはいえ、子どもは必ず授かるもの

「今年で 61歳、子どもを諦めてから    20年近く経ちました」とT・Tさん。「私が大学を卒業した頃は、    男女雇用機会均等法が整備されておらず、女性は仕事に就いても結婚退職するのが普通でした。しかし、私はやりがいを感じる仕事に就けたこともあり、気づけば   30 代半ばになっていました」。

転機となったのが 36歳の時、大学時代の大親友が結婚したこと。 周りも次々と結婚して親からのプレッシャーも感じ、37歳で結婚を決めました。その大親友が比較的すぐに妊娠・出産したので、「結婚さえすれば、すぐに子どもが授かると思っていて、30代後半とはいえ、不妊なんて考えもしなかった」とのこと。結婚後、仕事を辞めて専業主婦に。しかし、1年経っても妊娠することはなく、近所の産婦人科を受診しました。

なかなかいい結果が出ず暗くて長いトンネルへ

年齢を考慮して、すぐに治療を始めることになったT・Tさん。人工授精からスタートしたものの1年治療しても妊娠せず、主治医からは治療のステップアップをすすめられました。当時、地元に1軒だけあった高度な不妊治療を行うクリニックに転院。体外受精に数周期チャレンジするも妊娠に至らず、 40歳になっていました。

「メディアやインターネットのわずかな情報で治療体験談などを見聞きし、不妊治療で有名なクリニックを知りました。家から少し遠かったのですが、東京のクリニックに通院することにしました」

朝8 時の新幹線に乗り、約2時間かけて東京へ。受付番号は 100番台…。全国から多くの患者さんが通院していることに驚きを隠せなかったとか。

「夫は不妊治療に対して、協力は するけれどあまり積極的でなかったので、私がプレッシャーを感じることはなかったです。それよりも両親、とくに母親からは遅かった結婚、子どもがいないことなど母親世代の価値観の押し付けのようなものがありました」

今でも覚えている母親とのやりとりがあるそう。

「祖母の葬儀の時、親戚が集まっているなかで子どもがいないことに触れられると、『ねえ、この子情けないでしょ』と。私をかばうどころか非難されショックでした」

東京の評判のいいクリニックで  診てもらえればすぐ妊娠できると、かなり期待していました。しかし、実際はなかなか妊娠しませんでした。体外受精を試みるも受 精せず、顕微授精へとステップアップ。排卵誘発剤が毎日の注射から飲み薬に変わり、体への負担 は軽減したものの「治療をやってもやっても結果が出ず、暗いトンネルから抜け出せない…そんなジ レンマを感じていました」。

43歳、やりきったと思えて治療終了を自分で決断

治療を続けながら、専業主婦とはいえ今でいう在宅ワークをするも「働いても治療費どころか、交通費で消えてしまっていましたし、これまでの貯蓄も治療に使い  果たしてしまいました」。金銭的にも苦しくなるなか、悔いが残らないようゴッドハンドといわれる院長先生へ治療を懇願する手紙を書いたのだとか。治療の希望は叶ったものの、妊娠に至らなかったこの頃から「いつまで治療を続けるのだろう」という思いが増してきました。

「その当時、たしか8回目の体外受精から安くなると聞きました。割引があるからこのまま続けるのか、悩みました」

その間、半年ほど治療を休んで、 在宅ではなく外で仕事をする機会に恵まれ、「仕事をする生活もいいかな」と思うようにも。治療もお休みしていたので、体調も整い、いいレベルの卵子を採取できました。受精卵の段階でランク付けされることにも疑問を感じつつ、当 時おそらく一番の技術で胚盤胞を移植。しかし妊娠しませんでした。

「先生からは『次はいつにしますか』と次回の予約を促されましたが、治療をやりきったとの思いから『これまでありがとうございました』と伝えました。 43歳、子どもを諦めた瞬間です。一番の理由 は年齢と金銭的なこと。自分で決  めたので、きっちりと区切りがつきました」

自分を責めないで。多様な生き方を認め合う社会

「治療中は、励ましそして慰めあえる仲間に助けられました。私より一 回りも若く、遠くから通院されてい     た方もいらっしゃいました。若いからこそプレッシャーも多かっただろうと思いますし、つらく、きっと治療をやめるという決断も難しかったのだろうと思います」と当時の仲間を思いやるT・Tさん。

現在は、NPOのスタッフとして、女性のさまざまな生き方を応援し、またジェンダー問題にも取り組む彼女から、最後にメッセージをいただきました。

「子どもをもつ・もたないを自分で決められる時代とはいえ、望んでも子どもをもてない人もいます。子どもがいないことで、この歳になっても感情が揺さぶられることも正直あります。子どもがいない人生は女性の多様な生き方の一つで、他人がとやかく言う問題ではないし、自分を責める必要もありません。不妊治療をする・し     ないも含め、悩みを一人で抱え込 まず、誰かに相談し、自分らしく生きてほしいです」

 

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