ステップアップは必要?1

「刺激?自然?   排卵誘発はどの方法がいいですか」

AMHの値が 1 ・ 21 と低め なので心配です。

早目の ステップアップは必要ですか?

石川 弘伸 先生 1991年滋賀医科大学卒業、同大学院修了。泉大 津市立病院副医長、水口市民病院産婦人科医長、 野洲病院産婦人科部長を経て、2003年より醍醐 渡辺クリニック副院長。大学院では生殖医学で着 床の分野の研究に携わり、生殖医療の道を志す。 大学で2年先輩である同クリニック院長の渡辺浩 彦先生との縁で同クリニックへ。A型・射手座。 2013年に電子カルテを導入「。最近ようやく慣れて、 診療のスピードが上がったかな」と、ホッと胸を なで下ろす先生。「診療効率が上がった分、次は 患者さんのサービスに還元していきたいですね」

ドクターアドバイス

●刺激周期での排卵誘発を検討しては
●高プロラクチンの治療は妊娠初期まで
●時に気分転換しながら、気楽に構えて
ななちさん 34 歳 Q.結婚して4年目、1年前に不妊専門クリニックを受診してひと 通り検査をしたところ、8割自然妊娠が可能だと説明を受けま した。その後、人工授精にステップアップし、6回実施。次回か らは体外受精を考えたいと覚悟を決めていますが、AHM値が 1.21で、卵の数が少なめと指摘されています。採卵をするとした ら、刺激法と自然周期、どちらが私の体に合っているのでしょう か。また、6回目の人工授精の際、プロラクチンが17.2と高値を 示し、カバサール Ⓡを6週分処方されました。一度の検査結果で 毎週服用して体に問題はないですか? 妊娠希望なので、いつ まで安全に服用が可能なのかをお伺いしたいと思います。

治療データ

【検査・治療歴】

治療歴1年。
8割自然妊娠可能との診断だが、タイミング 法での膣内射精がうまくいかず、自己注入法、AIH5回。 AMH:1.21 FSH:8.1 E2<20 LH3.4 プロラクチン 9.8

【現在の治療方針】

AIH6回目 3日後にプレグニール5,000筋注、4日後に ルトラールⓇを9日間服用。
プロラクチンが17.2と高いため、 毎週1回カバサールⓇ0.25を6週間服用

【精子データ】

フーナーテスト良好
AIH4回目精子運動率74.1→単層法にて83.3%
AIH5回目精子運動率71.6→2層法にて98.4%
AIH6回目精子運動率48.4→2層法にて93.7%

誘発法の選択基準

ななちさんには、どのような排卵誘発法がよいの でしょうか。
石川先生 この方は、AMHの値が 1 ・ 14 と少し低い ことをご心配されて、自然周期や低刺激を考えておら れるのでしょうか。
年齢的には、 34 歳と若いですし、 AMHは低くても、FSHの基礎値は 8.1 とまずまずの 値ですので、刺激周期も十分検討に値すると思います。
排卵誘発法を選択する時のポイントはありますか。
石川先生 排卵誘発法は大きく「低刺激」と「刺激周期」 に分けられます。
簡単に言えば、低刺激は、少ない刺 激で卵を2〜3個程度採ることを意図した方法。
刺激 周期は、強めの刺激でたくさん採卵することを意図し た方法です。
どの方法を選択するかについては、次の 3つが目安になります。
一つ目は、AMHやFSHの値(卵巣予備能)です。
一般的には、卵巣予備能が低下してくると、刺激を しても反応が起こりにくくなります。
例えば、 40 代 前後になると、そのような傾向が顕著になるため、 消極的な理由から自然周期や低刺激を選ぶことが多 くなります。
ただし、当院で、AMHの値が1未満 とかなり低いにもかかわらず妊娠されたケース 1 00 例程度を調べたところ、意外にも半数以上の方が 刺激周期による治療で妊娠されていることがわかり ました。
卵巣予備能が低下した方でも、刺激周期に 対して卵巣が反応し、卵がたくさん採れれば、妊娠 のチャンスは増えると思います。
二つ目は、以前の治療で排卵誘発剤に対して卵巣が どのように反応していたかを参考にします。
体外受精 に至るまでには、一般不妊治療、人工授精を何回かさ れている方が多くいらっしゃいます。
一般不妊治療の 時の排卵誘発法で、卵が何個できたのかという反応を 踏まえて、どのような排卵誘発を選ぶかを検討します。
三つ目は、月経中の超音波検査です。
月経中の卵巣 を診ると、その周期に発育しそうな小卵胞の数が確認 でき、ある程度の反応がわかります。
極端な例では、 小卵胞が全く見えない方もあり、このような方には刺 激周期は効果が出にくいと思われます。

