ロング法 で結果が出ず、OHSS

ロング法 で結果が出ず、 OHSSにもなりました。

次はどんな刺激法が最適?40代でも卵巣の予備能がある程度保たれている場合、強めの刺 激、それとも自然な形で採卵したほうがいいのでしょうか。

臼井 医院不妊治療センターの臼井先生に詳しいお話を伺いました。

臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精グループ にて研究・診察に従事。医局長を経て、1995 年より現在の東京・亀有にて産 婦人科医院を開業。

ドクターアドバイス

●アンタゴニスト法でOHSSを回避。
●高刺激の妊娠率が高いのは質より確率。
●初期胚での新鮮胚移植も選択肢に。
れもんさん(40歳)からの相談 Q.今年の4月にロング法で8個採卵。成熟卵が5個、そのうち受精卵が4個 でした。胚盤胞1個、分割胚1個を凍結。OHSSのため1周期ずらして胚盤胞移植するも結果は陰性。その次周期である今周期の移植に向け、 ホルモン補充しています。前回陰性だったこと、また、OHSSになったこ とから、この移植後の採卵方法を考えています。医師に相談したところ、 「卵巣の反応は悪くないからそのままこの治療で」といわれましたが、自 然周期のことも気になってきています。自然周期であれば採卵後周期を 空けずに移植できますし、貯卵していくこともできるからです。ただ、卵 子が採れない可能性や数の少なさでの不合理性を医師から指摘され、簡 易法やアンタゴニスト法での刺激を提案していただき、迷っています。

これまでの治療データ

検査・ 治療歴

子宮卵管造影、ホルモン検査、経腟超音波検査など、ひと通り 検査を済ませて夫の検査に入り、体外受精をすすめられる。AMH値は2.97ng/ml。人工授精は飛ばし、今年の4月にロン グ法で1回目の採卵。顕微授精を実施し、胚盤胞移植を行う が結果は陰性に。

不妊の原因 となる病名

特にいわれていないが、3年前に子宮筋腫を切除

精子データ

運動精子濃度0.05、総運動率3%、精子濃度1.65、前進運動 精子2.1、正常形態率7%で、乏精子症、精子無力症と診断される。

サプリメント の使用

夫は亜鉛とマルチビタミンを1日おき、 私はエレビット Ⓡ、チアシードを飲用

1回目はロング法で採卵されたようですが、

結果を踏まえ、この選択についてはどう思われますか。
臼井先生 施設や先生の考え方によって異なると思いますが、当院では1回目でロング法を選択することは少ないです。最初は低刺激から始め、結果が出なかったらもう少し高い刺激法に変えていくことはあります。
  今回、れもんさんはロング法を選択されま したが、ある程度の数の卵子が採れて、1つは胚盤胞にもなっています。OHSSになったくらいですから、担当の先生がおっしゃるように卵巣の反応は悪くないということでしょう。最初の移植で結果は出ませんでしたが、決して悪い選択ではないと思います。
担当の先生は次回、

アンタゴニスト法などでの刺激も提案されているようですが。

臼井先生 アンタゴニスト法はロング法やショート法などの高刺激とクロミフェン中心の低刺激の中間くらいの刺激法です。

れもんさんはロング法でOHSS(卵巣過剰刺激症候群)になったので、薬を使った刺激だと次も起こるのではないかと心配されているのだと思います。OHSSは、治療時に排卵させるためのHCG注射をすると起こる確率が高くなります。ロング法はどうしてもHCG注射を打たなければならないのでリスクが高まりますが、アンタゴニスト法なら、OHSSになりそうだったらHCG注射を回避できます。

アンタゴニスト法は中程度の刺激で採卵数もある程度確保でき、その時の反応に合わせて注射の量や回数を加減できるので、採用しやすいのではないでしょうか。

自然周期での採卵はどうでしょうか。

臼井先生 当院でも、患者さんが希望されれば自然周期での採卵をすることもあります。
また、刺激をしても出だしがすごく悪いなど、反応が悪い方やFSH値が高い方は薬を使わず、自然な形で進めていくことも。
  自然周期だから、刺激をしたから……など、 方法によって卵子の質が変わってくるかどうかは何ともいえません。ただデータとしては、初回の体外受精で刺激を高めにしてやっていくと妊娠率は5割程度という報告があります。高刺激だと採れる卵子数が多いので、1回の採卵で移植できる回数や、良い卵子が出る率が増えます。質というより数、つまり確率論ということになりますね。
  とはいえ、確率だけで計れるものではなく、 何周期か刺激を続けて卵子がたくさん採れても結果が出ず、自然周期で採卵した1個で妊娠されたというケースもあります。残念ながら、どんな方にも確実に効果があるというやり方はなく、反応を見ながら合う方法を見つけていくというのが現状だと思います。

臼井先生だったら、次はどのような治療を提案しますか。

臼井先生 れもんさんは年齢の割に、卵巣の予備能を表すAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が悪くなく、お薬に対しての反応もいい。どんな方法でも選択できると思いますが、結果が出なければ次は違う方法をご提案すると思いますね。

当院だったら次はクロミフェンを中心に、HMG注射150単位を2、3回プラスする低刺激をおすすめすると思います。ロング法より採卵数は少し減ってしまいますが、体への負担が最小限で良い受精卵ができるかもしれません。

また、刺激法だけではなく、移植のやり方を変えてもいいかもしれませんね。初期胚で新鮮胚移植を試みてもいいのでは。胚盤胞での移植は妊娠率が高いとされていますが、本来は体内の環境で育つほうが望ましいので、初期胚で戻しても妊娠の可能性は十分あると思います。実際、胚盤胞移植で結果が出ず、初期胚移植で妊娠された方も少なくありません。

まだ体外受精を始められたばかりとのこと。先生と相談しながらいろいろ試して、ご自身に合う方法を模索していっていただきたいと思います。

最後に、れもんさんからの

「体外受精治療中の運動と夫婦生活について注意点を教えてほしい」

という質問について、お答えいただけますか。

臼井先生 れもんさんはホットヨガを始めたいと思っていらっしゃるようですね。健康のためにはよいと思いますが、刺激している期間、OHSSのリスクが高まっている時はホットヨガやサウナは脱水の危険があるので控えてください。

治療中、特別禁忌な行動はありませんが、採卵後1、2日後は激しい運動や夫婦生活は避けたほうがいいでしょう。採卵するために針を刺して卵巣が傷ついている状態なので、刺激をすると出血などを起こす可能性もゼロではありません。

その期間以外、制限はなく、むしろウォーキングやストレッチなどで体を動かすのは血流が良くなり、ストレス解消にもつながるので望ましいかと思います。

結果が出なければ次は 刺激法や移植法を変えて 合うやり方を探していきます

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。