落ち込んだ時は そこにずっととどまらない

田村秀子先生の 心の 玉手箱Vol.25

治療中の親しい友人が 先に妊娠してしまった時、 素直に喜べない自分に自己嫌悪。

そんな自分の気持ちと 上手く付き合うにはどうすれば?

秀子先生にお話を伺いました。

田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第 一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして 双子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人 科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを 開設。繊細な感性を秘めた、おおらかなお人柄が魅力。 A型・みずがめ座。子どもの頃から産婦人科医の仕事 に興味を持っていたという娘さんが、今年、研修医とし て京都に戻って来られたそう。「最近は仕事の後、娘と 居酒屋で晩酌するのが日課。私よりも聞き上手!」と、 少し嬉しそうに教えてくださいました。
みよきちさん(主婦• 31歳) 焦らないために自分に言い聞かせている言葉など あれば教えていただけませんか? ベビ待ち6年 になる者です。顕微授精で移植も9回?10回? 友人たちは2人目ラッシュ、でも私は私。芸能人 の妊娠を聞いても、もう何とも思わない、ついに 免疫ができたのかと思ったのですが……。去年か ら不妊治療を始めた幼なじみが、今月妊娠しまし た。とても嬉しいのですが、この何カ月かは初め て共感してくれる友達を得られて、嬉しく思って いた矢先だったからか、関係が近すぎるからか ……久しぶりに心がキューっとなっています。

みよきちさんの投稿に 寄せられたコメントです!

まもるさん(医療系・33 歳) 私も周囲は2人目ラッシュ。今6回目の顕微授精に向けて 頑張っています。不妊治療のことはなかなか当たらない高 い宝くじを買っているような気持ちであまり期待せず、淡々 とこなしています。私にとって気持ちが楽になったのはク リニックにあった「頑張りすぎない、諦めない」という言葉。 あとは「果報は寝て待て」です。努力しても思い通りにな らなくて心折れる日も多い不妊治療ですが、いつか子ども を授かって人の痛みのわかるオトナな女性になれるように 頑張ります!
ぷくぷくさん(主婦・31歳) お気持ちわかります。陰性判定のたびに号泣しています (笑)。そしてひとしきり泣いた後は唐辛子のきいたラー メンを食べて汗と一緒に嫌な気持ちを洗い流していま す。念じすぎるのはよくないと思って、私は標語とか言 葉とかは考えていません。リフレッシュのために最近、 ハイキングを始めました。近郊の低い山ばかりですが、 登頂すると自分の体がとても健康に思えてきて不妊治療 中に失った自分の体に対する自信が少し回復できまし た。お互い折れずに頑張りましょ。

ポジティブになるには 小さな“願掛け”を してみよう

本当に近しい人が妊娠すると、皆さんやはり落ち込みが激しいみたいですね。

だけど無理してその思いを打ち消そうとしてもダメ。前にも言ったことがあると思いますが、昔からお坊さんの袈裟に触るといいことがあるっていうでしょ?

あれと同じように、落ち込んだ時の自分のために、ちょっとした“願掛け”のようなものを作っておくのは良い方法かなと思いますね。

私も実はマイナス思考な人間なので、しんどい時、車を運転しながら赤い車を何台見たか数えたりします。

「今日は赤い車を5台以上見たから良いことがあるかもしれないわ!」とかね。

それで自分を鼓舞するというか、気持ちをポジティブにするみたいなことをやるようにしています。

男性にはちょっと理解しがたいことかもしれないですね(笑)。

気になるのは仕方ない 目をそらせる術を 身につけておきたい

皆さんは誰かにアドバイスを求めようとした場合、「あの人、苦手なの」と言葉に出したことによって、ますます嫌いになったという経験はありませんか?

次からその人を見た時に、前と同じようにはもう見られない。

言葉に出さなかった時よりも、もっとその人のことを嫌いに思ってしまうことがあります。

きっと言葉にした途端、それがまた自分の言葉として記憶の中に擦り込まれるからなのでしょう。

女の人は「気にするな」と言われると、まるでパンドラの箱みたいに、ますますその箱の中身が気になってしまうところがある。

気にするなと言われた途端に、かえってその部分がぽわーんとクローズアップされてしまう。

だから、友達が妊娠したことを「気にするな」じゃなく、気にしてもいいけど、すっとそこから目をそらせる術があれば大丈夫だと思うんですよね。

気にするな=見たらダメということでしょう?目をそらせることができたらそれでOKと考えましょう。

自分の気持ちがずっとネガティブな気持ちにとどまらないようにする方法は何か、それを考える必要はあると思います。

共感だけでは 抜け出せないから 自分ではい上がる

女性とは共感の生き物ですよね。

「落ち込むよねー」「そうそう、私もそうなんだぁ」「わかる〜!」とか、そういう話を仲間としている間は、なかなかアリ地獄からはい上がってこられません。

お話をしている間というのは傷をなめ合っているわけで、とても心地がいいんですよ。

でも、多分、ご主人に聞いてもらっても、「うーん、気にしなくていいんじゃない?」としか返ってこない。

すると、「そんなことを聞いてるんじゃない!」となるでしょう(笑)。

自分で努力したら何とかなるものなら、目標や標語を掲げてもいいかもしれないけれど、不妊治療はそうじゃない。

受験の目標を書いて部屋に貼るのとはちょっとワケが違います。

だから、自分をポジティブにするためのきっかけは、もっと本当に些細な、他愛のない、でも自分の努力ではできないことがいいと思います。

お坊さんの袈裟とか、さっきの赤い車の話とか、“今日のラッキーアイテム”やお祓いの要素を、自分の生活の中で見つけること。

しんどい時も、そんな一見しょーもないことをやりながらクリアしていると、案外乗り切れていくものですよ。

秀子の格言

「どうしようもなく落ち込んだ時は そこにずっととどまらない 自分だけの工夫を見つけましょう」

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。