胚盤胞まで育ちません3

「刺激?自然?   排卵誘発はどの方法がいいですか」

採卵では半数以上が空胞。

授精した卵も 胚盤胞まで育ちません

柏崎 祐士 先生 京都府立医科大学医学部卒業。2000 年まで日本 大学板橋病院で主に不妊治療に従事し、その間、 米国エール大学医学部産婦人科で研修。その後、 「かしわざき産婦人科」副院長に。日本生殖医学 会生殖医療専門医、日本産科婦人科学会認定医。 O型・おとめ座。「スターバックス」が大好きな柏 崎先生。今夏、ご家族で沖縄へ旅した時も、飛 行機搭乗前ギリギリに走って地元のスタバでご当 地プリぺイドカードをゲット! 来年は鳥取も!?  全国制覇を目指しているそうです。

ドクターアドバイス

●空胞なのは採卵のタイミングが遅い場合も
●卵巣機能の低下なら次回は弱めの刺激に
●自分からも提案して積極的に治療に参加を
hachiさん 28 歳 Q.原因不明の不妊で人工授精を3度行うも陰性で、体外受精へ切 り替えました。2度挑戦しましたが一度も胚盤胞まで育ちませ ん。最初はアンタゴニスト法で、20個卵胞を刺し11個が空胞、 9個をスプリット法で受精させるも最終的に残った2個は桑実胚 で停止。次はロング法で、卵子の質を上げようと漢方やサプリも 服用しましたが、10個のうち空胞6個で4個を採卵。卵胞は13個 見えましたが、子宮裏側にあった左卵巣の3個は採卵しませんで した。採卵した4個のうち2個は受精せず、新鮮胚移植した1個は 陰性。残りの1個を培養しましたが4分割で停止しました。卵子 は採れるので年齢的にも諦めるのは早いと言われましたが、心 身的にも経済的にも辛くどうしていいかわかりません。

治療データ

【検査・治療歴】

治療歴2年。AMH2.43。人工授精を3度行うも陰性。体外 受精を2度挑戦するも一度も胚盤胞まで育たず。最初はアン タゴニスト法で、20個卵胞を刺し11個が空胞、 9個をスプ リット法で受精させるも最終的に残った2個は桑実胚で停止。

【現在の治療方針】

ロング法で10個のうち空胞6個で4個を採卵。採卵した4 個のうち2個は受精せす、新鮮胚移植した1個は 陰性。残 りの1個を培養したが4分割で停止。

【精子データ】

精液量1.5ml、精子濃度99.3、運動率96%、奇形率問題なし

誘発法の選択について

アンタゴニスト法、ロング法という流れで採卵をさ れていますが、これについてはどう思われますか?
柏崎先生 ご年齢を考えれば、最もオーソドックス な方法を選択されていると思います。
当院の場合で も、だいたい同じような形で行っていたと思います ね。
同様なやり方を試してしっかり卵子が採れる方 もいますが、なかには思うように採れない方も。
hachiさんの場合、たくさん卵胞があって、刺し たのだけれどほとんど育っていなかった。
実際、そ のようなことも少なくありません。

年齢とAMH

なぜ空胞が多くなってしまうのでしょうか。
柏崎先生 一つ考えられるのが、卵胞の数そのもの が少ないということ。
卵巣に残っている卵胞の数を 推測できるといわれているAMH(抗ミュラー管ホ ルモン)の値が2・ 43 。
一般的にみるとセーフティ な値なのですが、 20 代だとすると少し低めでしょう か。
ですから、少し卵巣機能が下がっていて、卵自 体が少なくなっているのかもしれません。
お薬で刺激するとホルモンが増えて卵胞の数も増 えるのだけれど、閉鎖卵胞、要するに空っぽの卵胞 ばかりが増えてしまったということですね。

