受精や培養、移植のベストな選択は?

受精や培養、移植のベストな選択は?

高度生殖医療における受精や培養、胚移植は、不妊治療の最終段階ともいえます。

方法を選ぶ基準や妊娠 率を向上させるやり方について、かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生にお話を伺いました。

柏崎 祐士 先生 京都府立医科大学医学部卒業。2000年まで日本大学板橋病院で 主に不妊治療に従事し、その間、米国エール大学医学部産婦人科 で研修。その後、「かしわざき産婦人科」副院長に。日本生殖医学 会生殖医療専門医、日本産科婦人科学会認定医。O型・おとめ座。 研修医のご長女は現在、さまざまな科で勉強中。先日、新しい薬 の使い方や注意点について詳しく教えてもらい、その成長ぶりを 喜ぶとともに「ああ、来るべきものが来た」と一抹の寂しさも覚 えたとか。

ドクターアドバイス

ベストな受精、培養、移植法は 条件によって異なります

「胚盤胞を凍結して移植」という方法がもっ とも妊娠率が高い、という考え方があります が、どの方にも最適であるとはいいきれな いと思います。

年齢や受精卵の育ち具合など、 個々の条件によっては初期胚を新鮮胚移植 するという選択もあるので、状況に応じて 選択していくことになるかと思います。

受精と培養についての基礎知識

〇現在は凍結胚移植のほうが主流

△受精しないのは卵子が老化しているから

△胚の評価が良いと妊娠率が高い

✖顕微授精なら完全な精子を選べる

受精卵のグレード

グレードといって培養した胚を評価付け しますが、あくまでも外側から観察した もの。

通常は、染色体など胚の 中身の状 態や能力まで詳細に分析できないのが現 状です。

 培養液も少しずつ進化

最近は1種類で済む培養液も開発されて います。

受精卵を取り出すことがなくな るので、細胞にとって余計なストレスを 軽減できる可能性も。

 体外受精でも 受精しないのは 卵子が老化しているから?

これは一概に卵子の老化だけが原因だと はいえません。

卵子ではなく、精子側の問 題で受精障害を起こすこともあります。

数 や運動率は正常でも、なぜか精子が卵子を 嫌って入っていかないというケースもあるんで すね。

このような場合には、人の手で受精さ せる顕微授精という方法があります。

精子 の数が極端に少ない人は最初から適応になり ますが、精子に問題がなくても、体外受精 で数回トライしてうまくいかない場合もこの 方法をご提案することがあります。

また、患者さんから「卵子が老化してい る場合、顕微授精をすればうまくいきます か?」と聞かれることがあります。

少しは 助けになるかもしれませんが、本質的に大 きなメリットになるかどうかは何ともいえま せん。

受精はしたとしても、その先の受精卵 の成長は顕微授精をしたから良くなるとは いえないんですね。

ですから、「年齢が高く、 卵子が老化していることが考えられるから顕 微授精にしましょう」という第一選択はあま りないと思います。

現在の不妊治療の中で 最も治療効果が高いのが 顕微授精なの?

確かに、体外受精であらゆる手を尽くし ても不成功だった人が最終的に進むステップ は顕微授精になるかと思います。

「だったら、 最初から顕微授精をしたほうが合理的なの では?」と思われるかもしれませんが、この 方法にも欠点があります。

顕微授精は1匹の精子を選び、細い管で吸って卵子と受精させるのですが、人の手で行っ ている作業ですから、どの精子を選ぶかは培養 士の主観になります。

もちろん、訓練されたエ キスパートが、元気に動いて形もきれいな精子 を選びますが、果たしてそれが遺伝子的にいい ものかどうかはわかりません。

詳しく遺伝子 解析をすればだいたいいい精子かどうかわかり ますが、そのためには精子を殺さなくてはいけ ません。

解析して中身まで良好な精子とわかっ たとしても、それを使うことはできないという 悩ましさがあります。

一方、普通の体外受精というのは、卵子1個 に対して 10 ~ 20 万匹の精子を振りかける方法で す。

そのうち、競争に打ち勝った強い精子1匹 だけが卵子の中に入っていく。

顕微授精よりも、 生物学的に厳しいセレクションがかかるといえま す。

ですから当院では、無条件にすべての患者 さんに顕微授精をするということはありません。

確実に受精はするけれど、それが最終的にい い結果になるかどうかはわからない。

顕微授精 は夢の治療法ではありませんが、数が極端に少 ないなど、精子側の問題でこれまで妊娠する可 能性がゼロに近かった人にとってはすごくいい方法 だと思います。

今、男性不妊が増加している傾 向にあるので、顕微授精に臨む人が増えているの は事実ですね。

受精卵の評価とは?

前述した精子の場合のように、現状では受 精卵の見た目でしか評価をつけることができま せん。

評価法として一般的なのはガードナーの 分類。

これは細胞の見た目や大きさ、発育具 合などで細かくより分けていくもの。

観察す る側の主観を取り除く意味で、スコアリングし て評価をするわけですね。

指標があることで評価がばらつくことは少なくなってきましたが、これも絶対ではありませ ん。

実際、見た目はきれいな胚盤胞なのに妊 娠しないこともありますし、「これはどうかな」 という状態の胚を戻しても妊娠に至ることがあ ります。

ただ総体的に見ると、受精卵のグレー ドと妊娠率はほとんど比例、相関していますか ら、参考になることは確かだと思います。

胚盤胞か初期胚か、 凍結胚か新鮮胚か、 移植のベストな形は?

経験から鑑みても、やはり胚盤胞まで育った ものを移植したほうが妊娠率は高いといえま す。

ただし、年齢が高い方の場合は胚盤胞ま で育たないこともあるので、3日目の初期胚で 戻すこともあります。

培養しても胚盤胞までいかないけれど、2日 目、3日目までは問題ないという受精卵は、子 宮と卵管という場所の違いはあるにしても、外 側の環境と体の中の環境を比べた場合、細胞に とっては体の中のほうがまだいいので初期で戻し たほうがいいのではないかと。

しかしこの考え 方には反論もあり、「胚盤胞まで育たない受精 卵だったら、その段階で戻してもうまくいかな いはずだ」という意見もあります。

受精卵が へとへとになっている場合は体内でうまく成長 することを期待して、または胚盤胞にこだわっ て移植がキャンセルになってしまわないよう、当 院を含め、高齢の方の場合は3日目の胚で戻す ことを推奨している施設もあります。

凍結胚か新鮮胚かについてですが、今は強 く刺激して卵子をたくさん採るケースが多いで すよね。

そうすると、体内でホルモンが過剰 な状態になってしまう。

ホルモン状態が正常で はない時に戻してもあまり妊娠率は高くなら ないので、胚をいったん凍結して、ホルモンが普 通の状況に戻った時に移植を、という考え方が一般的になってきました。

おそらく、現在は 胚移植の6割以上は凍結胚移植なのではない でしょうか。

ホルモンバランスに影響が出ない自然周期や 低刺激で誘発した、もしくは受精卵が凍結 に耐えられないのではないかと思われる場合 は新鮮胚で移植することも。

わずかでも凍 結のダメージを考えて、「年齢が高い人は新 鮮胚で戻したほうがいい」という考えもあり、 当院でもご提案することがあります。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。