卵胞 が1つしか育たず、 採れても変性卵ばかり。 いい卵胞を育てる方法は?
採卵2回でそれぞれ卵子が1個しか採れず、それも変性卵…。
どうしたらいい卵胞がきちんと育つようになるのか、 秋山レディースクリニックの秋山芳晃先生に伺いました。
ドクターアドバイス
これまでの治療データ
検査・ 治療歴
不妊の原因と なる病名
現在の治療方針
精子データ
エムさんは採卵数が少なく、採れても変性卵ということですが。
変性卵とはどのような状態なのですか。
秋山先生 変性卵は細胞質が壊れてしまっている卵子です。年齢が高くなってくると変性が起こりやすいとされていますが、生活習慣やストレス、不規則な生活、体質的なことなどから若い方でも起こることがあります。
また、毎周期起こるとは限りません。まったく同じ排卵誘発法で採卵をしたのに周期によって変性卵が起こったり、起こらなかったりというケースも見られます。
変性卵になってしまうのは珍しいことではなく、1、2回起こったから妊娠できないというわけではありません。最終的にいくつか卵子が採れて、その中に変性していない卵子があれば治療は可能なわけですから。この方のように1個しか採れなくて変性卵だった場合、その周期は治療ができませんが、もう少し採れる数を増やしていく、あるいは何回か採卵を重ねていけば正常な卵子が出てくる可能性はあると思います。
卵胞をきちんと育てていくためにはどうすればいいのでしょうか。
秋山先生 医療的に何かをするとしたら、卵巣の刺激法を変える、もしくはまったく刺激をしないで自然な形でトライしてみるという選択肢もあるでしょう。
採れる卵子が少ない場合、最近はGnRHアンタゴニストという薬を使った遅延法というやり方もあります。卵胞にはいろいろな発育段階のものがあるので、それを少しずつ足並みを揃えて育ててあげると、数が増えるというデータがあります。
GnRHアンタゴニストは、排卵の直前に引き金が引かれないように抑える薬。それを生理周期の最初から使い始め、特定の卵胞が十分に大きくならないようにホルモンの分泌を抑えながら、複数個の卵胞発育を待ってから刺激を開始する、というやり方です。
当院では最近この遅延法を始めたので、まだ 多くのデータは集まっていません。しかしエムさんと同年代で2回続けて卵胞が育たなくて採卵がキャンセルになった方が、今、採卵できそうな状態にまできています。誰にでも確実に効果があるとは言いきれませんが、うまくいけばこの遅延法で、採卵までいく複数の卵胞を育てられるかもしれません。
もう一つはまったく刺激をしないという選択です。エムさんは特に2回目の採卵でたくさん排卵誘発剤を使っていますね。AMH値が0・ 06ng/ ml と低いので、刺激をしても採れ る卵子の数にはどうしても限界があると思います。逆に強い刺激を続けていくことで、卵巣をさらにくたびれさせてしまう可能性があるかもしれません。
それよりも自然周期で採卵を行う。一度に採れる数は少ないけれど、何回かトライしていっていい卵子が出てくるのを待つという選択もあるかと思います。
年齢が高く、卵巣機能が落ちてきていますが、まだ卵子が採れているので諦めるのは早い。しかし、さらに刺激を加えても飛躍的に卵子の数が増えることはないでしょう。少ないなりにどうするか考えたほうがいいと思います。今のうちに集中して治療を行うのをおすすめします。
「どこに治療を受けにいけばいいか」というご質問ですが、自然周期の場合は排卵を抑えられないので、365日採卵に対応している施設でないと難しいかもしれません。今、治療に行き詰まっているようでしたら、一度、自然周期から刺激法まで幅広い治療法を選択できる施設に行って相談されてみてもいいのではないでしょうか。