Q 移植9回で陽性ゼロ AMHも 1.1 で焦ります

石原 尚徳 先生 高知大学医学部卒業後、神戸大学医学部大学院修了。医学博 士。兵庫県立成人病センター、兵庫県立こども病院の勤務を経て、 2008年より久保みずきレディースクリニック菅原記念診療所勤務。 不妊治療から周産期・小児医療まで、地域に根ざした総合的なサ ポート体制が整う同クリニックで、不妊治療/婦人科、産科の外来 を担当する。最近特に関心を深めているのが、「産後ケア」につい て。韓国の最新産後ケア事情をリサーチするほか、日本独自の事情 やニーズも鑑みながら、より良い産後ケアのあり方について、関連 の助産院も一緒に前向きに取り組んでいきたいと考えています。
まぁこさん(33歳)からの相談 Q.不妊歴3年の男性不妊で、昨年10月から顕微授精にス テップアップしました。一度目はアンタゴニスト法で6個 採卵・3個受精、うち1つを新鮮胚移植。12月に5日目 胚盤胞3AAを移植。その後の移植は5日目胚盤胞をアシステッドハッチングありで行い、1 月は2ICMで陰性。2 月にショート法で14個採卵し、7個が胚盤胞に。4月に 5AA、5月に3ABと5AB、8月に5AAと4AB、9月に 5ABと6AA、8回目は自然周期、9回目はスクラッチ法 を試すも、計9回すべて陰性に終わりました。胚盤胞を 使い果たし、AMHが1.1ng/mlしかなく焦ります。6月 の子宮鏡検査では異常なしでした。私はどうしたら着床 し、妊娠できるのでしょうか?

9回の移植が陰性になり、すべての胚盤 胞を使い果たした今、転院するかこのまま 治療を続けるか迷っておられます。

石原先生 データを見る限り、まぁこさん は本当にきれいな良質の胚盤胞ばかり採 取できているようですね。率直に言って、 何回か妊娠できていてもおかしくない状 況だと思われるだけに、残念だったとしか 言いようがありません。期待が大きかった分失望感も大きかったかもしれませんね。
胚盤胞がなくなり、「また一からやらないといけない」と、振り出しに戻った気持ちになるのはわかります。しかし、これだけいい卵子が採取できているということは、それだけ希望があるということ。 33 歳とま だお若いので、もう少し続けられてもいいのではないでしょうか。

現在AMHが 1.1ng / ml しかないことで焦る 気持ちが強いようです。一般的に、AMHの数値はどの程度気にすればいいでしょうか?

石原先生 AMHとはアンチミュラー管ホルモン、つまり、発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンのこと。血液中にAMHがどれだけ存在するかで、卵巣の予備能を知ることができると言われています。
AMHの数値が低いと、「もう妊娠できないのではないか」と心配される方も多いかもしれません。しかし、まだ採卵経験がない人でこの数値なら気にする必要があるかもしれませんが、まぁこさんの場合は、個数もグレードも申し分のない卵子が実際に採取できているのですから、そこはまったく気にする必要はありません。このまま治療を続けていく分には問題ない数値だと思いますよ。

「私はどうしたら着床し、妊娠できるの でしょうか?」と困惑されておられます。 今後のアドバイスをお願いします。

石原先生 結果が出ないことで、治療方法 に不安が生じ、転院を考えたくなるお気持 ちはわかります。しかし、不妊治療にはさ まざまな方法があり、最初から最善の道が 決まっているものではありません。また、 着床しても妊娠・出産するまでにはさらに 繊細で複雑な条件がさまざまに絡み合っ てきます。まぁこさんの質問に対して、一 言で答えることは難しいでしょう。

ただし、治療内容を見ると、担当のドクターもただ同じやり方を繰り返しているわけではありません。採卵はアンタゴニスト法とショート法の両方を試し、移植方法も少しずつ変更されています。移植5回の陰性の後に子宮鏡検査もされています。子宮鏡検査は、不妊治療を始める前に行う方もおられますし、治療を始めてから行う方もいらっしゃいます。まぁこさんのように、途中で確認するのも大事なことです。

これほど良質の卵子が採取できている以上、治療を続けていればいずれは妊娠できるだろうな、というのが私の見解です。もちろん、最終的に転院するかどうかはまぁこさんのお気持ち次第ですが、もう少し治療を続けてみてはいかがでしょうか。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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