3PN由来の胚盤胞移植について

3PN由来の胚盤胞移植で 妊娠の可能性は ありますか?

初期胚、拡張胚盤胞、および3PN由来 の胚盤胞を凍結しているkokuroさん。

移植がうまくいかなかった場合、3PN 由来のものでも胚盤胞まで育ったなら ば移植できるのか、蔵本ウイメンズク リニックの蔵本先生に伺いました。

蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院産婦人 科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部を経て、1990 年オーストラリア・ PIVEメディカルセンターへ留学。帰国後、1995年蔵本ウイメンズクリニック開院。 JISART(日本生殖補助医療標準化機関)理事長。久留米大学医学部臨床教授。

ドクターアドバイス

●3PNの胚盤胞は染色体異常の可能性が高く、妊娠率は極めて低い。
●拡張胚盤胞が成功しなかった場合、初期胚の移植か再度採卵の検討を。
kokuroさん(41歳)からの相談 Q.近々、顕微授精をする予定です。現在凍結されているものは、初期胚、拡張胚盤胞、 および3PN由来の胚盤胞になります。今回は、まず拡張胚盤胞を移植する予定で すが、もし成功しなかった場合、3PN由来の胚盤胞を移植することはどうなのかで 悩んでいます。培養士の方は、3PN由来のものでも胚盤胞にまで育ったのであれば、 赤ちゃんになりうる可能性もあるとおっしゃるのですが、はっきりよいともだめとも言 えないそうです。最終的に私自身の決断になりますが、せっかく胚盤胞まで育ち移 植できるのなら、移植したいです。ただ、妊娠の確率が低く、流産するのが目に見 えているなら考えてしまいます。アドバイスをお願いいたします。

3PN 由来の胚盤胞とはどういうもので すか。

また、その原因について教えてください。

蔵本先生  PN とは前核のことですが、受 精するとその中に2つの前核(2PN)が 見えてきます。1つは精子から、もう 1 つ は卵子からできた前核です。正常受精卵の 中には、前核が2個ありますが、これが3 個になってしまったのが3PN 胚です。

3PN 胚が起こる原因として考えられるの は、まず第 2 極体の放出不全です。精子が卵 子の中に入ると、正常に受精した卵子は減 数分裂を再開し、第 2 極体というものを放 出します。第 2 極体が正常に放出されず核膜 が形成されてしまうと、染色体数が3倍体で、1 つ多い状態になります。まれに胚盤胞にな ることもありますが、染色体異常ですから赤 ちゃんにはなりません。

また、加齢などに伴って染色体分配異常の場合も3PN になることがあります。正常な 場合はきれいに分裂を繰り返していきますが、 異常を起こし不規則な分裂になると、そこか ら核膜をつくってしまいます。胚盤胞になる こともありますが、着床しない場合がほとん どです。もう一つ、抗セントロメア抗体(抗 核抗体)が高い方も3PN になりやすいとい うデータがあります。抗セントロメア抗体が、 細胞分裂時に染色体が均等に分かれるのを阻 害するためと考抗セントロメア抗体えられています。

何かできる対策はあるのでしょうか?

蔵本先生 最も多い原因である第 2 極体の放 出不全についてですが、通院されている施設 は、タイムラプスシステムをお持ちでしょう か。培養器の中に顕微鏡が内蔵されており、 胚の様子を連続して観察することができるも のです。
非常に精密に見ることができるので、 第 2 極体が正常に放出されたかどうかもわかります。これで顕微授精後の動態、特に第2 極体の放出を熟視していただき、放出不全か どうかを確認されることをおすすめします。 放出不全であれば、それは染色体異常ですか ら使わないようにすることです。

3PN 由来の胚移植でも出産できる可能 性はあるのでしょうか?

蔵本先生 3PN でも生育する過程の中で異 常なものが淘汰され、正常な細胞だけで胚盤 胞になる可能性がないわけではありません。 ただし、着床したとしても流産する可能性が 高いでしょう。胚の染色体異常の検査を行い 正常であれば戻すこともありえますが、現在 の日本ではそれを行うことができないため、 リスクのあることは避けたほうがよいと思い ます。

次回の移植プランを迷われています。先 生のアドバイスをお願いします。

蔵本先生  kokuro さんの場合、 41 歳と いう年齢からも染色体異常の確率が高いわけ ですから、私は、3PN の移植はおすすめし ません。まず拡張胚盤胞の移植を行い、成功し なかった場合は、初期胚を選択されるのがよい でしょう。または、再度採卵を行い新たな正常 受精卵を得ることをおすすめいたします。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。