現在、長男の授乳中。 授乳をしながらの 人工授精は可能ですか?
操 良 先生 岐阜大学医学部卒業。岐阜大学附属病院で8年間、不妊専門外来を担 当し、1992年には岐阜県下初の体外受精に成功。女性ホルモンに関す る研究成果が認められ、平成9年度に岐阜県医学研究奨励賞を、平成 11年度に日本内分泌学会で研究奨励賞を受賞。現在、操レディスホスピ タル副院長。医学博士。日本生殖医学会認定 生殖医療専門医。プライ ベートでは、映画のDVDを700枚、洋楽のLPを300枚、小説も3000 冊ほど収集と、一度好きになるととことんハマるという先生。取材時は、5月 の新館オープンに向けてご多忙でしたが、「推理小説を書きたい」という夢 もあるそうです。
カオルさん(36歳)からの相談 Q.33歳から1年間のタイミング療法を経て、人工授精2回目で妊娠。現在、1歳3カ 月の男の子がいて、まだ1日3回の授乳をしています。そろそろ2人目を、と考えて いますが、授乳をしながら人工授精を受けることは可能でしょうか? 1人目は高プロラクチン血症のため、カバサール®を服用していました。生理は1月 に再開しましたが不安定で、次の生理はまだ来ていません。自然卒乳を希望してい るので、授乳と不妊治療を併行してできたらベストなのですが……。 来月には37歳になってしまうので、少しでも早く治療をしたほうがいいのかな、と 悩んでいます。
抗プロラクチン血症だと
カオルさんは 20 代後半から生理不順があり、前回の治療では、高プロラクチン血症と診断されてカバサール ® を服用していたということです。高プロラクチン血症だと妊娠に悪影響があるのでしょうか。
操先生 高プロラクチン血症であると、ゴナドトロピン放出ホルモンの分泌が抑制されるうえ、LHサージ誘導に対するエストロゲンのポジティブフィードバックも抑制されてしまいます。
そうすると卵胞の発育が起こりにくく、卵胞が発育したとしても排卵が起きにくい状態になってしまうんですね。
また、排卵後の黄体機能不全の原因となり、着床もしづらい環境となってしまいます。
分娩を機に、プロラクチンのレベルが正常値 に戻ったり、不順だった生理が順調になる方もいますが、カオルさんはそのケースには当てはまらないようですね。
出産後、通常は1~2カ月で生理が元に戻っていくことがほとんどですが、カオルさんは現在、2カ月ほど無月経の状態が続いています。
やはり、まだプロラクチンが高い状態が続いていることが考えられますか。
操先生 前回既往があり、今回も同じような状況であるということでしたら、プロラクチンの値が高くて無月経になっているということが考えられますね。
そういうことであれば、授乳している限り、なかなか排卵は起きません。
もし妊娠を望まれるのなら、まずはきちんと排卵をしなければいけないし、そうであれば授乳との両立は非常に難しいと思います。
断乳は必要??
では、断乳をしなければいけないということになりますね。
操先生 授乳か、第2子の妊娠か、ご本人がどちらを優先するかだと思います。
まずは、実際にプロラクチンが高い状態なのかどうか、検査をされてみてはどうでしょうか。
また、第1子の妊娠前とはホルモン状態が 異なってくることも。
年齢も 36 歳ということで、卵巣の機能や卵子の質も低下してくる時期なので、プロラクチン以外の基礎的なホルモン検査も必要になってくるかと思います。
他のホルモンの値に異常があったら、それが排卵を障害している原因になっている可能性もあります。
たとえば、妊娠末期には甲状腺ホルモンの値が下がる人が結構いるのですが、それが元に戻っているかということもありますし……。
まずは検査をして、その結果をみてから今 後の方針を決めてもいいかもしれません。
もし高プロラクチン血症ということが確かであれば?
操先生 妊娠を望まれるなら、やはり断乳が必要になってくると思います。
断乳に関して、適切な時期がいつとは一概にいえません。
ご本人の意思やお子さんの状態によって異なってくると思いますので、悩んだり迷われたりするようでしたら、助産師さんに相談して、お子さんが母乳を卒業する時期を決めていただくといいのではないでしょうか。