転院を決めてよかった

「勇気を出して」、転院を決めてよかった──。

まるで、“ゴールの見えないマラソン” 回り道、迷い道を繰り返しながら、8 年間の不妊治療を、夫婦で走りぬきました。

医療従事者で、勉強熱心だからこそ、 数多ある“情報”に振り回され続けた日々。

「赤ちゃんに会うまで、諦めない!」と 頑張り続けた、春さんご夫婦の物語です。

仕事をしながらの治療を8 年間も続けることに!

春さん( 41 歳)が同い年の ご主人とご結婚されたのは 2005年の4月。

春さんの 幼馴染が取り持ってくれたご 縁でした。

「おでんが食べたいと言った ら、彼が探してきてくれたお 店がなんだか怪しくて(笑)。

戸惑っていたら、“入ろう、勇 気を出して!”と彼が言った のです。

何げない一言でした が、この人と一緒なら楽しい 人生を歩めるかもしれない、 と思って」と、春さんは結婚を決意しました。

当時も今も看護師として忙 しく働く春さん。

長期休暇も 取れず、新婚旅行も結婚から 1年後でした。

ご主人の転勤 も重なり、いったん仕事を離 れての休暇。

「子づくりをする なら今かも」と、まずは検査 を受けることにしました。

「検査の結果、何も問題はあ りませんでした。

ただ、夫の 精子の運動率が少々思わしく なく、不妊治療をしたほうが いいかもしれません、と医師 から勧められたのです」

大したことではない───。

しかし、それから我が子を抱くまで 8 年間ももがきました。

原因不明のもどかしさから、 自己嫌悪に陥ったことも

当時はまだ 30 代前半で焦る 気持ちもなく、転居先近くで 再就職し、勤務先に近い病院 で不妊治療を始めた春さんで したが、 3 年近く通院し、A IH、IVF、ETとステッ プアップしても妊娠反応すら 出ないことに、しだいに不安 を抱き始めます。

「子宮筋腫があることはわ かっていましたが、小さいの で問題はないだろうとのことでした。

1 ㎝大の子宮ポリー プは、担当医が紹介してくれ た医療機関で切除しました。

採卵でも 10 個ほど採れるし、 夫も治療をしているし、担当 医も首をひねるばかり。

どう すればいいのだろうか、と途 方にくれました」と、春さん は当時を振り返ります。

「ワラにもすがる思い」で、 春さんは漢方薬での体質改善 も試みました。

1 年 3 カ月の 間漢方治療をし、「今度こそ、 きっと!」と実施した 5 度目 の胚盤胞移植でしたが、それ も残念な結果に。残された胚 はあと一つということもあり、「ストレスがたまり、泣 き出したり、怒ったりと、心 が不安定に。友人の出産も喜 べない、ネガティブな自分が 嫌でならなかった」とか。

そんな時、ご主人は旅行へ、 食事へと、春さんを連れ出し ました。

「妊娠前の、今を楽 しもう」と。

回り道をしてたどり着いた 見逃されていた原因

寝る間も惜しんでインター ネットで不妊の原因を模索し 続けた春さんは、今度は着床 障害を疑います。

すぐに予約が取れたのは、自宅のある神 奈川から遠く離れた大阪の専 門病院の着床障害外来でした。

「そこで数多くの検査を受け た結果、同種免疫異常が疑わ れました。

夫婦のリンパ球の 相性が悪く、赤ちゃんを異物 とみなして攻撃してしまうの が原因ではないかと」

そして、半年近く通ってリン パ球移植を受けました。

「他の検査からも、右卵管水腫 や左卵管閉塞が悪影響している ことがわかり、これらの治療も 必要ということでした。

でも、 元のクリニックへの信頼が薄ら いでいたので、腹腔鏡下手術の 実績のある病院をインターネットで探したのです」

それが、メディカルパーク 湘南でした。

これまでの治療 履歴を詳細にまとめた春さん のレポートに目を通した田中 先生は、「子宮筋腫の手術もし ましょう。

大丈夫、妊娠でき ますよ」と一言。

「驚きました。

どの病院でも、 子宮筋腫は問題ないと言われ 続けていたのですから。

でも、 田中先生の熱意を感じ、すべ てお任せすることに決めまし た」と、春さん。

24 個の子宮筋腫、両側卵管、 腺筋腫の一部を切除する難し い手術を受けたのは2012 年 5 月。

手術前に採卵した凍結胚を、翌年の3月、 6 月に 移植すると、どちらも妊娠反 応が!

そして、7月の移植 でついに妊娠。切迫流産の危 機も乗り越え、昨年 2 月、 33 週目で2496gの男児を帝 王切開で出産しました。

「ずいぶんと回り道もしまし たが、今は、すべて必要な経 験だったと思えます。

転院に もためらいましたが、勇気を 出して漫然とした治療から抜 け出したのがよかったのかと。

今はただ、毎回治療に付き合っ てくれた夫、励ましてくれた 職場の上司など、支えてくれ た人たちへの感謝の気持ちで いっぱいです」

fromドクター 治療を振り返って

メディカルパーク湘南 田中雄大先生  春さんを初診でみた時、まず驚きました。とにかくひどい内膜症で、子宮筋腫も20 個以上あり、子宮腺筋症、卵管水腫も合併していたのです。この状況で妊娠するのはま ず無理だろうと思いました。これは難治症例で、相当大変な治療になるだろうと。  手術は本当に壮絶なものでした。20個以上の筋腫、内膜症、卵管を切除し、そのあと ひたすら縫合します。万が一あとから出血してくると、最悪の場合子宮を取らないとい けないこともあるのですが、そこは神様が味方してくれました。  手術が無事に終わり、その後に移植した卵はすべて着床しています。ここから言える ことは、手術したことで子宮と卵巣、お腹の中の状況が劇的に改善されたのは間違いな いということです。  私は常々、不妊治療に携わっていてもすべての妊娠は医療者のなせる業ではなく、神 様がくれたものだと思っています。しかし今回ばかりは手術をしたことが妊娠に寄与し たと、自信をもって言える症例です。私たちをご信頼いただいたからこそ、力を発揮で きたのだと思います。
>全記事がドクター編集!

全記事がドクター編集!

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。