ステップアップは必要2

刺激?自然?   排卵誘発はどの方法がいいですか」

AMHの値が 1 ・ 21 と低め なので心配です。

早目の ステップアップは必要ですか?

 
古井 憲司 先生 1986年日本医科大学卒業。1年間の研修医を経て、 1987年名古屋大学産婦人科学教室入局。名古屋 大学産婦人科では文部教官を務める。さらにその 後、 大垣市民病院産婦人科医長を経て、1998年ク リニックママを開院。A型・やぎ座。‘04年11月 には不妊体験者を支援する団体、NPO法人Fine からの講演依頼も。「2015年は、一般の方に正し い不妊の知識を伝えるような活動にも力を注いで いきたいと思っています」と先生。

ドクターアドバイス

●卵は数が少なくても質が良ければ妊娠は可能
●低用量HMGによる排卵誘発法もある
●カバサールⓇ内服後のプロラクチン値のフォローアップも大切
ななちさん 34 歳 Q.結婚して4年目、1年前に不妊専門クリニックを受診してひと 通り検査をしたところ、8割自然妊娠が可能だと説明を受けま した。その後、人工授精にステップアップし、6回実施。次回か らは体外受精を考えたいと覚悟を決めていますが、AHM値が 1.21で、卵の数が少なめと指摘されています。採卵をするとした ら、刺激法と自然周期、どちらが私の体に合っているのでしょう か。また、6回目の人工授精の際、プロラクチンが17.2と高値を 示し、カバサール Ⓡを6週分処方されました。一度の検査結果で 毎週服用して体に問題はないですか? 妊娠希望なので、いつ まで安全に服用が可能なのかをお伺いしたいと思います。

治療データ

【検査・治療歴】

治療歴1年。
8割自然妊娠可能との診断だが、タイミング 法での膣内射精がうまくいかず、自己注入法、AIH5回。 AMH:1.21 FSH:8.1 E2<20 LH3.4 プロラクチン 9.8

【現在の治療方針】

AIH6回目 3日後にプレグニール5,000筋注、4日後に ルトラールⓇを9日間服用。
プロラクチンが17.2と高いため、 毎週1回カバサールⓇ0.25を6週間服用

【精子データ】

フーナーテスト良好
AIH4回目精子運動率74.1→単層法にて83.3%
AIH5回目精子運動率71.6→2層法にて98.4%
AIH6回目精子運動率48.4→2層法にて93.7%

体外受精へのステップアップの時期

AIH6回目とのことですが、ステップアップの タイミングとしてはいかがなのでしょうか?
古井先生 当院ではAIHを3回行って妊娠できな い時点で、IVFにステップアップするか患者様に 確認しています。
その時にまだAIHを続けたいと いうことであれば、その後さらに2回行って、トータル5回行った時点で再度、ステップアップの意思 を確認します。
その際には年齢にもよりますが、高 齢であればステップアップを強く勧めますし、まだ20 代や 30 代前半で若ければ、本人の意思を尊重して AIHを続けることもあります。
ただ、当院の統計でも全国的な統計でも同様です が、AIHを5回以上続けても妊娠率は高くないと いう結果は出ていますので、そのこともきちんとお 伝えし、ご本人も納得の上でAIHを5回以上続け るということはあります。

AMHの数値だけで焦らない

ななちさんは、卵が少なめとの指摘も受けている ようです。
古井先生 そうですね。 34 歳でAMH 1 ・ 21 は低い ですね。
34 歳ですと、3~4 ng / ml が平均値です。 FSHが 10 以下なので卵巣の老化という点では、ま だ大丈夫かと思いますが、AMHが低くてFSHが 高いという場合は要注意ですね。
ただ、AMHが若 干低かったとしても、実際、IVFを行ってみると、 卵の数が少なくても、卵の質が良ければ妊娠する ケースはいくらでもあります。
ななちさんは、FSHは正常範囲ですので、AMH だけを見て治療を急がなくてはいけないという危機感 を持ちすぎるのもどうかと思います。
とはいえ、ずっ と自然周期でタイミング指導を受けられてきて、排卵 日にタイミングが合っていれば妊娠はできるはずです し、検査データでは精子の運動率も2層法で 90 %を超 えているとのことですので精子にも特に問題はないと 思います。
その上でAIHを6回施行しても妊娠でき ないとなると、そろそろIVFへのステップアップを 考えてもいい時期かもしれませんね。