採卵もタイミングが大事

ほかに何か原因は考えられますか?
柏崎先生 もう一つは、採卵のタイミングが遅かった のではないかということも考えられます。
空胞があ るということは、卵胞が過熟してすでに排卵しかかっ た状態で採卵している可能性もあります。
その時のhachiさんのホルモン値がわからないので何とも いえませんが、当院の手順だと、採卵直前、採卵直後、 それからHCGやアンタゴニストの切り替え時もE2 やP4、LHなどホルモンの値を測ります。
そこでしっ かり見極められないと、アンタゴニスト法でも採卵 前にLHサージが来て排卵してしまい、空胞になっ てしまうことも。
担当医の先生がきちんと診ていないということで はなく、診ていても予測が外れてタイミングがずれ てしまう時もあります。
もし繰り返すということな ら、復習の意味で、ホルモン値の詳細などを先生に 聞いてみてはいかがでしょうか。
当院でも、そのよ うな時は「今回はちょっとタイミングが遅かったようです」と患者さんに正直にお話ししています。
次 回に生かせる場合もありますから、一度確認されて もいいと思いますね。

マイルドな刺激法の選択

では、次回採卵に臨むとしたら、排卵誘発法につい てはどのようなやり方が望ましいと思われますか。
柏崎先生 僕はどちらかというと、たくさん刺激をし たほうがいいという考えを持っているのですが、ha chiさんのこの2回の結果を踏まえたら、次は刺激 を弱くすることをご提案しますね。
刺激を強めるとど うしても卵巣や卵をいじめることになってしまいます。
卵巣予備能力がしっかりあって、卵もそれなりに元 気だったらいいのですが、おそらくこの方は実際のご 年齢より卵巣年齢が老化しているので、いじめると弱っ てしまう。
受精卵がなかなか分割しないというのも、 強い刺激でいじめすぎて卵子のクォリティが下がって しまったのかもしれません。
特に、ロング法は合って いないのではないかと思います。
しきり直すという意味でも、次はクロミッドⓇ+注射のようなマイルドな刺激法に変えて採卵に臨んで みてはいかがでしょうか。
採れる卵子の数は前の2 回と比べて少ないと思いますが、少数精鋭で良い卵 子が採れる可能性があります。
年齢的にまだお若いので、お薬を使わずに自然な 形で採卵するという選択もあると思いますが、自然 周期だと排卵するタイミングをはかるのが難しく、 採卵しようとしたらすでに排卵していた、というこ ともよくあります。
妊娠のチャンスを増やすのなら、 できれば弱くても刺激を加える形でトライされると いいのではないかと思いますね。

セカンドオピニオンを受けても良い

卵子が確保できた場合、胚盤胞まで育ててから移植 したほうがいいのでしょうか。
柏崎先生 やはり胚盤胞で移植したほうが妊娠率が 高いので、最終的にはそうしたいところですね。
何 回かやってダメだったら、当院でも3日目の胚を戻 すことがありますが、hachiさんは最初の採卵 の時に桑実胚まで分割しているので、刺激する方法を変えれば胚盤胞までいく可能性があると思います。
これまでの治療で卵子は採れていますし、一度流産、 つまり妊娠された経験があるということ。
ご年齢を考 えても、妊娠される確率は高いと思いますよ。
先生が おっしゃるように、あきらめるのはまだ早いでしょう。
これから治療を続けるにあたって、ほかにアドバイ スはありますか。
柏崎先生 不妊治療は、ただ医師にいわれるままに受 け身で臨むのではなく、ご自身も積極的に治療に参加 していただきたいと思います。
もし納得のいかないこ とがあったら、医師に聞いてみる。
先生のやり方を頭 から否定するということではなく、確認ということな ら問題ないですよね。
それで、もし「おかしいな」と思っ たら、これまでのデータをもらって、違う施設でセカ ンドオピニオンを受けてみるのもいいと思います。
hachiさんも疑問を持っていらっしゃるよう なら、次回は自ら、低刺激のような前回と異なるや り方を先生に提案されてみてはどうでしょうか。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。