稽留流産4回。不育症専門病院での検査・治療は必要?
相談者:助けてくださいさん(39歳)28 歳で自然妊娠し無事に女児出産。34 歳で無脳症、安定期に入ってからの死産。その後稽留流産を 4 回繰り返しています。3 回目の時に不育症検査を受けて異常なし。夫婦の相性面の検査もすすめられましたが見送りました。現在の主治医からは他県の不育症専門病院で検査、治療を受けるように言 われていますが、経済的、物理的負担が大きく前向きになれません。妊娠しても生まれる前に別れが続いてしまい、第一子がいるとは思うものの、諦めきれない自分がいます。
治療歴や検査内容で気になる点はありますか?
稲垣先生● 4 回の流産のうち、3回は心拍確認後の流産を経験されているので、不育症の定義に当てはまりますね。一度不育症検査を受けていらっしゃいますが、不育症の検査内容はクリニックによってかなり異なります。というのは、産科婦人科学会や医師の間で、まだ不育症について一定の見解を得るまでに至っていないからです。それだけに今後の研究が期待されている分野でもあります。
負担が大きくても不育症専門クリニッ クを受診したほうがいいでしょうか?
稲垣先生●そうですね。不育症治療 ですでに成果を出している専門クリニックもありますので、 H Pなどで 十分に情報収集をして受診されたら いかがでしょう。不育症に特化したクリニックはどうしても都市部に偏りがちですが、遠方の患者さんに対しては検査のみ行い、薬などの治療は現在受診されているクリニックで…という連携が可能な場合もあります。患者さんの負担やストレスを減らすことは、不妊治療を継続していくうえでとても大切ですから、現在の主治医との良好な信頼関係を保ちつつ、不育症専門クリニックを一度受診されることをおすすめします。
この方を診察するとしたらどんな検査を行いますか?
稲垣先生●一般的な不育症検査に加えて、第一子はいらっしゃいますが念のためご夫婦の染色体検査を行います。 また身内に同じような流産を繰り返されている方がいらっしゃるか、家族歴も確認します。母親や姉妹などに似た状況が起きていることも少なくないからです。ご本人も過去におつらい経験をされていますが、過去の妊娠のエピソードも今後の不妊治療を考えるうえで重要になります。
第一子を自然妊娠されていますか ら、体外受精という発想はないと思われますが、最初の出産から10年を経て母体の変化も考えられます。視点を変えてPGT-A (移植前の体外受精胚に行う染色体異数性検査 )で流産のリ スクを下げられる可能性もあります。我々医師は、患者さんに根拠のない期待をもたせることはしません。専門 的な不育症検査を受けることで、ご本人が認めたくない事実を示されてしまうかもしれません。その覚悟もお持 ちになったうえで、納得のいく選択をしていただきたいですね。