仕事によるストレスは 卵巣機能低下を招く? 勤務形態を変えるべき?
内田 昭弘 先生 島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員として、 1987年、島根県での体外受精による初めての赤ちゃん誕生に携わる。 1997年に内田クリニック開業。1階は奥様が副院長を務める内科・胃腸 科、2階が婦人科。納得のいく装備になるまで約2年をかけた同クリニック の無停電計画も、この春のソーラー設置でいよいよ完了。停電時、自家発 電によるバッテリーへの自動切り替え機能が、培養システムの24時間稼 働を実現しました。
シーマンさん(31歳)からの相談 Q.看護師をしています。夜勤のある三交代で、認定看護師の資格を持っているため、休 日も講演準備などをしながら勤めています。29歳で結婚し、すぐに自然妊娠しました が、夜勤の最中に8週目で稽留流産。それからなかなか妊娠せず、半年前に不妊治療 デビューしました。今は精査・タイミング(ルトラールⓇ、フォリルモンⓇ注射、温経湯Ⓡを使 用)を行っています。今のところ原因は、頸管粘液の準備ができていないまま排卵してし まうことのようで、医師からはこの年齢で早期排卵は早いと言われています。 長年の夜勤で体内の加齢スピードが速まっているのか、認定看護師という立場からスト レスで自律神経も乱れやすく、ホルモンバランスが崩れているのかな、と考えています。 日中だけの仕事に変えて、心身のストレスを軽減してみることが必要でしょうか。ストレ スは卵巣機能の低下を招きますか?
ストレスと不妊
シーマンさんは、仕事による心身のストレスと不妊の関連性を心配されています。
内田先生 看護職の人たちは確かに不規則な生活をしていますが、それでも元気な人はたくさんいます。
ですから、一因にはなるかもしれませんが、ベースには、もともと卵巣に何らかの問題点があり、年齢とともに卵巣機能が落ちてきているのかもしれません。
勤務形態や環境を変えることでストレスが 軽減するのであれば、後悔のないようにされることだと思います。
ただ、ここで問題なのは、変われないことがストレスになったり、変わることによって別のストレスが生まれたりすることです。
僕は、一つの生活パターンを持っている人に何かを変えなさいというのは、逆にストレスを生んでしまうのではないかと思っています。
職場でストレスがあるとしても仕事は生活のベースですから、それ以外のところで気になることは自分で改善し、感じているストレスを緩和していきましょう、と伝えるようにしています。
人工授精と卵巣機能
来周期から人工授精に進むそうです。
内田先生 治療を始めて1年経っていること、ヒューナーテストの結果が悪かったため人工授精に進むという治療方針は適していると思います。
しかも精液検査は問題ないですから。
ただ、この方が気にしているのは、卵巣機能低下ですよね。
早くに排卵する周期の場合は卵巣の働きが悪くなっていることが考えられるので、まだAMHの数値をみていないのが気になります。
AMHと治療計画
AMHの数値は体外受精の治療に重要?
内田先生 僕は、重要視しています。数年前に比べるとAMH検査はかなり一般的になり、今では初診で調べない方はいないくらいです。
基本は1年に1回の検査ですが、近年は、2回目、3回目の間隔を狭めている傾向にあります。
僕は、前回の検査から半年経っていたら測ります。
特に体外受精の治療周期には、AMHの数値と年齢をみてプランを考えていくことが必要だと思っています。
人工授精の回数や、体外受精に進む時期は、どのように判断したらいいでしょうか。
内田先生 人工授精は、一般的には3回が目安です。
その後、回数を重ねるか体外受精に進むかは、AMHの数値が関与してくると思います。
もしAMHの値が1・ 50ng/ mL を下回っているようであれば、早めに次のステップをすすめます。
年齢が 35 歳以上の人も同じようにすすめてもいいかもしれません。
シーマンさんは年齢からも、まずは人工授 精からステップアップしていくのがいいと思います。
排卵誘発剤と組み合わせれば、可能性は高くなると思いますよ。
当院で人工授精で妊娠した患者さんを治療回数でみた場合、3回までで 70 %、6回までで 95 %です。
人工授精は今まで精子が入らなかったところへ入れるわけで、自然妊娠と同じ条件ですから、シーマンさんも治療が適していれば、妊娠への道は近いと思いますよ。