採卵数が少なく、 胚盤胞まで育たない。新鮮胚で体外受精は可能?
AMH が低く、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症や子宮後屈もあり、低刺激誘発で採れる卵子は1つか2つ。しかも胚盤胞まで育ちません。このような場合、選択するべき治療法は?
いくたウィメンズクリニックの生田先生にお話を伺いました。
ドクターズアドバイス
- 子宮内膜への副作用が少ないフェマーラⓇを。
- 細胞を活性化するサプリを服用するのも。
- 今後の人生設計も考えながら治療を。
cocona さん(46 歳)からの相談 治療歴約 4 年。タイミング法と人工授精で治療中。AMH0.5ng/ml で子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症と子宮後屈があります。採 卵は左から 1 ~ 2 個。最初はフェマーラⓇで、その後クロミッドⓇ を使っていますが、結果は同じようです。クロミッドⓇは凍結胚移植が前提ですが、これまで胚盤胞まで育ったことがありません。フェマーラⓇなら人工授精に切り替え可能で、新鮮胚移植ができます。近く、体外受精の予定で、卵子の数も採卵数も少なく、胚盤胞まで育たない場合、新鮮胚移植で臨むのが良いでしょうか?
むやみに胚盤胞まで培養せず新鮮胚のほうが妊娠に繋がることも
盤胞まで育たないのはなぜ? 新鮮胚移植は不利なのでしょうか?
生田先生●高齢になればなるほど、正常な受精卵が育つ確率が低くなるのは否めません。受精卵ができても移植する前にダメになってしまう、また移植はしてみたけれど着床する前の段階で受精卵が変性してしまう可能性も高くなります。
データ上では、45歳で10個受精卵ができたとしても、1~2個が正常な染色体をもっているかという程度なのです。
要するに、 c o c o n a さんの受精卵が胚盤胞まで育たないというのは、年齢的にも染色体異常胚の比率が上昇しますので、ある程度仕方のないことなのですが、だからといって不利であるとか妊娠の可能性がゼロとはいえません。むしろ、あえて胚盤胞まで培養しないほうがいい場合もあります。
それはどういうことなのでしょうか?
生田先生●一般的に、新鮮胚よりも凍結胚のほが良いといわれる理由の一つには、着床のタイミングを合わせやすいということがあります。というのも、卵巣刺激をすると、採卵時に女性ホルモンは自然周期の 10 倍近く高くなり、採卵後週間で、今度は女性ホルモンが 10 分の1くらいに極端に下がってしまいます。そのような非生理的なホルモンバランスにさらされて子宮内膜の調子が悪くなります。特にクロミッドⓇを使っていると内膜に対する女性ホルモンの作用を打ち消すような作用が出て、子宮内膜が薄くなるなど着床に関して不利な影響が出やすくなるのです。
しかし、クロミッドⓇを使わず、子宮内膜の厚さが十分にあって、女性ホルモンもそんなに上がらない周期であれば受精卵を戻すことは可能です。また、胚盤胞まで育たないということは外の培養環境に対して脆弱な受精卵である可能性が高いので、本来あるべき体内に早く戻せる新鮮胚や分割期胚での移植のほうが、より妊娠に繋がる場合もあるのです。そうなると、あえて胚盤胞まで育てて凍結するだけの利点はあまりないといえます。
フェマーラⓇと間欠的に注射剤を併用しサプリメントを取り入れるのもおすすめ
今後はどのような治療を進めるべきでしょうか?
生田先生● A M H の数値を見る限り、強い刺激をしても多くの採卵数は望めないと思いますし、子宮内膜への副作用を避けるためにもクロミッドⓇ よりフェマーラⓇ を使った低刺激誘発が適していると思います。フェマーラⓇ のみ、もしくは、必要に応じて間欠的に注射剤を併用してみて、できるだけ採卵数が多くなるように調整するのも良いでしょう。さらに、細胞の活性を高めるといわれるような D H A とか、Lカルニチン、コエンザエムQ10、メラトニン、アルギン、ビタミンC・Eなどのサプリメントを使うことも一つの手だと思います。
毎回、1個か2個の採卵数ということであれば、自然な周期で採卵するという選択もありますが、年齢的にあまりおすすめはしません。当院でも年齢が高い方には、一般不妊治療の中で一番可能性が高くなる治療を早めにしてみて、うまくいかなければ体外受精をすすめます。
c o c o n a さんはタイミングも人工授精もすでに何度か行っています。また、いつから子宮内膜症があったのかわかりませんが、内膜症があること自体、治療による妊娠率は低くなるとされていますし、病状が進んでしまわないうちに治療方法を早めに設定する必要があります。
一度、子宮内膜症の治療を行って引き続き体外受精に移るという方法もありかもしれません。また同時に、いつまで治療を頑張るかということも、ご夫婦で相談してみてください。なぜなら今、妊娠、出産されたとしてお子さんが成人する時には60代です。ご自分とご夫婦としての人生設計も考えながら、今後の治療を選択し、進める必要はあると思います。