卵胞の育ちが悪いのはAMHの値が低いからなのでしょうか?
堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療センター、国立成育医療センター不 妊診療科勤務を経て、2009年12月より高崎ARTクリニック院長に就任。 国際医療センター勤務時より内視鏡手術・生殖補助医療に従事。成育医 療センターでは難治性不妊治療・加齢と不妊についての研究に取り組む。 B型・みずがめ座。東京から高崎まで新幹線通勤をしている先生。普段は ゆっくり高崎を散策することができませんが、1年に数回は奥さまと3人の お子さんを呼んで、泊まりでプールや公園に遊びに行くことも。穴場の観光 地がたくさんあるそう。
すりあさん(35歳)からの相談 Q. 不妊治療を始めて7年。タイミング療法3回、人工授精を10回しましたが、一度もいい 結果に結びつきませんでした。AMHの数値が0.9と低く、今年の7月から体外受精に ステップアップ。排卵誘発はアンタゴニスト法でしましたが、卵胞の反応があまり良くな く、卵子は4個採れて、そのうち1個は変性卵、受精したのは2個でした。7分割のグレー ド2のものを新鮮胚移植して、8分割のグレード1のものを凍結。結果は陰性でしたが、 卵胞の育ちが悪いのはAMHの数値が低いことと関係があるのでしょうか。今まで一度 も着床していないので、この先も妊娠できるのか心配です。私はこのまま妊娠できない のでしょうか?
AMHと残存卵胞数
AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が 0.9 と いうことですが、これはやはり低い数値なのでしょうか。
堀川先生 0.9 というと、だいたい 43 歳以上の 数値です。
35 歳というご年齢ですとやはり、かなり低めだと思います。
AMHは、卵巣の予備能力を表しているといわれています。
卵子の数には限りがあり、年齢とともにその数は減っていき、ゼロになると閉経ということに。
AMHの数値は、残っている卵胞の数と相関があると考えられているんですね。
喫煙とAMH
平均よりも下がってしまう原因は?
堀川先生 20 代や 30 代前半のまだ若い方でもAMHの値が下がってしまうことはあります。
子宮内膜症や手術の既往がある方。
ほかに、喫煙をしている方はAMHが下がってしまう傾向があり、閉経も平均より早くなることがわかっています。
それらの条件にあてはまらない健康な状態であっても、原因不明で卵巣の予備能力が低下してしまうケースも。
このような方が、 40 歳未満で閉経する早発閉経になってしまうかどうかははっきりわかっていませんが、本来 50 歳で閉経するところが45 歳になるなど、やはり閉経の時期は少し早まるのではないかと思います。
AMHと卵質の関係
卵胞の育ちが悪いのは、AMHが低値であることと関連があるのでしょうか。
堀川先生 AMHと卵子の質については関連がないといわれていますが、採れる卵子の数にはその数値が反映されるのではないでしょうか。
すりあさんは、アンタゴニスト法で卵子が4個採れたとのこと。年齢から見て、この採卵数はやはり少ないと思います。
同じ治療法を続けていって、妊娠できる可能性はありますか?
堀川先生 卵子の数は 43 歳程度のレベルかもしれませんが、質は年齢相応であると思うので、妊娠されるチャンスは十分あると思います。
実際、もっとAMHの値が低く、計測ができないくらいの値でも妊娠される方はいらっしゃいますから。
ただ、アンタゴニスト法のような、たくさ ん卵子を採るための卵巣刺激は合わないのではないかと思いますね。
強く刺激しても反応が悪く、卵子が多く採れる見込みがない。
目的が果たせないうえ、体に負担をかけるだけかもしれません。
このような方には、クロミッド ® やフェマーラ ® を使った低刺激法や、生理の周期が順調な場合は自然周期で採卵を行ったほうがいいのではないかと思います。
もっと弱い刺激でも、2~3個は採れるのでは? 身体的、そして金銭的な負担も減りま すし、妊娠のチャンスもあまり変わらないと思います。
AMHで治療のペースを考える
まだ希望は十分持てるということですね。
堀川先生 AMHの値が低いとわかったことをポジティブにとらえていただきたいですね。
治療法の選択や治療のスピードを考える目安になる。
状態に合った治療方針を立てていけば、チャンスはまだまだあると思います。