グレードの低い胚盤胞 を使った移植と人工授精、 無事出産できる確率が高いのは?

条件がベストとはいえない2つの方法のうち、 どちらを選べば妊娠・出産率が高まるのでしょうか。

俵IVFクリニックの俵史子先生に伺いました。

俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代より不妊 治療に携わり、2004年愛知県の竹内病院トヨタ不妊セン ター所長に就任。2007年、出身地の静岡に俵IVFクリニッ クを開業。 いよいよ3月、JR静岡駅前でリニューアル オープンするクリニック。妥協しない俵先生のこだわり で、イングリッシュガーデン風の小径や広々としたパウ ダールームなど、女性が快適に過ごせる空間に。

ドクターアドバイス

●回数とともに人工授精は妊娠率が低下
●新たな採卵で良い胚が得られる可能性も
●どちらの選択でも治療を急ぐこと
なつこさん(38歳)からの相談 Q.37歳の時に体外受精で妊娠しましたが、流産しました。その時に5日 目胚盤胞グレード3を1個、6日目胚盤胞グレード4CCを1個凍結。 しばらく経って再度卵管鏡検査を受けたところ、両方の卵管が通ってい たので人工授精をし、3回目で妊娠しましたが、また流産しました。金 銭的には次も人工授精でいきたいのですが、卵子の老化からくる染色体異常を考えると、昨年凍結した胚盤胞を戻したほうがいいのか悩んでい ます。どちらにしても次回トライする時は39歳になっています。無事 に生まれてくる可能性が少しでも高いのはどちらなのでしょうか?

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

血液検査、ヒューナーテスト、頸管粘液検査、精液検査、染色体検査、卵管鏡検査など。 37歳の時に体外受精で妊娠(流産)。

不妊の原因と なる病名

卵管閉塞

現在の 治療方針

排卵誘発剤を使って人工授精。

精子 データ

精子量2.5ml、精子濃度5800万/ml、運動率45.6%、 前進運動率26.4%、正常形態率9.2%、白血球数10万/ml

グレードを考えると

次回トライする時、凍結してある胚盤胞の移植と人工授精、どちらの方法が良いのか悩まれているようですが、俵先生はどう思われますか。
俵先生 まず凍結胚についてですが、胚盤胞が2個ありますが、グレードが少し気に なりますね。
グレード3だと当院の場合、 妊娠率はだいたい 15 ~ 20 %。
この程度なら 移植まで進めるのですが、4CCだと妊娠 率はかなり下がってひとケタくらいになっ てしまいます。
流産の可能性も高まるので、 グレード4だと移植を行わない施設もある ようです。
当院であれば、この胚盤胞を移植するのではなく、もう一度採卵をおすす めするケースが多いですね。

卵管と人工授精

人工授精についてはどうでしょうか。
俵先生 なつこさんは3回目の人工授精で 妊娠されたということですね。
年齢にもよ りますが、人工授精で妊娠する確率は5~10 %とあまり高くありません。
5回くらい まで挑戦してもいいと思いますが、妊娠率 が特に高いのは 5 回までで、それ以降の妊 娠率は徐々に下がってきます。
平均して妊 娠率が 10 %を切る治療を、 5 回目以降もずっ と続けていくというのも難しいところがあ りますね。
さらに、なつこさんは過去に卵管閉塞と いう診断を受けられたとのこと。
やはり卵 管の狭窄があったのかもしれません。
細い 部分にも管を通すので、2度目の卵管鏡検 査で疎通性が良くなって妊娠されたのかも しれませんが、もともと卵管の状態が悪い 方はまた塞がってしまう可能性も。
そのよ うなことから考えても、人工授精は積極的 におすすめできないような気がします。

出産が目標なら

そうなるとやはり、次は体外受精で、という選択になりますか。
俵先生 なつこさんが一番望まれているの は、「無事に赤ちゃんが生まれてくる」ということでしょう。
年齢が上がれば上がるほ ど妊娠がしにくくなるのに加え、染色体異 常など児の異常も増えてくるわけですから、 早く結果を出すことが大事。
結果を出すた めには少しでも確率の高い治療を選択する。
そうなると、やはり体外受精ということに なると思います。
凍結した胚盤胞を戻すかどうかは悩むと ころですが、もし移植をしようということ でしたら、治療をされている施設ではその グレードでどれくらいの妊娠率があるのか、 きちんと説明を受けられてみては?
施設 によって多少の違いがある場合もあります。
もし体力的にも経済的にも余力があるよ うなら、凍結してあるグレードの低い胚盤 胞はそのままにして、新たに採卵をすると いう選択肢もご提案したいと思います。
38 歳というご年齢ですべての方が胚盤胞 まで育つわけではありません。
なつこさん は2個も胚盤胞になったのですから、まだ 期待できるのではないでしょうか。
次はも う少しグレードの良い胚になる可能性も。 初期胚移植で結果が出ることもあります。

ステップダウンについて

可能性を考えたら、人工授精に戻ることは厳しいということですね。
俵先生 時々、体外受精をしている方から「治療をステップダウンしてもいいです か?」というご質問をいただくことがあり ます。
まだ年齢がお若くて、体外受精で受 精をされた方ならそのような選択肢もあっ て良いかと思いますが、年齢が高い方の場 合はどうでしょうか。
やはり限られた時間 のなかでは、少しでも確率の高い治療を行っ ていくことになるかと思います。

限られた時間を有効に

ほかにするべきことはありますか?
俵先生 体外受精、人工授精で、合わせて 2回流産をされています。
ご年齢から考え て卵子の老化による染色体異常という原因 も十分考えられますが、不育症という可能 性もゼロではないので、一度きちんと検査 を受けられてみてはどうでしょうか。
もし 不育症の疑いがあれば治療を受けて少しで も予防することができますし、異常がない ということであれば、不安要素を一つ取り 除いて不妊治療に集中することができます。
こちらももし検査を受けられるのなら、早 めに先生にご相談いただきたいですね。
とにかく、年齢、時間が大事ということでしょうか。
俵先生 どんな医師でも、なつこさんの問 いにはっきりお答えすることはできないか もしれません。
どちらの選択も可能性がまっ たくないわけではなく、どちらも妊娠する 確率がすごく高いとはいえない。
天秤にか けることは難しいのですが、一つ確実にい えるのは、治療を急がれたほうがいいとい うことです。
37 歳の時点で、卵巣の予備能を調べるAMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が 1 ・03 ng/ ml だったそうですね。
これが1年、 2年経ったら、半分、3分の1程度の値 になってしまうかもしれません。
それに 比例するように妊娠率も同様に下がって しまうということ。時間を有効に使って いただきたいですね。
前述したようにデータ的なことをきち んと医師から説明してもらい、そのうえ で、どこまで選択肢を広げられるのか、も しくは経済的なことや体力的なことをご 夫婦できちんと話し合って、後悔のない 治療を選択していただきたいと思います。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。