治療期間はあと1年と決断。どんな方法で採卵をしてったらいいのでしょうか?
治療の期限はあと1年。採卵数の減少や良い受精卵がなかなかできない現状で、残りの治療をどう考えていったらいいのか、松本レディースリプロダクションオフィスの松本玲央奈先生に詳しいお話を伺いました。
ドクターズアドバイス
- 周期によっても採卵数の成績は異なります。
- 次は高刺激で胚を獲得。
- 採卵→貯卵→着床検査→移植の流れで。
母になりたいさん(43 歳)からの相談 体外受精を始めて3年。採卵は自然周期で2回、排卵誘発で昨年1回(14 個の採卵で7個が受精、3個の胚盤胞で4BB1個、3BB2個)行いました。4回の移植のうち妊娠判定は2度ありましたが、どちらも胎囊確認できず流産。不育症検査で凝固因子と判明したのでラスト1年と決めて、顕微授精に切り替え、5個採卵して4個受精し、凍結できたのは1個でした。今後、排卵誘発で採卵をしてたくさんの卵子を確保するのか、少ない数しか採れない自然周期か、どちらか決めかねています。
年齢だけでなく、周期によっても成績が異なることがあります
これまでの治療成績についてはどう思われ ますか。
松本先生●昨年の成績、特に誘発に関してはご年齢の割に良いと思いますね。1年前の段階でAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が3・79ng/mlだったとのこと。これも42歳にしては高い数値だと思います。
ところが、移植4回のうち2回は胎囊が確認されずに流産してしまった。
これについては、もしかしたら着床環境に問題があるのかもしれません。子宮内フローラの乱れなどで子宮内膜に炎症があると、胚がうまく着床しないことがあるんですね。
最近の結果については採卵数が少ないうえに、凍結できる受精卵が1個しかなく不安に思っていらっしゃる。確かに 40 代という高齢の場合、1年の差というのは大きいのですが、次も同じような結果になるとはいいきれません。年齢が高くてもお若くても、周期によって良い受精卵ができる時とそうでない時があります。そのような変動の幅は大いにあり得ると思いますね。AMH値は決して悪くないので、まだ卵子が採れる可能性、良い受精卵ができる可能性はあると思います。
主治医からは「できた受精卵は置いておいて改めて受精卵をつくりませんか?」と提案されたようですが、これについてはどう思いますか。
松本先生●このご年齢だと、まずは採卵を優先して貯卵をしておきたいというのは私も同じ考えです。ただ受精卵を保管するのはお金がかかりますから、そことの兼ね合いですね。何を優先するのかは、経済的、時間的なことのバランスを考えながら、最終的にはご夫婦で話し合って決めていただきたいと思います。
月経中の採血とエコーで採卵法の最終判断を
次に採卵する場合、どのような方法でトライしたらいいのでしょうか
松本先生●AMH値などの状態を考えると、この方はまだ卵子が採れる可能性があります。治療はあと1年と考えていらっしゃることも考慮すると、当院なら次は高刺激で卵子確保を目指し、妊娠の確率を上げていく。高刺激にトライしても採卵数が極端に少なかったり、良い受精卵が得られなかったら、「やはりこの1年で卵巣機能の状態が変わってきているのかな」と考え、それ以降は自然周期採卵を選択する可能性もあります。
卵子を多く確保できる刺激周期にするか、少数で勝負する自然周期にするかは月経中の血液 検査とエコー検査でお話しできることがあると思います。今のホルモンや卵胞の状態をみて、自然のほうがいいのか、誘発できる状況なのかを検討していく。最終的にはその段階で選択していくと思います。
ほかにもできることはありますか? また、治療の期限を1年にしたということに関してどう思われますか。
松本先生●おそらくこの方が一番悩んでいるのは、やり残したという意識があるということだと思います。不育症の検査で見つかった問題を改善し、それなら妊娠するのかどうかを知りたい。確認せずに不妊治療をやめてしまったら、のちに後悔する可能性がありますから。いろいろなことを考慮して、治療期間をあと1年に決めたというのはいいことだと思います。不妊治療は精神的にも経済的にも負担があり、このご年齢ならある程度の線も引かなくてはいけない。
その線を引くのはご夫婦以外にはできないこと。続けるにしてもやめるにしても、ご本人たちが納得していることが大切です。
当院からのアドバイスとしては、まず採卵をして貯胚。そして慢性子宮内膜症など着床の検査をして、子宮内環境を万全にしてから移植をする。そこまですれば、やり尽くしたという感じになるのではないでしょうか。