人工授精もタイミングを意識

ななちさんについては、いかがでしょうか。
石川先生 具体的な採卵数がわかりませんが、卵の発育過程に何らかの障害があるといった記載はありませ んので、卵巣の反応性は悪くなさそうです。
やはり刺 激周期でしっかり刺激すれば、きちんと反応して、5 〜6個は卵が採れそうな気がします。
ただ、この方の場合、人工授精を6回行っていらっ しゃいますね。
本音をいうと、この人工授精のタイミ ングが合っていないような気がします。
排卵と人工授精の厳密なタイミング合わせをすることによって、人工授精で妊娠できる可能性は十分あると思います。

刺激周期の考え方

体外受精を検討されているそうです。
石川先生 このまま体外受精に進まれるのであれば、 刺激周期を試みる価値は十分にあります。
体外受精 は、お金と労力がかかる大変な治療です。
採卵には 多少なりとも危険も伴いますので、一度にたくさん の卵を育てようという考え方が一般的です。
自然周 期や低刺激では1回に2〜3個ですが、刺激周期は、 1回に 10 個も採れることもあるので、そのほうが効率はいいわけです。
しかし最近は、高齢の方が多くなり、刺激をしても 卵が育ちにくいことから、やむなく自然周期や低刺激 で育てることも多くなりました。
できれば、しっかり 刺激をして、しっかり卵を育てて、いい卵を選んで妊 娠につなげていきたいのです。
卵には、当たりはずれがあります。
よく言うので すが、 20 代前半で2つに1つ。毎月1個の排卵であ れば、妊娠のチャンスは2カ月に1度になります。
20 代後半〜 30 前後で3つに1つ。 30 代後半から 40 歳 では4〜5つに1つとどんどん減り、 40 代以降はさ らに低くなります。
わかりやすく例えると、くじ引 きと似ています。
妊娠するためには、回数を多く引 くか、それとも、たくさん引くか。
つまり、一度に たくさん引こうというのが刺激周期の考え方です。

高プロラクチン血症

ななちさんは、高プロラクチン血症の治療もされて います。薬の服用は大丈夫でしょうか。
石川先生 プロラクチンの値が高いと、排卵しにく い、卵が育ちにくいなど、卵巣機能にブレーキがかかります。
数値が高ければ下げるというのが大原則 になります。
ただし、プロラクチンは、ちょっとしたストレ スでも高くなります。
今まで低かった方が突然高 くなることもありますので、年に3〜4回検査 されることをおすすめします。
この方も、治療を 続ける段階でストレスも出てきて、高くなってし まったのかもしれません。
プロラクチンを下げる 薬は、体外受精、人工授精の治療と並行し、この まま妊娠初期まで服用しても問題ありません。
この方は、8割妊娠可能とありますが、その通 りだと思います。
先ほども申し上げた通り、厳密 なタイミング合わせをすれば、人工授精での可能 性も十分にあります。
強いていえば、ご夫婦とも にストレスを感じていらっしゃるようなので、そ こが少し気がかりです。
まだ若いので、不妊治療 だけに根をつめすぎず、気持ちにゆとりを持たれ ることも大切です。

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