胚盤胞にするかどうか迷っています

原 利夫 先生 1983年、慶應義塾大学大学院(医学)修了にて医学博士学位を 取得。同大産婦人科助手時代、日本初の凍結受精卵ベビー誕生 の一員として活躍。その後、東京歯科大学市川病院講師、千葉衛 生短大非常勤講師を経て、1993 年はらメディカルクリニックを開院。 患者さんが和めるようにとクリニック入り口に、人型ロボット“ペッパー” を設置。会話やダンス、記念撮影も一緒に楽しめます。また、癒やし として人気のアクアリウムも専門誌に掲載されるほどのこだわりです。

初期胚の新鮮胚移植か、 胚盤胞まで育てるか、 ベストな選択は?

SUSUさん(44歳)からの相談 Q.30代後半に自然妊娠を3回して、すべて稽留流産(不育症検査陰性)、42歳の 時にも妊娠・稽留流産を1回。体外受精を始めてからは移植3回目で、3日目分割 胚で今年、化学流産を経験しています。計6回移植して、残りはかすりもしてい ません。今回は自然周期で4個採卵。先生からは「1個を新鮮胚移植で移植し、 残りは胚盤胞を目指したら?」と提案されましたが、「年齢が高いとシャーレ内の環 境に耐えられず、特に妊娠の経験のある人はお腹の中のほうが育つ」という話を 聞いたことがあるのと、以前、胚盤胞を移植してもダメだったので、どうせなら 全部初期胚・凍結でいいのでは、と思ってしまいます。夫の数値も悪いので顕微授精を行っていますが、どう思われますか?

妊娠率は胚盤胞の方が…

初期胚の新鮮胚移植か初期胚の凍結胚移植、もしくは胚盤胞まで育てるか……。 44 歳 という年齢を考えると、どのような形での移植が望ましいのでしょうか。
原先生 年齢が高い方の場合、胚盤胞については新鮮胚で戻したほうがいいというのと、1回凍結したほうがいいという2つの意見があるのですが、正直、どちらがベストなのか明確な答えは出ていません。
初期胚については、積極的に移植するのは あまり良くないという意見もあります。
本来、この段階の胚はお腹の中ではまだ卵管の中にいる状態。卵管という温室の中で育てて胚盤胞になり、子宮に下りてくるわけですよね。
温室栽培を飛ばしていきなり地面に植えるようなものですから、妊娠率という点で比べたら、胚盤胞での移植のほうが高くはなってくると思います。
採れた卵子数の割合から考えると、胚盤胞 まで育つ受精卵はどうしても少なくなるので、妊娠率は低いように思われるかもしれませんが、最終段階までしっかり育った胚であれば妊娠率は高いということなんですね。

胚盤胞でも年齢によっては…

胚盤胞まで育てるということについて、「受精卵がシャーレの環境に耐えられないのでは?」と心配されているようですが。
原先生 現在は培養や凍結の技術がかなり進歩しているので、受精卵を外の環境に出したからダメになるということはほとんどありません。
年齢が高い方の場合でも胚盤胞移植は妊娠率を高める方法だと思いますが、懸念されるのは培養してもなかなか胚盤胞まで育たないということ。
それは培養環境に置いたからということで はなく、やはり年齢によるものです。
受精卵にとって分割するというのは大事業なんですね。
大事業を成し遂げるためにはエネルギーがたくさん必要になる。
それに大きく関わっているのがミトコンドリアなんですが、ミトコンドリアが老化するとエネルギーを生む機能が低下して、初期胚までは何とか分割しても、それから先はガソリン切れのような状態になって分割しなくなってしまう。
また、胚盤胞まで発育したとしても、 42 歳 以上だとその胚盤胞の 75 %以上には染色体異 常が発現しているため着床率は低下し、流産率も上昇してしまいます。

胚盤胞・凍結が大原則

こちらのクリニックだったら次回、どのような移植の形を提案されますか。
原先生 当院では胚盤胞・凍結という形が大原則です。
しかし、4個採れているので「違う方法を試してみたい」というお気持ちがあれば、担当医の先生が提案されたように1個を新鮮胚移植してもいいのでは?
これまでと違う方法で良い結果が出るかもしれません。残りはやはり胚盤胞まで培養したいですね。
前述したようにご年齢を考えたら可能性は高いとはいえませんが、その中で少しでも妊娠率の高い方法を選択していきたいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。