低AMHで多発性の子宮筋腫

AMH で多発性の子宮筋腫

凍結卵子の融解・受精と 採卵と移植、どれを優先?

結婚前に未受精卵子を凍結してあるnikakoさん。

現在凍結胚はなく、 筋腫も再発してきていますが、何を優先するべきなのでしょうか。

とくおかレディースクリニックの徳岡晋先生にお聞きしました。

徳岡 晋 先生 防衛医科大学校卒業。同校産婦人科学講座入局。自衛隊中央病院産婦人 科勤務後、防衛医科大学校医学研究科に入学し、学位(医学博士)取得。 2005 年、とくおかレディースクリニックを開設。

ドクターアドバイス

●移植よりもまずは受精卵の確保を。
●筋腫の再手術より早めの移植を。
●採卵はゴールを決めておきましょう。
nikakoさん(41歳)からの相談 Q.低AMHと高齢で採卵にも苦労している状況です。未婚時、37 ~38歳の時に大阪の病院で未受精卵を5つ凍結保存していま す。それを融解・受精して移植するか、今通っている東京の自然 周期のクリニックで採卵からスタートするか悩んでいます。不妊 治療の医師からは「受精卵は母体の年齢がネックになるが、移 植時の母体の年齢はそこまで問題にならない」と聞きました。し かし多発性の子宮筋腫もちで過去2回除去手術をしました。す でにたくさん再発していて、再度手術が必要になる可能性もあり ます。また未受精卵凍結は妊娠に結びつく可能性が低いという 話を聞いて、採卵と移植どちらを優先するか悩んでいます。

これまでの治療データ

検査・ 治療歴

多発性筋腫があり。卵管片側閉塞。AMH0.16ng/ml以下(測定不能)。 2年半の間に顕微授精で2回凍結胚盤胞移植をするも1回目は流産、 2回目は着床せず。

不妊の原因と なる病名

低AMH、過去に両卵管閉塞、子宮筋腫

漢方・サプリメント の使用

エルビット(バイエル薬品)、ビタミンE、ビタミンC(移植期のみ)、マカ

nikakoさんは、大阪の病院に未受精卵を5つ凍結保存しているとのことです。

徳岡先生 未受精卵凍結というのは、もともとはまだ若い女性が白血病などの化学療法を受ける時に卵巣機能が障害されることを考え、将来のために卵子を採っておいて凍結保存しておこうというところから始まった治療です。その女性が結婚し子どもをつくろうとなった時に、融解してご主人の精子と受精させ受精卵にしていきます。私も未受精卵凍結に詳しいわけではないのですが、将来そこから受精卵をつくるためには十数個以上の卵子が必要だといわれているようです。
  凍結した未受精卵を一つずつ融解する、まと めて融解し一気に受精させる、どちらの方法もできるとは思います。一つずつの場合は、うまく受精すると想定して、移植に備えてその前からホルモン補充周期で子宮内膜をつくっていくことになります。初期胚ならDAY3、胚盤胞ならDAY5での移植になるので、それに合わせて母体を準備しておかないといけません。しかし、もし受精しなかった場合は、そこまで準備しても移植できないことになります。
  まとめて融解した場合は、そこに合わせて受 精卵を1個移植してもよいですが、移植はせずにすべて再凍結するということもできます。あらためて移植に向けて準備ができるので、そちらのほうが効率的ではあると思います。

不妊の原因の一つが低AMHで、値が0 ・ 16ng/ ml 以下ということですが、採卵も急いだほうがいいのでしょうか。

徳岡先生 卵巣の予備能を表すAMHが 0 ・ 16ng/ ml 以下というのは、 46 歳以上の卵巣年齢に該当します。予備能としてはほとんどなくなってきているということですが、それでも採卵は可能です。当院でも 0.1ng/ ml 以下の方がいらっしゃることはありますが、採卵できないということはありません。

  nikakoさんの場合は、結論からいうと、 移植よりも受精卵の確保が最優先になると思います。そのためには、採卵を進めるのと同時進行で、未受精凍結卵を受精卵にすることです。おっしゃる通り、未受精凍結卵については、通常より受精率が少し下がることはあるようです。いくつ受精するかはやってみないとわかりません。しかし、採卵したのは 37 ~ 38 歳と今よりお若い時なので、受精する可能性はあると思います。そこでいくつ受精卵ができたのかも、今後、採卵をいつまで続けるのかを考える材料になります。

まずはご主人に一度関西の病院に行っていただき、顕微授精を行って受精卵をつくったほうがいいでしょう。そして、受精卵ができたら再凍結しておくほうがいいでしょう。凍結せずに移植となると nikako さんは採卵の準備を中断して子宮内膜をつくり、移植のために関西に行かないといけなくなりますから、時間のロスになります。

多発性の子宮筋腫があるため、移植も急いだほうがいいのではないかと心配していらっしゃいます。

徳岡先生 多発性の場合は筋腫の芽が子宮の筋層内にたくさんあるので、大きい筋腫を切除しても小さいものがまた大きくなってきてしまいます。しかし、 41 歳という年齢を考えると、もう一度手術をすることは考えないほうがいいと思います。手術をすると早くても4カ月は移植ができなくなります。「移植時の母体の年齢はそこまで問題にならない」というのは合併症がない人の場合です。筋腫などがある場合は流早産の危険もあり、該当しません。また年齢が上がれば、妊娠された後の妊娠高血圧症などの合併症の確率も確実に高くなります。
  ですから、やはりまずは受精卵を確保するこ とを急ぎ、その後早めに移植に移るのがいいと思います。採卵もどこかにゴールラインを引いておくのがいいでしょう。例えば凍結未受精卵からのものもあわせて受精卵がいくつになったらとか、個数にかかわらず何歳までとか、ゴールを決めて採卵に臨まれるのがよいかと思います。もし私が nikako さんの担当医なら、 43 歳まで採卵を頑張りましょうとお話しします。そこまでにできるだけ受精卵をつくって、そこから妊娠を目指して移植していきます。そこが筋腫が大きくなる前に移植できるラインであり、また妊娠年齢が高くなりすぎる前のラインではないかと思います。

移植は東京と大阪の2カ所ですることになるのでしょうか?

徳岡先生 受精卵の移動は行っていないクリニックが多いと思います。移動の途中で受精卵がダメになってしまったり、融解したら卵子が入っていなかった、変性していたなどという場合に、責任の所在がはっきりしなくなるからです。当院でも受精卵の移動はお断りしています。
  移植の段階になったら、まずは採卵した東京 のクリニックでできた受精卵を戻し、うまくいかなかった場合は大阪のクリニックに凍結してある受精卵を移植しに行くという段取りがよいのではないでしょうか。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。