一度も妊娠できません

どのような卵巣刺激が 向いているのか 教えてください

アンタゴニスト法でも低刺激法でも、結果が出ない体外受精

もっと自分に適した排卵誘発法はないの?

英ウィメンズクリニックの苔口昭次先生にお話を伺いました。

苔口 昭次 先生 1984年、宮崎医科大学を卒業。卒業と同時に岡山 大学医学部産婦人科学教室に入局。高知県立中 央病院産婦人科勤務、神戸掖済会病院産婦人科 部長を経て、2004年9月より英ウィメンズクリニック 勤務、2013年3月に院長就任。卵管鏡下卵管形 成手術(FT)に関して国内有数の実績があり、国内お よびアメリカ生殖医療学会にて発表の経験も豊富。 心身統合医療にも精通する。B型・おひつじ座。休 日は神戸•六甲山のトレッキングなど、自然の中へ出 掛けることが一番のリフレッシュ法だそう。
ミルクさん(42歳)からの相談 Q.排卵誘発はアンタゴニストを2回、低刺激を2回行い、それぞれ4~6個の卵子が採 れました。胚盤胞を2回、初期胚を1回移植しましたが、妊娠に至りません。採卵数も少 ないほうなのでしょうか? 毎回、すべて受精はしています。AMHの値は3.42です。 今後、どのような治療が向いているのか教えてください。なお、胚移植後(治療を始め てからの?)の経血の量が減ってきています。妊娠に影響はありますか? 黄体の薬の 影響でしょうか。また、精子の運動率が基準のぎりぎりで、顕微授精しかしてもらえませ ん。体外受精は無駄でしょうか?

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

子宮卵管造影検査は異常なし。
治療年数は3年。

不妊の原因 となる病名

不明

現在の 治療方針

最近の低刺激法は、ゴナールエフⓇ、フォリルモンⓇ、セロフェンⓇ 移植後、プロギノーバⓇ、ルトラールⓇ、バファリンⓇ 前回の低刺激法は、クロミッドⓇ、フォリスチムⓇ150×7 移植後、ルトラールⓇ、黄体注射

精子 データ

精子濃度:7.2
運動率:43%
量:4.0
PMSC(直進運動精子濃度):0.2
SMI(精子自動性指数):4

治療の鉄則

アンタゴニスト法と低刺激による卵巣刺激で4回の排卵誘発を行ったものの結果が出なかったことから、排卵誘発法について疑問を感じていらっしゃるようです。
苔口先生 アンタゴニスト法、低刺激、いずれの刺激法においても、受精してきちんと胚盤胞まで育っていますので、治療方針としては間違っていないと思います。
ですが、治療の鉄則として、今までとまったく同じ方法をくり返すのはよくないと思いますので、私からは2つの方法をご提案します。
まず一つは、ロング法を試してみてはどう かということ。
刺激法を変えるということですね。
ロング法は、比較的若い患者さんを対象に行う刺激法と思われていますが、高年齢の方にロング法を試みて妊娠率がアップしたというデータがあります。
簡単にいえば、アンタゴニスト法はご自身 のホルモンはそのままに、上から注射で補っていく方法で、ロング法はご自身のホルモンのレベルを少し下げて、その上から注射で補っていく方法。
もしかしたら、以前に注射の多い治療がつらかったという経験がおありかもしれませんが、以前とは異なるアプローチになるので、良い結果につながる可能性があります。
もう一つは、同じ低刺激でも内服する薬を 替えてみること。
もし、以前の治療でたくさん注射が必要なアンタゴニスト法がつらかったのであれば、ロング法より低刺激がいいのかもしれません。
今までセロフェン ® 、クロミッド ® 療法をされていたので、次はフェマーラ ® を使った低刺激法はいかがでしょうか。

精液所見は変動する

なるほど。受精の方法としては、やはり通常の体外受精よりも顕微授精が望ましいでしょうか?   ご主人の精液所見があまり良くな いということです。
苔口先生 ご主人のデータを拝見しますと、SMI(精子自動性指数)の値がかなり低値です。
当院でも、体外受精の際に補助的にSMI値を調べていますが、 50 以下の場合は受精率がかなり落ちますので、顕微授精をおすすめします。
ご主人の4という値は、ほとんどまっすぐに進んでいる精子がいないといってもいい状態。
あとは、PMSC(直進運動精子濃度)ですが、こちらも 0.2 とかなり低値で す。
体外受精の場合、精子はまっすぐに走る力を持っているほうが受精しやすいですよね。
SMIが 50 以上とかであれば、スプリットといって、半分を体外受精、半分を顕微授精と分けて受精させる方法もご提案しますが、この所見ですとデータが低すぎるため、境界にありません。
精液のデータは体調やストレスにも左右されることが多いので、当院では体外受精当日も計測していますが、おそらく4から改善して 50 になることは考えにくい。
やはり、確実に受精させることができる顕微授精が必要ではないでしょうか。

移植法の変更

移植法についてはいかがですか?
苔口先生 ご相談の内容からは、ホルモンを補充しながら移植しているのか、自然周期で排卵を待って移植しているのかがわかりません。
もし月経が順調な方の場合でしたら、自力の排卵を待って移植することも可能でしょうし、今まで自然周期だった場合はホルモン補充周期にするのがいいでしょう。
いずれにせよ、前の治療とは変えてみるということが可能性を広げることにつながります。

クロミフェンの副作用

移植後の経血の減少を気にされています。黄体補充の薬の影響はありますか?
苔口先生 排卵誘発の際にクロミフェンと注射を使っているので、おそらくその影響ではないでしょうか。
黄体補充の薬の影響ではないと思います。
経血量が減っているのは、クロミフェンの抗エストロゲン作用の影響が続いていて、子宮内膜が薄くなっている可能性が高いですね。

採卵数が多ければ良いわけではない

採卵数が少ないのではないかという懸念もあるようですが。
苔口先生 年齢が現在 42 歳ということで、採卵数はやはり 10 個程度が妥当な数でしょう。
ロング法などに比べると、アンタゴニスト法の場合は、やはり採卵数が減少すると思います。
ただし、先日、学会でも発表させていただいたところですが、たとえ卵子がたくさん採れたとしても、妊娠率は低刺激の場合とさほど変わりはありません。
成熟した卵子が 10個採れたとしても、それがすべて妊娠に結びつくかというとそうではなく、結局、妊娠の可能性は質の良い卵子1〜2個に集約されてしまうということです。
また、一口に低刺激といっても、厳密には アンタゴニスト法か低刺激かという2つに1つの選択肢ではありません。
低刺激法、というハッキリとした定義などないのです。
注射の数にしてもアンタゴニスト法であれば7〜8本くらい、低刺激は通常2本くらいが一般的だと思いますが、低刺激でも4本以上注射をした場合に妊娠率がアップしたというような報告もあります。
当院でも患者さんの状況によって内服薬の 種類や、注射の量、本数などが決まります。
排卵誘発、受精、移植、いずれの治療法も、大切なのは同じ治療をくり返すことなく、状況に応じて前の治療と変えてみること。
そして、ミルクさんも担当の医師と相談しながらなるべく体の負担とならないような治療を選択していってほしいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。