第二子を希望して通院。 男性不妊なのに、 なぜHMG注射をするの?
ささ山 高宏 先生 産業医科大学医学部医学科卒業。産業医科大学病院、和歌山労災病 院、九州労災病院、セントマザー産婦人科医院の勤務を経て、1997年4 月、幸の鳥レディスクリニックを開業。患者さん一人ひとりを大事にする姿勢 で生殖医療に携わる。A型・おひつじ座。最近、タイヤの太いオフロードバイ クを手に入れたという先生。タイヤ幅は10cmほどで、悪路を走ってもパンク しない丈夫な自転車だそう。車に積んで、アップダウンのある山の中や、川べ りの砂利の上を走るのが楽しみだそうです。
さとんさん(31歳)からの相談 Q.第二子を希望し、第一子の時と同じ不妊外来に通い始めました。3年前に、卵管造影検査、血液検査、精液検査の検査と並行し、タイミング法を実施。精液検査以外は 異常なく、重度の男性不妊(乏精子症)でした。しかし、タイミング法から顕微授精へ ステップアップしようとしていたところで、奇跡的に2回目で第一子を妊娠しました。 この度、第一子が1歳を過ぎたので、またタイミング法からと思って通院を始めたの ですが、内診の結果、卵胞が小さいということでHMG注射を打ちました。生理も順 調(30日周期)で私には異常はなく、男性不妊でも第一子を自然妊娠できたのに、 なぜ注射をしたのか疑問です。注射後は生理痛のような感じで体調も悪いです。イ ンターネットで調べると、自力で排卵する力が落ちるかもという記述もあり、心配で す。この処置で妥当なのでしょうか?
子宮内膜と排卵誘発
生理周期も順調なさとんさんですが、このような場合でも排卵誘発剤を投与するのでしょうか?
ささ山先生 まず、さとんさんは月経周期が 30日周期ということですが、月経の 16 日頃に自然排卵はおきているのでしょうか?
たとえば月経周期が 30 日なのに、排卵日が20 日前後というように、月経周期が順調でも黄体期が短ければ、排卵誘発剤を使用することがあります。
排卵誘発剤を使って、よい卵胞を作り、しっかりと排卵させることで、着床に必要な黄体ホルモンの分泌を促すことができます。
ただ、通常はクロミッド ®などの内服薬から開始します。
そして、子宮内膜が薄くて着床にしくいと判断した場合、HMGを使用します。
さとんさんは、今まで自然周期でタイミングの治療をし、今回一度だけHMGの注射をしてみたとのことですが、通常より卵胞の発育が遅い、あるいは子宮内膜が薄いとの理由で主治医の先生は注射をされたのだと思います。
1回の注射で効果がでることもありますからね。
自然排卵力との関係
HMG注射をすることで、排卵する力が落ちるということはないですか?また、生理痛のように体調が悪くなることがありますか?
ささ山先生 HMG注射は、卵巣を直接刺激することによって卵胞を育てる効果が期待できる排卵誘発剤のひとつです。
排卵誘発剤を使用することで、自然排卵力が落ちるというようなことはありえませんよ。
心配はいりませんね。
排卵誘発剤を使用すると、子宮内膜を厚くす る黄体ホルモンの分泌を促すので、お腹の痛みや張りなど月経痛のような症状がでることがあります。
排卵誘発剤は先ほども述べたように、副作用の少ないクロミッド ® など他の種類もありますから、使用方法や副作用などにについて、不安なことがあれば遠慮することなく、主治医にしっかりと相談してみてください。
ストレスと精液検査結果
ささ第二子を望んでいるさとんさんに、今後の治療のアドバイスをいただけますか。
ささ山先生 さとんさんは、精液検査で顕微授精をすすめられるほど悪かったようですが、自然妊娠でひとり目を妊娠されていますね。
精液検査をもう一度受けてみてください。
男性にとって、精液検査はとてもナーバスになりやすく、仕事が忙しく、ストレスがかかっていたりして、1回の検査だけではご主人の実力が発揮できなかったという可能性もあります。
精液検査が悪くて再検した時、別の方の精液かと思うほど良好所見のことも時々あります。
ただ再度精液検査をしても、1回目と同じ所見であれば、顕微授精の適応と思います。
お子さんがひとりいらっしゃることですし、気持ちの余裕をもって主治医の先生とお話しをしながら、不妊治療をがんばってくださいね。