Q 超音波では数多く見えた卵胞が、 採卵するとわずか2つでした
ドクターアドバイス
超音波検査で多くの卵胞が見えても、実 際に採卵数が少ないことはありますか。
苔口先生 ご質問の「ゴナールエフⓇを 3 日間」というのは思い違いではありませんか。 通常の体外受精では、ゴナールエフⓇは 7 日間、後半 2 日間にガニレストⓇを投与します。
今回の原因を 2 つの観点で考えます。まず一つは、多嚢胞性卵巣症候群でクロミッ ドⓇなどの治療を繰り返すことにより、本来は消失するはずの閉鎖卵胞が残っていて、それが今回の注射によってあたかも育っているように見えた。あるいは閉鎖卵胞が近くの卵胞の発育のじゃまをしたという可能性です。さらに多嚢胞性卵巣症候群で考えられるもう一つの可能性は、 多嚢胞性卵巣にともなってアンタゴニスト法で排卵誘発をしていく時に、大きい卵胞、小さい卵胞…と卵胞の特徴を見ながらやっていくので不揃いになることが多いということです。強いて言えば大きい卵胞が何個かあって 14 個見えていても、 小さくて未成熟な段階のものはオビドレ ルⓇの注射などがあまり反応せず、大きさが不揃いのなかで採卵をして 2 個しか採れなかった。このような可能性が、多嚢胞性卵巣症候群ならあり得ます。
もう一つの観点は何でしょうか。
「偽り」とは、操作の間違いで起こるもので、最後の成熟を促す点鼻薬や注射の操作を誤るとLHやHCGが入らず未成熟のままなので、卵子が卵胞の内壁にへ ばりついたまま採卵が不調に終わることがあります。こーたんさんは、オビドレルⓇ の自己注射をきちんとしておられるのでこれには当てはまりません。
一方、真のエンプティフォリクル症候群 となると明確な原因は不明です。基本的には卵胞を成熟させるため、最後に注射する HCGやLHレセプターがあまり反応せず、普通は約 36 時間で成熟するところが 40 ~ 48 時間と長くなってしまいます。この場 合は、2~3カ月排卵を抑制して休ませる とよいようです。文献では 86 %とあります が、私の経験上、ほぼ100%の確率で次の時にはうまく採卵できると思います。
今後の治療方針はどうなりますか。
苔口先生 次回の採卵までに2~3カ月休み、AMHの値によって再度アンタゴニストをするか、ロング法かを判断します。また多 嚢胞性卵巣症候群の場合、この間に糖代謝異常がないかを検査します。これは多嚢胞性卵巣症候群の 2 割ぐらいの方に、糖代謝異常が 見られるからです。メトグルコⓇなど糖尿病の薬を飲むと改善すると言われています。
最後に、こーたんさん自身の治療なので、主治医に納得のいくように説明を聞いて、治療を進めたいですね。もし先生と話すのが難しければ看護師さんなど周りのスタッフに相談してもいいでしょう。