共通点があるからこそ友人でいられる

田村秀子先生の 心の 玉手箱Vol.29

子どものいる友人と どんなふうに接したらいい?

意識せずにつき合おうと、 思えば思うほどギクシャク。

自分の心の狭さに自己嫌悪……。

秀子先生にお話を伺います。

ちろさん(主婦• 40歳) Q.治療を始めて4年目、2度流産していて子どもは いません。1年前に出産した友人とのつき合い方 で悩んでいます。「自分は欲しくないのに、2人 目の子どものことで主人とケンカをしてしまう」 と、よく相談を受けていました。それから約1カ 月後、彼女は2人目をすんなり妊娠。私には教え てくれませんでした。私を気遣ったからとのこと でしたが、子どもができない境遇を悩みながら、 あれだけ親身に悩みも愚痴も聞いていた自分は何 だったんだろうかと……。こんなふうに思うのは 私の心が狭いだけなのかと落ち込みます。

ちろさんの投稿に 寄せられたコメントです!

マドラスさん(主婦・42 歳) 持病の治療に8年、一昨年から不妊治療を始めて2回流産 を経験し、現在も治療中の者です。私はたくさんの子ども を授かった友達や、周りにいた人を避けて生きてきました。 自分の安定を優先するにはそれしか方法がありませんでし た。でもこの年齢になってみて後悔もしています。自分が つらいと思う人間関係を維持するのはつらいですよね。で もその関係を失った場合の先の先までよく考えたほうがい いと思います。失ってもいい関係なのか? 本当によく考 えて後悔のないようにしてくださいね。
匿名さん(主婦・40 歳) 私にもよく似た友人がいましたが、その人はよく考えたら 普通の友人関係であった時から、どちらかといえば都合の いい時だけ利用してくるような人でした。ちろさんのその 友人も何となく同じような感じがしたので、あまり妊娠、 出産に結び付けて自分を責める必要はないと思います。き つい言い方ですが、少なくともその友人はちろさんがそう やって悩むほど、ちろさんのことを大切な友人と思ってい ないのでは? もっとちろさんのことをきちんと想ってく れる人を大切にしたほうがいいと思いますよ。

「友人」の定義って? 単なる知り合いと 友人とは違う

女性のいう「友人」とか「友達」の定義ってとても広いですよね。
人によって違うと思いますが、お茶を飲みに行っただけでも友人だし。
でも、それって単なる知り合いであって、友人ではないのかも。
ちろさんが「友人」とおっしゃる方は、実はちろさんのことを「友人」と見なしてなかったのではないでしょうか?
子どもがいる人は、集まるとどうしても子どもの話になります。
残念ですが、今では住む世界が違うし、興味の対象がまるで違うのです。
女性同士の会話では、お互いに共感できることが重要だから、そうだよねって言える相手でないと会話が続かない。
ちろさんたちも、子どもが欲しいとか、欲しくないとかいう話をしている間はまだ共通点がありました。
だから、もしその「友人」がもっと気を遣える方だったら、子どもができた後でも上手に共通点や接点を見つけて、必要ならば友人関係を続けようと努力されたでしょう。

たとえ傷ついても そこから逃げる術を 身につければいい

もしかしたらちろさんは、この先ずっと、子どもがいる人と話す時に傷つかないといけないように感じていらっしゃるのかもしれません。
でもね、それはそれでいいと思うんですよ。
傷ついて羨ましいと思うわけだし、接点が見つけられないのは事実なんだから。
接点が見つけられない人と知り合いになったとしても、友達になる必要はありません。
そういう私もどちらかといえば、今でも小学生の頃に友達に言ってしまったことを思い出して、胸がキュンキュンしてしまうタイプ。
女の人って、そういうことをずっと覚えている傾向がありますよね。
そして、人から言われたことよりも、むしろその言葉で友人を傷つけてしまったかもしれない、申し訳なかった、あの時もっと別のことを言ってあげればよかった……
などと思い出すことが多いんじゃないかしら?
そういう思い出は多分ずっと残るんだけど、少しでも残らないようにしようと思ったら、そこから逃げる術を身につけていけばいいのです。
年齢を重ねて経験が増えた分、ものの見方や考え方は“年の功”で変えられると私は思いますよ。

性格は変わらなくても 自分の心の中で いい台本を書く練習を

以前にもお話ししましたが、占いというのは、ものの見方を変える練習に最適です。
私は何か大きなイベントがあると、いつも朝の情報番組の星占いをチェックすることにしています。
たとえば、運勢最高の日に悪いことが起こっても、「占いなんか当たらないじゃん!」ではなく、「運勢が最高の日だったから、今日はこれくらいで済んだ」と考える。逆に運勢最悪の日に何も悪いことが起こらなかったら、「最低の日だったはずなのにラッキー!」と胸をなで下ろすのです。
何もないところから具体的に考え方を変えるのは案外難しい。
星占いは自分の心の中の台本を“いい方へ書き換える”とってもいい訓練になります。
それから、友人もいいけれど、できればご主人にも話を聞いてもらって。子どもがいなければ、これからは夫婦二人の生活になるかもしれません。
お互いに「今助けが欲しいんだな」みたいなことをわかり合うには、やっぱり言葉で言わなきゃわからない。
話を聞いてもらう時は「隣で聞いてくれてるだけでいいから!」と、最初に断っておくこともポイントです。
ご主人を良き友人に。

秀子の格言

「友人というのは環境が変わっても どこかに共通点がある人。 共通点があるからこそ友人でいられる」
田村 秀子 先生  京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都 第一赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療 をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田 村産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現 クリニックを開設。ご主人も産婦人科医の秀子先生。 仕事の悩みのことなど共通の話題も多いそう。「でも 男の人はやっぱり言わないとわからないですね。だか らこそダンナを巻き込んで何でも話せるようになるとラ ク」なのだとか。素敵な関係です!
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。