不妊外来3周期目。 治療のペースに 疑問を抱いてます。

不妊治療について本やネットで調べるにつれて、今 病院で受けている治療方針に疑問が生じたり、納得 がいかないと感じたりする人は少なくないようで す。

このまま治療を続けていても…と不安になった 時、あなたはどうしますか?

レディースクリニッ ク北浜の奥裕嗣先生に伺いました。

奥 裕嗣 先生 1992年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病院 勤務の後、アメリカに留学。Diamond Institute for Infertility and Menopauseにて体外受精、顕微授精等、 最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、IVF大阪クリニッ ク勤務、IVFなんばクリニック副院長を経て、2010年レ ディースクリニック北浜を開院。医学博士、日本産科婦 人科学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。
相談者:ポメラニオさん(35歳)Q.産婦人科の不妊外来を訪ねましたが2周期目 までは卵胞が確認できませんでした。①3周期目 にして排卵障害を疑いホルモン検査を受診。や はり今回も卵胞は確認できず、②検査は、プロラ クチンが負荷前40ng/ml、負荷後230ng/mlと 高い数値でした。  てっきりすぐ薬が処方されるものと思いまし たが、先生からは次の受診日の話と、次回も卵 胞が見られなければ薬を使ってみましょうと言 われただけでした。  検査結果ではプロラクチン値が高いうえ、卵 胞も一度も見えなかったのに、③なぜ次の周期ま で待たなければならないのか疑問です。  不妊治療についてネットや本で得た情報に比 べ、私の治療ペースは遅いと感じ始め、もし最 初から不妊治療専門の病院なら検査や処方もス ムーズに進んだのではないかと焦っています。  さて、高プロラクチン血症に限らず、一般的 に排卵誘発剤などの薬はすぐ処方されるもので すか? また、治療方針・内容に疑問を感じた 場合、転院を考えたほうがいいのでしょうか?

①最初に排卵障害の原因を確定し、 的確な治療がなされるべき

排卵障害があるということは何か原因があるという ことなので、最初に検査を行ってその原因を確定しな ければいけません。排卵障害がある方に普通に卵胞 チェックだけ行っていても、「また卵胞ができてこない」 というのは当たり前のことです。
 日本人の排卵障害で月経周期の長い方の6~7割が 多囊胞性卵巣であり、原因としても最も多いものです が、この場合はクロミフェンを処方するほか、インス リンの抵抗性を調べて、抵抗性がある場合はメトホル ミンという糖尿病のお薬を出します。クロミフェンが 無効な場合は、注射を使って排卵誘発を行います。
 また無月経については、エストロゲンの基礎分泌量 が保たれていて比較的軽度な第1度無月経と、エスト ロゲン・プロゲステロンとも分泌が見られない第2度 無月経に分類されます。第1度無月経の方は視床下部 障害によるもので、クロミフェンで排卵ができると思 いますし、第2度無月経の方は排卵誘発の注射を使わ ないといけません。
 さらに、脳下垂体や甲状腺、卵巣の機能低下・異常 も排卵を妨げる原因となります。原因に応じて的確な 方法があり、治療方針も違ってくるのです。
 ポメラニオさんが「不妊治療専門の病院なら検査も 処方もスムーズに進んだのかな…」とおっしゃるのは、 僕もまったくその通りだと思います。残念ながらこの3 周期は無駄になってしまっているようです。

②プロラクチン値が高く、 適切な投薬治療が必要

プロラクチンとは、本来授乳期間中 に乳汁の分泌を促進するホルモンです が、妊娠前にプロラクチン値が高いと、 排卵障害や着床障害、流産の原因とな ります。薬による負荷テストでは、負 荷後の値が 80 ng/ml 以上であったり、 負荷前よりも 8 倍以上高くなっていた りする場合は、潜在性高プロラクチン 血症と診断します。

ポメラニオさんの場合は負荷前の 値も高く、血中のプロラクチン値を 下げる薬を服用しなくてはいけませ ん。週に 1 度服用するカバサールⓇ、 毎日服用するテルロンⓇ、このどちら かの薬で治療が必要です。ポメラニ オさんの言う通り、すぐにでも処方 されるべきでしたね。

また、多囊胞性卵巣の方は潜在性 高プロラクチン血症を合併している 場合もありますので、負荷前値が 15ng/ml 以上の場合は、負荷テストを 実施したほうがよいと思います。

③患者と医師、お互いの 信頼で治療が進む

一番の問題は、ポメラニオさんは 不妊治療についていろいろと調べて いるのに、診察の場で質問ができて いないことですね。疑問に思った時 に、「プロラクチンのお薬を飲まなく てよいですか」「排卵誘発の薬の処方 は必要ないですか」と聞いてみたら よかった。最初からコミュニケーショ ンがうまくいっていないこともあり、 聞きづらかったのかもしれませんね。 医師の側としては毎回の診療の中で、 もし疑問が出たら必ず解消してほし いという思いがあります。患者さん と医師がお互いに信頼してこそ治療 は成り立つものと思っていますから。 医師は「こうしたほうがいい」と治療 を提案し、患者さんは医師を信頼して その治療を受けるので、もしその信頼 関係が築けないとなると、病院を変 えられたほうがいいかもしれません。
  排卵障害がなく、タイミングを見る だけ、排卵のチェックだけ、というな ら産科の病院でも技術は変わりません が、ちょっと何か異常があってという 場合は、不妊専門の病院で診てもらっ たほうがいいと思いますね。

質問しやすい雰囲気に、 医師も配慮しています

患者さん一人ひとりの限られた診察時間を有効に使うため、質問用紙を外来受付に置いている奥先生。「質問がある時、それに書いてきてもらえばすぐにお答えします、と初診時に渡します。患者さんがあらかじめ質問をいくつも書き留めておくことで、その場でとりとめなく質問するよりも効率よく話ができ、僕も多くの質問に答えられます」。

忙しそうにしている医師にはついつい質問を躊躇する患者さんもいるはず。「どうしても忙しいと『早く』となりがちなので、自分の反省も込めて、診察を終える時には必ず『何かご質問はありますか』と患者さんに聞くようにしています。帰ろうとされていても僕が聞くと『はい、質問いいですか?』ということがあるので、聞きやすい雰囲気というのは大事ですね」。

医師は患者さんに対してベストな選択肢を提案しても、それを強制はしない。治療を納得して受けるかどうかは患者さんに選ぶ権利がある、とおっしゃる奥先生。そうであるからこそ、患者さんからも積極的に質問し、納得することが治療を進めるうえで不可欠だといえます。

ドクターにはこう聞いてみよう!

医師との信頼関係を築くためにも 治療方針の疑問は解消したい
薬の処方や診察のタイミングなど、治療方針 について疑問を感じたら、思い切って医師に 質問を。医師を信頼して治療を進めるために も、気になる点は率直に聞いて疑問を解消す ることが大事です。それが難しそうなら転院 も視野に入れて。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。