「排卵誘発剤」って何?

中村先生教えて!たまごのこと

第二回「排卵誘発剤」って何?

不妊治療ではよく使われている 排卵誘発剤。

どんな目的や種類、 使われ方をするのでしょうか?

お薬にまつわる、さまざまな疑 問について、なかむらレディー スクリニックの中村嘉宏先生に 教えていただきました。

 

中村 嘉宏 先生 大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥教授(現CiRA 所長)の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、 北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013 年より藤野婦人科 クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。 2018年1月に培養室を大改装。受精卵の発育を動画で観察で きるタイムラプスインキュベーターを導入。「患者さんからお預かり した大切な受精卵の成長過程を、ストレスの少ない環境下でモニ タリングし、より多くの方の妊娠・出産をサポートしたいですね」。

ドクターアドバイス

★排卵をうながして妊娠率を高めるために使うお薬です。

★飲み薬と注射剤があります。一般不妊治療と体外受精のどちらでも使われます。

★排卵誘発法はおもに自然周期と刺激周期の2つに分けられます。

★排卵誘発法は卵巣の状態や年齢などを考慮して決められます。

★お薬の使用によって閉経が早まることはありません。

Q・なぜ排卵誘発剤が必要なの?

A・排卵を促したり、体外受精の妊娠率を高めるのが目的です

自然排卵では一回に排卵する卵子は通常1個です。排卵障害などで一年あたりの排卵回数が少なくなったり、排卵がな かなか起きない人では、それだけ妊娠する確率が低くなります。そのような場合、排卵誘発剤が有効です。また、順調に 排卵している人でも排卵数を増やしたり、排卵時期を調節し て治療のスケジュールを立てやすくするためにも用います。 排卵誘発剤は、タイミング療法から体外受精まで不妊治療の さまざまな段階で使われます。

排卵誘発剤は間接的に卵巣を刺激する「飲み薬」と直接卵 巣を刺激する「注射剤」の2つに分かれます。

Q・飲み薬はどんな時に使うの?

A・おもにタイミング療法や人工授精など一般不妊治療で使われます。当院では、体外受精でも用います。

飲み薬は、卵巣に指令を出している脳の視床下部や下垂体に 働きかけて、卵子を成熟させるFSH(卵胞刺激ホルモン)の 分泌を促して卵胞を成熟させていきます。排卵の時期が遅い人 や排卵しにくいPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の人がおもな 適応になり、タイミング療法や人工授精などの治療に使われま す。お薬の種類にはクロミッドⓇ、セキソビットⓇなどがあり、 一般的には生理5日目から5日間服用します。また、体外受精 でも単独、あるいは注射と組み合わせて用います。飲み薬は作 用がマイルドで副作用がほとんどありません。

Q・注射剤はどんな時に使うの?

A・体外受精で使うことが多いですが、一般不妊治療で効果を高めたい時にも用います。

注射剤は卵胞刺激ホルモンである FSH が主な成分ですが、 卵胞を破裂させる作用のある LH(黄体化ホルモン)も含まれ、 その配合の割合は注射剤の種類によって変わります。直接卵巣 を刺激しますので強い効果がある一方で、多胎妊娠やOHSS (卵巣過剰刺激症候群)などの副作用をともなうことがあります。

一般不妊治療では、クロミッドⓇの効果を高める目的で併用し たりします。また、体外受精では成熟卵子を複数育てるために 使われます。閉経女性の尿より抽出した成分でつくられる注射 剤(HMG製剤)にはフェリングⓇなどがあります。また、尿 由来で LH 成分がほとんど含まれないものを FSH 製剤とい い、ゴナピュールⓇがあります。これらは、生物製剤に分類さ れていますが、抽出精製されているため感染症の心配は皆無で す。遺伝子工学を使って生物由来原料を使っていないFSH製 剤(リコンビナント FSH)もあります。その一つであるゴナー ルエフⓇは専用のキットを用いて自己注射することもできます。

Q・体外受精の排卵誘発法にも種類があるの?

A・自然周期(低刺激周期)と刺激周期の2つに大別できます。

自然周期は、クロミッドⓇなどの飲み薬を生理3日目から服 用を始めて、さらに卵巣を刺激する注射剤を1〜2回併用して 卵胞を育てます。成熟が確認できたら、主に点鼻薬(スプレキュ アⓇ)を用いて排卵の引き金となる LH サージを起こして卵子の最終成熟を促します。

一方、刺激周期は、連日注射剤を投与する方法です。自然排 卵を抑制する薬剤を併用しますが、併用する薬剤の種類、投与 方法により、ロング法、ショート法、アンタゴニスト法に分け ることができます。ロング法は体外受精の前周期から、ショー ト法は月経開始から GnRH アゴニストを毎日投与し、突然 排卵しないようにして連日注射で卵巣を刺激します。

一方、ア ンタゴニスト法は月経 3 日目くらいから連日注射を開始し、卵 胞が 14 mm程度に育った頃から GnRH アンタゴニストを排卵 誘発の注射と併用し、突然の排卵を抑えながら卵胞を成熟させ ます。アゴニストとアンタゴニストは名前は似ていますが、作 用が少し異なる薬剤です。刺激周期では、超音波で卵胞の成熟 を確認後、LH と似た作用をもつホルモン製剤の HCG の注 射により、卵子の最終成熟を促します。

Q・自然周期と刺激周期どちらがいいの? 自然排卵とお薬を使った卵子に違いはあるの?

A・どの方法を選択するかは、卵巣の状態や年齢などによって異なります。

自然周期と刺激周期どちらにもメリット、デメリットがあ ります。自然周期は飲み薬が主体なので体への負担はほとん どありません。ただし、採卵できる卵子の数は少なくなります。 刺激周期は採卵数は増えますが、OHSS(卵巣過剰刺激症 候群)などの副作用をともなうことがあります。  自然排卵と、お薬を使って排卵した場合の卵子の質に大 きな違いはないと考えています。

どの方法を選択するかは、卵巣の状態や年齢などを考慮 したうえで決めます。刺激周期で副作用があった人、また は刺激周期で結果が出なかった人は自然周期を試してみる のもよい方法です。

Q・排卵誘発剤を使うと閉経が早くなるの?

A・お薬の使用にかかわらず、年齢とともに卵子の数は減少し、老化します。

お薬を使って排卵をうながすことで、閉経が早まること はありません。第1回でもお話ししましたが、女性は一生 分(約700万個)の卵子をもって生まれます。出生時には 200万個、思春期には 20 〜 30 万個になります。つまり、排 卵するしないにかかわらず年齢とともに卵子の数は減少し、 老化していきます。卵巣刺激で採取される卵子は卵子全体の ほんの一部であり、本来自然に消滅する運命にあった卵子が 排卵誘発剤によりセーブされ育っていると考えてください。

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