「着床の窓」とは何のこと?
40 代が気をつけるべきこと、 年齢による違いはあるの?
「着 床 の 窓 」(Implantation Window)という言葉を耳にし たことはありますか?
醍醐渡 辺クリニック・石川弘伸先生に 基本的な知識と40代が知って おくべきことを伺いました。
ドクターアドバイス
「着床の窓」については 高齢かどうかよりも、凍結胚移植などで胚移植の タイミングを見極めるこ とが重要です。
「着床の窓」とは どんなもの?
自然の妊娠では、受精後5日ほ どで受精卵は子宮に達し、7日目 には子宮内膜に潜り込んで根を 張っていきます。
これが着床で す。
同様に体外受精の良好な受 精卵を子宮に戻したとしても、残 念ながら着床しやすい時期とそう でない時期があり、この着床に最 も適した時期のことを「着床の窓 ( Implantation Window )」と表現 しているのです。
もともとマウス を使った動物実験で観察された現 象で、具体的に何かが開いて受精 卵を受け入れやすくなるというよ うなものではありません。
「着床の窓」が 開く期間を 知ることはできるの?
一般的に、卵胞ホルモンの作用 によって子宮内膜が育つ段階で、 排卵後のある一時期の2〜3日間 が着床に最も適した状態=「着床 の窓」と考えられています。
経験 的には排卵後、だいたい4、5日 後くらいなのですが、人によって はもしかしたら1週間後かもしれ なくて、現状でそれを正確に確認 する方法はありません。
ただ排卵を境に、黄体ホルモン( P )の値が上がりはじめますので、 それが一つのサインとなっていて、P の値がある一定の値を超えると 「着床の窓」は閉じるといわれてい ます。
ですから当院では、採卵日のP の値を参考にして移植するかどう か決めています。
P が6 ng / ml 以上 であれば、基本的にはその周期の移 植を見送ります。
移植をしても着床 の見込みが少ないので、受精卵を凍 結保存しておき、別の周期に移植を 行うのです。
そうすることによって着床率がアップし、妊娠の可能性を 高められます。
高齢のために 窓の開く期間が 短くなることがある?
海外の卵子提供の方の実例を見れ ば、かなり高齢の方の出産例もあり ます。
ドナーによる卵子提供の場合、30 〜 40 代の方の妊娠率は、基本的に ほとんど変わりません。
極端な例で すが、ホルモン環境さえ整えば、 60 代での代理出産も可能です。
子宮側 に筋腫などの問題がなく、ホルモンの状況さえ整っていれば、高齢だか らといって「着床の窓」が開く期間 が極端に短くなるとは考えにくいで しょう。
当院でも過半数の患者さんの年 齢は 40 歳を超えていて、 40 代の方 の治療をどのように進めていくか は今後の大きな課題となっていま す。
体外受精は受精卵ができるま での期間を、比較的、確実にサポー トできる、不妊治療の中で最もロ スが少ない治療です。
ただその先 の着床のメカニズムには、いまだ 解明されていないことが多いとい うのが実情なのです。