刺激方法にも、バリエーションがある

ななちさんのこれまでの治療歴や卵巣年齢を考 慮した場合、どのような排卵誘発が合うと思われ ますか?
古井先生 AIHの開始時にクロミフェンが合わな かったということですが、確かにクロミフェンを服 用すると眩暈や頭痛がするという方もいます。
そう いう方には自然周期でのAIHを行うのはやむをえ ないかとは思いますが、ほかにもセロフェンなどの 薬もありますので、クロミッドⓇ以外の排卵誘発剤 を使っても良いかもしれません。
また、AIH6回目の際に、月経 10 日目にフェリ ングHMGを注射したとのことですが、その時点で 卵胞がある程度育っているのであれば、あまりHM G製剤を打つ必要はないかと思います。
排卵誘発剤 のHMG製剤を連日注射してAIHを行うと多胎の リスクが高まりますので、最近はそのような治療を 行う施設は少ないと思います。
当院でも、HMG製 剤で排卵誘発を行ってAIHを施行することは一切 ありません。
ただし、HMG製剤の低用量投与法でAIHを トライすることは可能です。
HMG製剤は通常 150単位を連日注射するというのが昔からのス タンダードな投与法ですが、初回投与量を 50 単位にして1週間、その次の1週間は 75 単位、次の 1 週間は100単位という具合に、低用量のHMG 製剤、特にゴナールエフのようなLHが入ってい ないリコンビナントFSH製剤を連日注射すると いう方法があります。
最近では自己注射のできる ペン型のゴナールエフのような製剤もありますか ら、病院に通うことなく、 1 週間単位で自宅で自 己注射を行うこともできます。
クロミッドⓇで妊娠できない場合は、このような HMG製剤を低用量で連日注射すると、卵胞が1個 か2個で収まるケースがほとんどですので、品胎以 上の多胎を避けることができ、その場合はAIHも 可能です。
ただし2個以下の場合に限ります。
卵胞 が5~6個育ってしまう場合は、やはりAIHでは なくIVFの適応ということになりますね。

過激なプロラクチン抑制は…

高プロラクチン血症の指摘を受け、薬の内服にも 不安があるようですが。
古井先生 プロラクチンが高い場合、通常、薬物治 療がメインとなります。
ななちさんが現在処方され ているカバサールⓇは週1回の投与で効果を発揮するもので、現在市販されている薬では一番良いと思 います。
また、ずっと服用することで体や、妊娠に 影響があるかということについても特に心配はない と思われます。
ただ、しばらく内服を続けたところで、実際にプロ ラクチンがどれくらいに下がっているか、下がり過ぎ ていないかということを調べることは大切です。
プロ ラクチン値は高い場合のみ注視されがちですが、プロ ラクチンは卵胞発育や着床にも必要なホルモンであり、 過剰なプロラクチン抑制は受精率や胚発育率を低下さ せるという報告もあります。
ですので、カバサールⓇ内 服後も定期的なプロラクチン値測定と、適切な内服量 のコントロールを行ってください。
また、これは補足的なことですが、ななちさん も使われた排卵 1 日前がわかるキットは、皆さん よく使っているようですが、より正確に排卵日を 確定したいのであれば排卵日頃に、クリニックに て超音波検査で卵胞の計測をしてもらって、おお よその排卵日を予測してもらった上で使われるこ とをお勧めします。

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