シート法と採卵を同周期で行うことは可能?

シート法と採卵を 同周期で行うのは 可能でしょうか?

限られた診察時間の中では、何だか慌ただしく て治療についての疑問を解消できないまま診察 を終えてしまうということはありませんか。

採 卵と移植をいつ行うか、疑問を感じながらも聞 きそびれてしまったみーさんの質問を、田村秀 子婦人科医院の田中紀子先生に伺いました。

田中 紀子 先生 京都府立医科大学医学部大学院修了。医学博 士。アメリカ留学、扇町 ARTレディースクリニック 勤務を経て、2008 年3月より「田村秀子婦人科 医院」勤務。
相談者:みーさん(36歳)Q. 凍結胚を①おそらくシート法?(先に培養液を 移植して、あとで凍結融解胚を移植すると言わ れたのでおそらくシート法)で移植すると簡単 な説明は受けたのですが、今周期は、採卵はな しとのことでした。年齢も差し迫っていますし ②採卵できるものならしておいたほうがよいので はないか、と考えていたら診察時間が終わって 聞きそびれてしまいました。  今度診察時に念のため③移植と同じ周期で採卵 はできるのか、逆にしないほうがよいのか、聞 いてみようとは思っているのですが、経験のあ る方がいらっしゃいましたら教えていただけな いでしょうか。  ④人気のある不妊治療の病院なので、診察時間 が短くていつもよくわかりません。よろしくお 願いいたします。

①シート法が採用されたのは、 着床環境を整えるという目的が

 自然妊娠では卵管の中で卵が受精・発育し、子宮内膜に 着床します。その間子宮内膜は卵を受け入れる準備を整え ています。一方体外受精では子宮の中に突然卵が戻ってく る状態になり、子宮内膜の準備が十分ではない可能性があ ります。近年スタンダードになっている胚盤胞移植でも着 床しない卵があり、体外受精と自然妊娠の着床環境の違い も、その理由の一つとして挙げられます。
 移植前の子宮内膜の状態を、自然妊娠の環境にできるだけ 近づけるために開発されたのがシート法です。これは、受精 卵を胚盤胞の状態まで育てた時に用いた培養液を凍結してお き、凍結融解胚移植の2~3日前に、まずこの培養液を子宮 内に注入した後、胚移植を行う方法です。受精卵から培養液 内に分泌された物質により刺激を受けた子宮内膜が、着床し やすい環境に整えられることを期待するものです。

②自分の卵巣予備能や採卵の状況を ふまえて、率直に医師に相談を

 胚移植より採卵を先にした方がよいかは、卵巣予備能検 査や凍結胚の数によると思います。十分に凍結胚が残って いるなら、その凍結胚を戻せばよいでしょう。しかし卵巣 機能がやや低い場合などは医師の側から「先に採卵しま しょう」という話をすることもあります。
 また、受精卵を作るにも、戻すにも相応の時間がかかり、 結果がわかって再び採卵となると何カ月も先になってしま います。時間的に焦る気持ちがあるようなら、採卵を優先 した方がよいかを率直に先生に聞いてみてはどうでしょう か。例えばそこで先生が「十分に凍結胚がありますから、 先に胚移植をしましょう」と言われたら、胚移植に進んで もよいと思います。医師に言いづらければ、看護師やコー ディネーターなどのスタッフとお話ししてみても。今の状 況を整理することはとても大事ですよ。

③採卵後の子宮の環境は、 着床に適さない場合も

最近では凍結融解胚の移植が多く なっています。全胚凍結といって、良 好胚をすべて凍結し、その周期では移 植せず、別の周期に環境を整えて胚を 戻すという考え方です。採卵をした周 期は、ホルモンの環境としては通常よ り過剰になっている場合や、採卵の準 備に使用した薬剤の影響でホルモンの 環境が着床に適さない可能性もありま す。実際に着床率もよくないことか ら、最近では全胚凍結の考え方が主流 になってきています。

このように採卵後は子宮内膜の条 件がベストとはいえないので、そこ は無理に胚移植を急がず、もし採卵 を優先したい場合には、別の周期に ゆっくり環境を整えて凍結胚を戻す のがよいと思います。特にシート法 を採用するということは、先生に移 植の環境を整えようというお考えが あってのことではないでしょうか。 シート法に使う凍結した培養液も、 採卵周期の胚培養の時から大切に保 存してきたものなので、条件があま りよくない時に胚移植するのはおす すめできません。

④治療の進め方に疑問が あれば必ず聞いてみて

きっと病院ではひと通りの説明 をされているけど、話がサーッと 流れていくので、みーさんには内 容があまり残っていなかったので はないでしょうか。これまでの治 療の経過や体外受精の適応なども、 おそらく途中で説明を受けている と思いますよ。

やっぱり卵巣機能のことなど、 ご自分の体の状態をある程度知っ ておいた方がいいです。今一度ご 自分の治療を振り返り、どこに問 題があるのか、なぜ体外受精に至っ たのか、体外受精をして現段階で 何がわかったのかを、把握できれ ばいいですね。

治療の節目などに、先生が今後 の方針を話されるときがあると思 います。みーさんのように胚移植 の方向で先生が話をされているの に、「採卵をやったらダメなのか な…」とモヤモヤしていれば、治 療は中途半端になってしまいます。 そこはあえて話を止めてでも、先 生に質問して、そのモヤモヤを払 拭することが大切です。

モヤモヤやストレスを 解消し、気持ちを楽に

「患者さんの表情や気持ちの変化 など、普段の診察からコミュニケーションをとり、その方の状況を把握することはとても大事」と語る田中先生。診察はほぼ決まった医師で、信頼関係が築けている病院ならそれは可能ですが、複数の医師にみてもらう病院ではなかなか気持ちが伝わりにくいことも。

「それでも治療の節目に、『今はどういう状況ですか』と聞いて、疑問は解決したほうがよいし、話しづらければメモにして先生に渡してもよいですね」(田中先生)

医師のほかにも患者さんをサポートするスタッフが充実している病院も多く「これまでの経過について相談したいなら、看護師やコーディネーターにお話ししてみては。胚培養士との時間を設けているところもあります。自分の疑問や不安なども相談できますよ」(田中先生)。何よりも患者自身が納得し、理解して治療を進めることが大事です。

「ちょっと治療がつらいなあ、という時も、その気持ちを伝えてほしいですね。そんな患者さんの気持ちに寄り添いながら、ストレスをため込まないで治療に参加してもらえるよう応援していきたいと思っています」(田中先生)

ドクターにはこう聞いてみよう!

治療を中途半端にしないためにも 疑問に思うことは聞いて解決を
治療の途中でも疑問に思うことがあったら、「こ ういうことは無理でしょうか、質問があります」 と手紙を書いては? 何点か要点をまとめて医師 にわかるようにしておくと、医師もあらかじめ 状況を整理して疑問に答えることができます。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。