卵胞の成長に ばらつきがあり 採卵まで至りません
堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療センター不 妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ARTクリニック院長に就任。 国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生殖補助医療に従事。成育医 療センターでは難治性不妊治療・加齢と不妊についての研究に取り組む。 B型・みずがめ座。先日、スタッフの女性の結婚式に参列。新郎新婦のこれ までの思い出エピソードや幸せそうな姿に感動して、思わず涙が。将来、娘 さんが結婚する時にはきっと号泣してしまうかも!?
けろりんさん(41歳)からの相談 Q.体外受精を始めて2年ほどになります。左の卵巣がチョコレート嚢腫(4㎝程度)という こともあり、右の卵巣を基準にして治療を進めてきました。現在までに採卵2回、移植 1回を行いましたが、着床したことはありません。今まで、生理3日目からクロミッド®と HCG注射で採卵のタイミングをみてきました。右は4個くらい、左は3個くらいと毎月 卵胞は確認できますが、いつも1個目の卵胞が9日目で19~20㎜くらいに成長。大きさにばらつきがあるとのことで、採卵に至りません。他の治療法を検討したほうがいいの でしょうか?
残存卵胞と生理周期
卵胞の成長にばらつきがあるそうです。
堀川先生 いつも1個だけが成長しすぎてしまうということですね。
卵巣の予備能が低下して卵胞の数が減ってくると、生理周期が徐々に短くなってきます。
そうなると、1つの卵胞が選ばれるまでの期間も早くなり、9〜 10 日目くらいで 20 ㎜前後の大きさにまで成長してしまうことも。
ご年齢が 41 歳、嚢腫もお持ちということですから、もしかしたらそのような原因で卵巣の機能が低下し、卵胞の成長にばらつきが出ているのかもしれません。
卵胞の大きさと採卵
このまま採卵に適した状況を待つしかないのでしょうか。
堀川先生 逆に成長しすぎてご心配かもしれませんが、大きさだけで卵子の質を判断することはできません。
もしこの状態が続き、そのたびに採卵をキャンセルしていると先に進むことができないので、まずは採卵にトライしてみてはいかがでしょうか。
20 ㎜以上の卵胞が採卵に適していると考えられているので、通常よりは少し早めですが、9日目で 19〜 20 ㎜に成長しているのであれば2日後くらいに採卵をされるとか。
実際に月経周期が短い方は、 10 日目頃に採る場合もあります。
移植しないと妊娠しない
その判断は施設によって異なるのですか。
堀川先生 採卵をするかどうかは、その先生の治療経験や考え方によって異なってくるかもしれません。
当院では、まずは採卵されてみることをご提案すると思います。
移植をしないかぎり妊娠のチャンスは生まれませんから。
極端に卵巣の予備能が低く、2年に1回しか卵胞が育たないという場合でも、そのチャンスを生かして一度の採卵・移植で妊娠された方もいらっしゃいます。
特に年齢の高い方は着床や妊娠の確率がぐっと下がってくるので、後悔のない治療を受けていただくためにも、とにかく移植まで持っていけるようにと考えています。
卵巣を休ませることも
この状況で、他に何かできる治療は?
堀川先生 卵胞の成長のばらつきを改善したいのであれば、1周期ほどピルなどを使って卵巣を休ませてみてはどうでしょうか。
卵胞は生理の少し前から育ち始めるので、リセットすると1個だけが大きくなってしまうという悪循環を改善できるかもしれません。
あまりこの治療を長く続けると逆に卵胞の発育が遅れてしまう可能性がありますが、1周期だけならトライしてみる価値はあると思います。
卵巣刺激については、あまり強い刺激をす ると女性ホルモンの値が上がり、チョコレート嚢腫を悪化させてしまう危険があります。
やはり現在服用されているクロミッド ® やフェマーラ ® などの排卵誘発剤を使った低刺激法が適切なのでは。
生理が順調であれば、自然周期でトライされてみてもいいかもしれません。
1個でも成熟卵が採れれば、妊娠の可能性は十分あると思います。いずれにせよ、けろりんさんはそれほど深刻な状態ではないと思うので、とにかく採卵、そして移植まで早く進んでいっていただきたいですね。