胚も子宮内膜の状態もいいのに 4回移植しても着床しません

慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡手術に従事。 子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による子宮筋腫、 内膜症の解消・改善を積極的に図ると同時に、妊娠困難症例に対して も新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院)泌尿器科の男性不 妊専門医の協力により、TESE-ICSIや逆行性射精など、男性不妊の 治療体制も整えている。昨秋は胃腸の調子が悪く、社会人になってから 初めて長い期間禁酒生活を送ったとか。検査の結果はまったく異常なし。 現在はすっかり回復して、お正月は毎年恒例のスキー合宿をしたそうです。

ドクターアドバイス

●免疫系の異常も考えられるのでまずは着床に関する検査を
●胚の戻し方や卵巣刺激法など、これまでと違う方法を試してみる
マーボナスさん(35歳)からの相談 Q.3年前から不妊治療をスタート。これまでタイミング法、 人工授精6回をした後、体外受精にステップアップしまし た。クロミッド Ⓡをベースにした低刺激で採卵4回、胚移 植を4回試みましたが、着床していません。先生からは「 胚 も子宮内膜も良く、なぜ着床しないのかわからない」と いわれました。治療の途中に腹腔鏡で卵管采の癒着剥離 をして、その1年後に左卵巣に5.5㎝の腫瘤が発見され たのですが、先生は「影響ない」ということでした。では、 何が原因なのでしょうか。今後どのようにすれば良いか、 アドバイスをお願いします。

良好な胚を戻しても着床しない原因は、 どんなことが考えられますか。

やはり、卵 巣腫瘤なども影響しているのでしょうか。
北村先生 担当の先生がおっしゃったよ うに、卵巣の腫瘤が原因ということは考え にくいと思います。
今すぐ、腫瘤を取った からといって、妊娠の可能性がすごく上が るということはないのでは。
妊娠がしやす いかどうかということに関しては、チョコ レート嚢腫ではない限り、特に急いで手を 付ける必要はないのかなと思いますね。
通常、良好な胚盤胞を2、3回戻しても 着床しない場合、まず免疫の異常が疑われ るのではないでしょうか。
女性の体は妊娠 中はもちろん、着床する前から「受精卵を 排除しない」という免疫のブロックがか かっています。
それがうまく働かないと着 床できないし、妊娠を継続することもでき ません。
もし、着床を阻害するような免疫異常が あった場合、初期胚と胚盤胞を2回に分け て移植する二段階胚移植で妊娠される方 もいらっしゃいます。
この方法でどなたで も妊娠率が格段にアップするということ はいえませんが、まだやっていないようで したら、試してみる価値は十分あると思い ます。
また、これまで着床不全や不育症に関わ る検査を受けていないようなら、やってみ る必要があると思いますね。
以前、受けて 異常がなかったとしても、1、2年も経つ と状況が変わることがあるので、現時点で きちんと着床に関わる要素のチェックを してみる。
何か問題があれば、治療で改善 できることもあります。

ほかに何かできることはありますか?

北村先生 この段階でできることは、大き く分けて2つあると思います。
1つは前述したように検査などで原因になっているかもしれない要素を消去していくこと。
も う1つはこれまでやっていない方法にト ライしてみることです。
もし良好な胚盤胞が残っているのなら、 戻し方を変えてみてはどうでしょうか。
自 然周期で戻していたら、今度はホルモン補 充周期にして、着床しやすくなるかどうか みてみます。
また、二段階移植を試す場合 は、新たに卵子をつくることを考えなくて はならないかもしれません。
その時にどん な方法をとったらいいのか。
マーボナスさんはこれまでほとんど低 刺激で卵子をつくっていたようですね。
も しかしたらもう少し刺激が強い方法のほ うが合っている場合もあります。
AMH (抗ミュラー管ホルモン)の検査をされて いないようですが、きちんと数値を確認し て、どんな卵巣刺激法がいいのか検討して いくことも大切。
卵子が採れていて胚も良好、精子にも異 常がないようですから、ご本人が頑張れる なら、対策はまだまだあると思います。
希 望をもって治療に臨んでいただきたいで すね。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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