治療歴10年になります

治療歴10年 になります。

どうしたら卵胞が 増えるのでしょうか?高齢になって卵胞がなかなか育たず、凍結卵も減る一方。

持病が再発したら子宮全摘の可能性も。

この先どうすれば・・・? 浅田レディースクリニックの浅田義正先生に伺いました。

浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に留学し、 主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による 妊娠例を報告。2004 年、浅田レディースクリニック開院。2006年、生殖 医療専門医認定。2010年、浅田レディース名古屋駅前クリニック開院。「4 月に東京の愛育クリニック内に開設予定だった浅田生殖医療ユニットは、諸事 情により計画は凍結しました。その分、品川の新クリニックをできるだけ早く開 院できるよう計画変更し、現在はそちらに集中しています」と先生。
ミミコさん(41歳)からの相談 Q.高齢ということもあり、担当医から最初にできるだけ採卵して凍結 してから移植した方がいいと言われていますが、なかなか卵胞が増 えません。どうしたら2個以上、卵胞が増えるか教えてください。 毎日自己注射を打ち、腰を回して運動したら血流がアップして卵胞 が育つかなと、腰にウールストールを巻いて汗だくなりながら頑張っ ていますが、それでも増えず、最近は人工授精ばかりで自信をな くしています。複雑型子宮内膜異型増殖症もあり、次に再発したら 子宮全摘とも宣告されています。私はどうしたらいいのでしょうか? 凍結卵も減り、もう生きる気力さえなくなってきました。

これまでの治療データ

検査・ 治療歴

不妊治療歴10年。子宮内膜剥離、掻爬術、ポリープ除去、 ホルモン剤服用など。AMH低い(正確な数値は不明)。過去 に漢方薬を服用したが効果なし。

不妊の原因と なる病名

複雑型子宮内膜異型増殖症

現在の 治療方針

特に決まっていない。

精子 データ

通常の3倍以上(正確な数値不明)

ミミコさんの所見について、先生のご意見をお聞かせください。

浅田先生 まず第一印象として、治療年数 10 年は長すぎますし、かわいそうですよね。不 妊治療はどんな治療をしていくかによって人 生が変わると、つくづく思います。

ミミコさんはAMHが低いとのことです が、昔から低かったのか年齢相応に低くなっ たのかが気になります。複雑型子宮内膜異型 増殖症は進行して子宮体ガンになれば、確か に子宮を摘出する必要があり、妊娠も不可能 になってしまうので、その治療があって 10 年 経過したのかもしれませんが、病気がわかっ た時点でのAMHはどうだったのでしょう か。もし、その頃にはまだ卵巣予備能がいい 時期だったなら、きちんと刺激してたくさん 卵子を残しておくことができたかもしれませ ん。本当はもっと短期勝負で治療を進めるべ きだったのではないかと思うのです。

精子は通常の 3 倍以上ということですが。

浅田先生 精子というのは基準値はある のですが、正常値というのはないのです。 6000万個で妊娠率 70 %とか4000万 個で 60 %とかいわれていますが、WHOで は1年以内で妊娠している人の統計的下限 は 1 900万個と、基準にもバラつきがあ ります。精子は個人差が大きく、それ以上 に個人の中の毎日の変動が大きいものです。

実際に顕微授精などで精子を見ていても、 数や奇形率の捉え方は一般的にいわれている ことと違うと感じることがあります。精子と いうのはDNAの運搬装置でしかないわけで すから、中身がきちんとしていれば奇形精子 でも問題ありません。WHOでは正常形態40 %以上といわれていますが、実際の現場で は、頭や尻尾が変なふうに曲がっていても問 題なく受精して出産することがあります。間 違った認識というのはいくらでもあるのです。

ですから、ミミコさんのケースのような漠然とした精子の所見で良いと言われると、女 性側は全部私が悪いんだと受け止めてしま い、余計に患者さんを苦しめる原因にもなり かねません。我々、医療者側も大いに気をつ けたいことです。

卵胞は今後、増えるのでしょうか?

浅田先生 卵子というのは排卵をする半年以 上前から発育を始めています。それは卵巣予 備能に見合った、残っている卵子の一定の割 合が常に発育しているもので、たくさん予備 能がある人であれば毎回たくさん育つし、少 なくなってきたら毎回少しずつ育ちます。たとえば100個あって 10 %なら毎回 10 個育つ し、 10 個なら 1 個しか育ちません。そのよう に卵巣予備能に比例して育つものなので、卵 子を途中から増やすということはできません。
つまり、卵胞の数の上限は決まっているの です。ですから、注射を一生懸命打っても上 限以上に数は増えませんし、予備能の低い人 にはむしろ注射が無駄になってしまいます。 そういう人にこそ簡易の体外受精で、一般的 には対処するべきでしょう。

また、ホルモンは血液の循環で運ばれてい くので、血液の循環は悪いよりは良いほうがいいに決まっていますが、血液の循環を良く して一生懸命ホルモンを与えても、育つ卵子 が十分になければ結果が変わるわけではあり ません。腰を回して ・・・ ということも、治療 を上回る効果があるとはいえず、残念ながら 一般的な健康法でしかありません。

ただ、卵胞が育たないから人工授精を、と いうのがちょっとわからない点。卵胞が育た なければ人工授精自体も無駄ですし、逆に人 工授精ができるのであれば、排卵前に採卵す ればいいのではないでしょうか。

この先、どのような治療ができますか?

浅田先生 当院では 41 歳でAMHの低い人で も妊娠している人は大勢います。ただ、 20 代 と 40 代では卵子の保存期間が違いますから、 同じように卵胞が何ミリになったから採ると いうことではあまりうまくいきません。 40 歳 を過ぎると見た目は成熟でも、ほとんどが未 熟卵ということがありますから、若い人と比 べたら採卵のタイミングをずらす必要があり ます。そして長いこと眠りについていた卵子 の遺伝子を再稼動させ、精子がきた時にちゃ んと受精して発育していく、きちんとした成熟卵を採ることにこだわります。

ただ、それにこだわると、大抵、黄体ホル モンが少し上がりぎみになりますから、その まま新鮮胚移植をすると移植の条件が悪くな ります。高齢になればなるほど、採卵と胚移 植は別周期で考えて、両方良い条件で整えた ほうが成績がいいといえます。

所見からはうかがい知れませんが、ミミコ さんは今まで何回かは胚移植できたのでしょ うか。平均的に 38 歳以下であれば 10 個くらい、 全年齢合わせても体外受精でだいたい 25 個の 卵子で妊娠するというデータがあるので、 20 個、 30 個戻しても赤ちゃんまでいく受精卵が なかったということであれば、究極的には遺 伝子の組み合わせの相性が悪かったのかもし れません。まったくの他人で知り合っても、 いとこ同士とか兄弟のように似た遺伝子を互 いに持っていて、その組み合わせのバランス が悪くてうまくいかないカップルも稀にある かもしれないと思います。

ただ、同じカップルの受精卵でも兄弟の違 いがあるように、 1 個ずつの受精卵の遺伝子 の組み合わせはすべて違います。ですから、 ミミコさんの場合もずっとダメが続くとは思 えません。受精卵の遺伝子が組み変わってい るうちに、赤ちゃんまでたどり着く 1 個に出 会える可能性はあると思いますよ。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。