高齢での妊娠継続のために できることは何ですか?
ドクターアドバイス
流産の原因は染色体異 常がほとんど。健康な 体づくりで老化を防ぐこ とが大切です。
40代の流産は 原因のほとんどが 加齢による染色体異常
年齢と妊娠には密接な関係があり、 年齢を重ねれば重ねるほど妊娠しにく くなりますし、流産率も上昇します。
女性は、生まれた時に卵巣内に約 200万個の卵子をもつといわれてい ます。
新たにつくられることはなく、 その数は思春期には約 30 万個に減り、30 歳で 10 万個を切り、 37 歳頃には約3 万個、閉経する 50 〜 52 歳頃にはわず か1000個くらいに減ってしまいま す。
卵子は本人とともに年をとるため、 数が減るだけでなく、質も低下してい きます。そのため妊娠率が下がります。
たとえ体外受精をしても、数と質の低 下を超える妊娠成績をもたらすことが できず、妊娠自体が難しくなるのが高 齢での不妊治療の現実です。
妊娠する割合と、妊娠後出産に至る 割合は年齢とともにどう変化するのか を、日本産科婦人科学会が発表した 2014年のデータで見ていきましょ う。
体外受精治療をした人の妊娠率は30 歳前後では 40 %ですが、 40 歳前後 には 25 %に低下。
その後、 42 歳では17 ・7%、 44 歳では 10 ・7%、 46 歳では4.4 %です。
出産に至る割合は、 30 歳前 後では 21 〜 22 %、 40 歳前後では 8.8 %、42 歳では 4.4 %、 44 歳では 1.6 %、 46 歳で は 0.4 %と徐々に下がっていきます。
流産の原因の 60 〜 70 %を占めるのが 染色体異常です。
受精前の卵子や精子 に異常がなくても、受精や卵割の段階 で染色体異常が発生し、流産につなが ります。
その割合は加齢によって増え、45 歳以上の流産では 80 〜 90 %が染色体異常が原因といわれています。
その他の原因としては、多くはあり ませんが、内分泌異常や自己免疫疾患、 血液凝固異常などによる不育症や反復 流産があります。
また、精神的なショッ クやストレスを受けた場合は、体調不 良や免疫力の低下につながり、多少の 影響があるかもしれません。
心身ともに健康な 状態に保つことが 自分自身でできる対策
染色体異常には、残念ながら治療 法はありませんが、少しでも妊娠し やすい状態に近づけ、妊娠を継続さ せるためには心身ともに健康な体づ くりを行うことが重要です。
適正体 重を保つこと、十分な睡眠をとるこ と、適度な運動を行うこと、ストレ スを解消しバランスの良い食事をと ること。アルコールやカフェインの 摂取を避けることも大切です。
また、最近注目されている活性酸素を除去 する抗酸化作用のある食べ物やサプ リメントなどを摂取して、少しでも 老化を防ぐことを心がけたいですね。
流産の原因が染色体異常以外の場 合、黄体機能不全なら黄体ホルモンの 補充、自己免疫疾患や血液凝固異常が 疑われる場合はアスピリンやヘパリ ン、ある種の漢方なども有効といわれ ます。
現在の検査では、不育症の原因 のすべてが解明されているわけではあ りませんから、アスピリンの予防的投 与も有効かもしれません。
年齢の上昇とともに、流産率は上昇 します。
40 代で不妊治療をされている 方は、期待と不安、落胆などで心と体 が疲れてしまうこともあります。
大切 なのは、妊娠率だけでなく、出産に至 る割合や流産率もきちんと確認するこ と。
そのうえで、治療を続ける期間を 決めておくこと。
私も医療従事者とし て、必要な情報を伝え、結果の見直し を行ったうえで、患者さんの決定を尊 重しながら、きめ細かな治療法を選択 していかなければと考えています。