時には、グチを聞いてもらいましょう。

田村秀子先生の 心の 玉手箱 Vol.22

治療を始めて約半年 子どもがいる友人の ささいな言葉に敏感になり、 そんな自分に自己嫌悪。

気持ちを切り替える方法は? 秀子先生にお話を伺いました。

田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一 赤十字病院に勤務。1991年、自ら不妊治療をして双 子を出産したのを機に、義父の経営する田村産婦人科 医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。 繊細な感性を秘めた、おおらかなお人柄が魅力。A型・ みずがめ座。年末まで土日のお休みもなく、多忙にされて いたという先生。実は、不妊治療専門医としての活動の みならず、産婦人科医として、性犯罪対策、少子化対 策など、日々幅広い活動に奔走されているそう。
りこにゃんさん(アルバイト• 31歳)からの投稿 Q.治療を始めて半年程です。友人にそれとなく不妊で 悩んでいることを打ち明けました。友人には1人子供 がいますが、「私も2人目不妊かも」と、不妊につい て聞いてきます。でも2人目の子作りすらしていませ ん。だから「一緒に頑張ろうね!」と言われるのがしっ くりこないのです。他にも、私は女の子が欲しいのに、 「絶対、男の子を産む気がする」と言ってきたり。知 らず知らずのうちに病んでしまっているのか、些細な 事で過敏になる自分が嫌になります。気持ちを切り 替えるキッカケをいただけたら嬉しいです。

りこにゃんさんの投稿に 寄せられたコメントです!

猫娘さん(主婦・34 歳) 不妊治療の友達なんて作らない方がいいですよ。ネットの世 界の友達なら良いですが、リアルな友達は絶対にやめた方が いいです。どちらが先に妊娠しても、妊娠していない方が必 ず嫉妬しますし、それまでのいい関係も崩れると思います。 今からでも「不妊治療はちょっとお休みすることにしたー」 とでも言って、今後は不妊治療の話はしないようにした方が いいと思うのですが。
やりなげさん(主婦・?歳) 話すからですよ。お友達は興味本位で聞いているとしか思えま せん。こういうタイプの人は、主さんが不妊治療されているこ とを他の友人など周りに面白おかしく喋りがちですから、気を つけたほうがいいです。治療はしばらく休むことにしたなど 言って、何も話さないか、それができないなら会わない方がい いと思います。不妊のことは、余程オープンな性格でない限り は誰にも言わない方がストレス少ないです。実親や兄弟でも理 解されないことの方が多いですから。孤独に耐える覚悟も必 要、誰かに話したくなるのは我慢したほうがいいです。

治療から半年は 精神的につらい時期と 受け止めて

ひと言で不妊といっても、「 1 人 目不妊」と「 2 人目不妊」では、まっ たく立場が違いますよね。

お友だち から、同じように不妊で悩んでいる と言われても、「あなたは、すでに 一人いるじゃない。私とは違う」と、 どこかで感じているかもしれませ ん。

でも、それでいいんですよ。今 は、そういう捉え方をしてしまう時 期でもあるのです。

治療を始めて半年は、精神的にも 一番つらい時期。

ほとんどの方は、 病院に行けばなんとかなると期待し て来られます。

でも「今度こそ、今 度こそ」と思って、3カ月間頑張る けれど、期待通りにならない。

そん な現実に疲れて、「この先、さらに時間がかかるかもしれない」「もし かすると、子どもを授かれないのか もしれない」などと、ネガティブな 考えに陥りやすいのです。

でも、し ばらくすると、自分の気持ちがラク になるよう、自然にコントロールで きるようになります。

悩みを話せて 共感しあえる 仲間を見つけて

とはいえ、落ち込んでいる時に、傷 口に塩を塗られるようなことは、つ らいですよね。
気持ちを切り替える 方法は二つ。
一つ目は、お友だちと しばらく距離を置いてみること。
二 つ目は、お友だちと適度に付き合い ながら、りこにゃんさんの気持ちを 受け止めてくれる、仲間を見つける ことです。
できれば、同じ立場の女性がいいですね。
そして、「友だちの 些細な言葉をネガティブに捉えてし まう、自分が嫌なんだよね…」と、 素直にグチってみましょう。
女性にとって、心に溜まったものを 吐き出すことと、共感しあうことが、 何よりのストレス発散法だと思いま す。
ポイントは、「共感できる同じ立 場の女性」ということ。
前述のお友 だちは、「私も不妊かも〜」といって、 りこにゃゃんさんに少なからず共感 を求めているわけです。
でも、あな たが共感できないから、お近づきに なりにくいのでしょう。共感できな い関係はストレスになります。
一方、 同じ悩みを持つ人と共感しあうこと は、癒しにつながります。

現実を受け入れ ストレス発散 ゆったり構えましょう

りこにゃんさんは、こうして悩み をオープンにできるので、いろんな意味で、コミュニケーションがきち んと取れる方なのでしょう。

本当は、 こんなことで悩む自分ではないと分 かっているから、「知らず知らずの うちに病んでいる」という言葉に なったのでしょうね。

心配しなくて も大丈夫ですよ。

今、精神的につら い時期にいることを受け入れ、さら に共感してくれる仲間を見つけて、 上手にストレス発散してください。

そのうえで、目線を先に向けてみ ませんか?

例えば、2〜3年後、 おなかに赤ちゃんがいる、または、 赤ちゃんを抱っこしている自分の姿 を想像してみましょう。

「今すぐ妊 娠しなければいけない」と、焦らな いこと。

生理がくることを悲しむの ではなくて、「生理がきてくれて良 かった。ありがとう」と、卵巣を褒 めてあげてください。

そうして、不 妊治療に対してゆとりが出てくる と、「こんなことで悩んでもしょう がないな」と気づいて、お友だちを 広い心で受け止められるようになり ますよ。

秀子の格言

「共感しあえる仲間を見つけ、 時には、グチを聞いてもらいましょう。 すると、お友だちにも寛大になれます」

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。