今回は、最新の検査から抗体の異常、治療の止め時など、さまざまな内容の質問が寄せられました。小田原先生はそれに1つひとつ明確かつ深く回答してくださり、とても中身の濃い質問会に。ご用意した質問以外にもチャットによ る個人的な問いかけも。それにもわかりやすくコメントしていただきました。
低刺激のクリニック。転院したほうがいい?
司会● P G T-A とはどんな検査なのでしょうか。
小田原先生●胚盤胞を5日目、6日目くらいまで培養し、その胎盤になる部分の細胞を採取。機械で染色体を分析して異数性を調べます。ある一定の染色体の数が多ければ、妊娠しない、あるいは妊娠しても流産になってしまうということがわかります。
4回連続して異常胚の診断が出たということですが、PGT- Aの正常率は女性の年齢によって変わってきます。35歳くらいだと2個に1個程度は正常、40歳くらいになると正常胚は 10個に1個程度。高齢になるとどうしても異常率が増えていってしまうんですね。
司会●高刺激のクリニックへ転院したほうがいいのか迷っていらっしゃるようですが。
小田原先生●もし今、ある程度卵子の数が採れる状況であれば高刺激に挑戦してもいいかもしれません。数が採れるかどうかは、採卵の時、生理3日目までに胞状卵胞の数を数えて判断します。卵胞数が1個、2個であれば薬を使って強い刺激をしても採卵数は増えません。5個、6個見えるのであれば刺激をして数を多く採ることにチャレンジされてもいいでしょう。
相談者さまはもう数が期待できない状態だから低刺激なのか、それとも低刺激しか選択肢のない施設なのかわかりませんが、納得がいかないようでしたら一度セカンドオピニオンを受けてみてはどうでしょうか。
排卵誘発法と精子の質について
司会●アンタゴニスト法とはどんな方法ですか。ほかに適したやり方はありますか?
小田原先生●体外受精の場合は卵巣刺激をして卵の数を増やしますよね。しかしそのままだと、エストロゲンが上がってLHサージが起こりやすくなり、採卵前に排卵してしまうことがあります。刺激周期であれば、以前はアゴニストという点鼻のお薬をずっと使って排卵を抑えていました
(ロング法やショート法)。今はその代わりに、最後のほうにアンタゴニストという排卵を抑えるお薬を使うことが主流になってきています。
しかし、なかにはお薬が効きすぎて卵胞の発育が止まるなど合わない方も。アンタゴニスト法でうまく採れなかったら次は違う方法を試してみてはいかがでしょうか。当院でしたら最初から黄体ホルモンを使っていくPPOS法をおすすめすると思います。この卵巣刺激法ならホルモンの変化が少ないので、うまくいく可能性があるでしょう。
司会●精子の質を上げる方法はありますか。
小田原先生●精子については、よほど状態が悪い場合を除いては受精卵の質にはかかわらないと思います。生活習慣を変えたからといって、すぐに質が良くなるものではありません。ただし、育毛剤を使うと急激に精子の状態が悪くなるので注意が必要です。
41歳。治療の止め時を知りたい
司会●このまま治療を続けていっても妊娠の可能性はあるのでしょうか。
小田原先生●止める前にまだできることはあると思います。うまく着床しない、妊娠しないということがあった場合、1つはPGT―Aの検査を受けてみることをおすすめします。化学流産は受精卵の染色体異常で起こることが多いので、PGT―A検査で受精卵の染色体を調べ、良い胚が得られるかどうかを確認されてみてはどうでしょうか。
もう1つは慢性子宮内膜炎の検査。子宮内膜に炎症があると、受精卵の着床に障害をきたすことがあります。
子宮鏡で子宮の中を見て、その時に炎症性の細胞(形質細胞)がないかどうか、乳酸菌のバランスは崩れていないかどうかなどを調べます。
さらに、適切な時期に移植ができているかをみるERA という検査もあります。着床時、子宮の内膜にはRNAと いう遺伝子が発現します。通常、胚盤胞であれば排卵後5 日目相当の時期に移植するわけですが、遺伝子を調べてみ るとずれていることがあります。ERA検査の結果を受け て、「1日早く戻す」「1日遅く戻す」など移植時期を調整 することで正常な継続妊娠につながることがあります。も しこれらの検査を受けていないようでしたらやってみる。それから止め時を考えても遅くはないと思います。