Q 人工、顕微授精の結果が出ない。 転院または治療を諦めるべき?

蔵本武志先生 1979年久留米大学医学部卒業。1985 年山口大学大学院修了。医学博士。1995 年 6月蔵本ウイメン ズクリニック開院。開院当時より、体外受精、顕微授精をはじめ、 一般不妊治療や生殖医療の研究を広く行う。JISART(日本生殖 補助医療標準化機関)理事長。山口大学非常勤講師、久留米 大学医学部臨床教授。今年は劇団四季ミュージカル「リトルマーメ イド」の観劇やアンコールワットへの一人旅などで大いにリフレッシュ した蔵本先生。笑顔が3 割増しと評判だそう。

ドクターアドバイス

●凍結した胚盤胞の融解胚移植が最も妊娠率が高い。
●子宮鏡を使い、子宮内膜環境を確認。その状態を見て必要な処置を行ってみては。
えりさん(39歳)からの相談 Q.37歳から不妊治療を開始、人工授精10回以上、顕微 授精4回を行いました。現在、AMH0.64ng/mlと徐々 に低下しています。あらゆる検査をし、一部卵管狭窄が認 められました。主人に少々問題があり、精子濃度が少なく、 奇形率が多いため、自然妊娠は厳しいという診断でした。 今年1月に一時的に治療をお休みした期間に自然妊娠をし ましたが、7週目で流産。現在は顕微授精4回目失敗、 胚盤胞移植に向けて待機中です(胚盤胞移植は初めてで す。今まで胚盤胞に到達しなかったので新鮮胚移植しか行っ たことがありません)。失敗続きで転院も考えていますが、 仕事との両立や生活を考えると物理的に厳しく感じます。 もしくはこのまま諦めるべきなのか悩んでいます。

胚盤胞移植に向けて待機中、これからの 治療に悩んでおられるようです。

蔵本先生 情報が少ないのですが、初めての胚盤胞移植のため、おそらく事前に凍結された胚盤胞を融解して移植されるご予定ですね。今までえりさんが取り組まれていた新鮮胚移植は、採卵・体外受精後およそ2 ~ 3 日目の分割胚移植を行っておられましたが、胚盤胞移植は採卵・体外受精後 5~ 6 日まで体外で培養した最終段階の胚で、新鮮胚移植に比べより生命力のある胚を選ぶことができます。着床率もおよそ 2倍になると思います。

AMH(抗ミュラー管ホルモン:卵巣予備能を示す)の数値を見ると、確かに採卵数は多くないことが予想されますが、数字にガッカリしないでほしいですね。えりさんは数カ月前に自然妊娠を経験したという事実があります。 39 歳の卵子の4 割以上は染色体異常があると言われていますが、だからといって年齢で諦める必要もありません。

不妊治療にあたり、心理的にダメージを 受けていらっしゃるように見えます。

蔵本先生 仕事については上司の方に不妊治療を行っていることを相談することで比較的通院しやすくなったという方も多く、ひとりで抱え込まないことが大切です。今後、政府も少子化対策として、企業に不妊治療の時間を取れるよう働きかけていくようです。また、メンタルケアのサポート窓口がある病院なら、ぜひ一度相談してみてほしいですね。

ご主人の精子についてですが、実は採取ごとに違うクオリティの精子が採取されることが多々あります。また、良い質の精子は、禁欲期間が 2 日以内と言われています。不妊治療は妻だけの問題ではなく、夫婦で取り組むものですから、ご主人との話し合いや意思の疎通をしっかりとって、ひとりで抱え込まないことが大切です。

これからどのような治療法を考えればい いでしょう。

蔵本先生 新鮮胚移植に比べ、子宮内膜環境を整えた凍結胚の融解胚移植の妊娠率は平均 10 %以上高くなります。まず、胚移植 する前の周期に子宮鏡で中の様子を確認し、内膜ポリープがないか、充血していないかなど着床する子宮内膜環境のチェックを行い、内膜の充血があれば慢性子宮内膜炎の可能性も考えられ、ビブラマイシンⓇなどの抗生剤などをうまく利用して、えりさんの状態にあったケアをして子宮内環境を整えてみてはいかがですか。もちろんそのようなことをすべて行ったうえで、それでも妊娠しない場合は心機一転、転院を考えてみるのも良い選択かもしれません。

 失敗を重ねてからの待機中でいろいろ考え込んでしまうことも多いでしょうが、リラックスして次のステップに進んでください。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。