Q 顕微授精7回。受精卵が 胚盤胞までなかなか育ちません

福田 勝 先生 順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学産婦人 科学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、 1993年福田ウイメンズクリニック開院。2018年10月に、より最寄り 駅に近く、広々とした場所にクリニックを移転したばかり。

ドクターアドバイス

●OHSSに配慮しながら、採卵日を少し調整してもらうといいかも。
●カウフマン療法などで1~2周期休んで。卵の質にこだわり採卵しても。
あいさん(32歳)からの相談 Q.私32歳、PCOSAMHは高めです。夫41歳、乏精子 症のため顕微授精を7回受けました。最初のクリニックで3 回トライ。いずれも低刺激法ですべて採卵数は2個、1回 目に新鮮胚移植をしましたが、着床後に化学流産。2番目の クリニックでは、薬を替えて刺激。4回目は採卵数6個のう ち未成熟卵が3個、成熟卵が3個できましたがどれも受精 せず。5回目は23個採卵できましたが、胚盤胞までいった のが2個だけでそれも4CCとグレードがよくありませんでし た。さらに転院し、6回目は採卵数1個、それも3日目で 分割停止。7回目は16個採卵できたものの成熟卵は8個。 6日目ですべて分割停止してしまいました。胚盤胞になる前 に分割停止となってしまうのはどうしてなのでしょうか…。

顕微授精をされて、さまざまな刺激 方法を、 3 つのクリニックでトライ

治療歴を見て先生はどのように思われますか?

福田先生 この情報のなかでは、あいさんが PCOS(多囊胞性卵巣症候群)である ことはわかっていますが、PCOS の患者さんの特徴でもあるインスリンに対する反応性が悪いのか、家族の糖尿病歴などがわかっていません。刺激法については、 7 回 とも間違いではないと思います。

また、PCOS の方の特徴として、採卵数が多くても未成熟卵が多い、胚盤胞まで育ちにくい、空胞が多いというのも確かです。

そのため、あいさんが胚盤胞まで育たずお悩みなのも理解できるのですが、採卵数にかなりばらつきがありますね。たとえば、 3 回目と 7 回目はクロミッドⓇに ゴナールエフⓇ600 単位とフォリスチム Ⓡ1200 単位を使用されています。これは薬剤の商品名が違うだけで同じものですが、 3 回目は採卵数 2 個で 7 回目は 16 個と 数がかなり違っているので、なぜこのようなばらつきがあるのか気になります。

胚盤胞まで育てるため、何かほかの方法 はあるのでしょうか?

福田先生 胚盤胞までもっていったほうが確実に妊娠率が上がるので、ここにはこだわりたいですね。

  PCOS の場合、OHSS(卵巣過剰刺 激症候群)と抱き合わせになり、医師も繊細な注意が必要になります。もしかしたら採卵を少し早めている可能性もあり、そのため未成熟卵が多いとも考えられます。そ れであれば、OHSS に注意しながら、採 卵日を少し後ろにずらしてみて成熟卵の確率を上げる、というのも一つの考え方です。 エストロゲン、プロゲステロンによるカウフマン療法を1~2周期おこない卵巣を休ませてから採卵するのもいいかもしれません。

インスリン抵抗性の検査の有無の情報はありませんが診断、疑いがあるようでしたら糖尿病治療薬であるメトフォルミンを服用することお勧めいたします。また卵巣刺 激で OHSS のリスクがある場合は当然全胚凍結保存が必要となります。

治療以外にあいさんご自身が取り組める ことがあれば教えてください。

福田先生 どの患者さんにも当てはまることですが、体を冷やさない、ストレスをためない、栄養バランスを考えた食事を摂るなどは基本的なことですね。もしもPCOS で肥満ぎみであれば適正体重に戻す、また卵子の成長に大きく関係しているミトコンドリアの活性化には日常の規則正しい生活がとても大事です。

ただ、あいさんはまだ 32 歳とお若いで す。AMH の値も悪くないようですし、 PCOS だから妊娠できないということではありません。ですから、悲観的になる必要はなく、採卵日を調整したりしながら可能性を探ってみてください。

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