良好な初期胚とBCの胚盤胞どちらを移植したらいい?

7回目の移植。

良好な初期胚とあまりグレードが良くない 胚盤胞、どちらを選んで移植したらいいのでしょうか……。

荻窪病院虹クリニックの北村誠司先生に伺いました。

ドクターアドバイス

●初期胚は培養後に状態が良くなることも
●胚盤胞でもBC評価なら妊娠率は5%程度
●年齢が若いので治療を休むのも選択の1つ
北村 誠司 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡 手術に従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡 下手術による子宮筋腫、内膜症の解消・改善を積極的に図る と同時に、妊娠困難症例に対しても新しい治療を取り入れて 対応。本院(荻窪病院)泌尿器科の男性不妊専門医の協力 により、TESE-ICSIや逆行性射精など、男性不妊の治療体 制も整えている。AB型・いて座。今年開催できなかった、患 者さんとスタッフの交流の場「虹サロン」を12月から再開。クリ スマスはカップル限定で実施。「お茶を飲みながらリラックスし て語り合える場なので、ぜひご夫婦でご参加ください」。
まこさん(31歳)からの投稿 Q. 今回、4回目の採卵にて、初期胚グレード2の10分割胚1個と、 BCの胚盤胞を1個凍結しました。今までの状況からすると、グ レード2なんて私には見たことのない良い評価で舞い上がって いましたが、先生からは最初、「移植には胚盤胞まで育ってく れているほうがいいかなぁ」と言われました。でも、最終的には 「どちらがいいとはいえないので、任せます」とのこと。1カ月 後に移植する予定なのですが、どちらの受精卵を移植するべき でしょうか。

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

月経は薬を使わなければ、通常40~50日周期。
治療年数は4年 で、タイミング法5回、人工授精5回。その後、体外受精にステップ アップし、これまで採卵4回・移植6回にトライ。

不妊の原因 となる病名

病名は特に告げられていません。

現在の 治療方針

体外受精を続行中。
排卵誘発はロング、ショート、アンタゴニスト法 など、さまざまな方法を試しました。
1カ月後に7回目の移植を予定。

精子 データ

運動率80%。
精子数は忘れましたが、問題ないといわれています。

PCOSの疑い

年齢が 31 歳とまだお若いのに、これまで移植を6回行って結果を出されていないとのこと。どこに問題があるのでしょうか。
北村先生 不妊の原因となる原因は判明していないようですね。
このデータだけでは何ともいえませんが、1つ気になるのが、月経の周期です。
31 歳で 40 ~ 50 日周期というのは、ご年齢の割にはかなり長いですね。
体重は身長155㎝で 55 ㎏と、BMIでは正常範囲内ですが、もしかしたらPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)などによる排卵障害を引き起こしていらっしゃるのかもしれません。

着床障害の判断基準

6回移植で不成功ということは、着床障害なども考えられるのでは?
北村先生 もし良好胚を戻して着床していないようであれば、着床障害の検査や内視鏡による検査をされてみてもいいのかと思ったのですが、おそらくこの方は、これまで一度も良好胚を戻されたことがないのでは。
ご本人も「初期胚グレード2なんて見たことのない良い評価」とおっしゃっています。
それ以前は、初期胚でもグレード3~5程度、いわゆる良好ではない状態の受精卵を戻されていたのではないでしょうか。
そうなると、戻す受精卵の問題であり、着床に関連した検査というのは二の次なのではないかと思いました。

胚盤胞の方が妊娠率が高い

今回はこれまでの中で最も良い評価だった初期胚と、もう1つ、BCのグレードの胚盤胞を凍結されたようですが、どちらを戻したほうがいいか悩まれているようですね。
北村先生 まず、グレード2の 10 分割の初期胚ですが、これは初期胚としては一応良好だといえますね。
もう1つは胚盤胞で、3BCか5BCか不明ですが、とにかくBCのグレードの胚盤胞ができたということ。
この2つのうち、どちらが移植に適しているかは、施設や先生によって意見が分かれるところだと思います。
 一般的に考えれば、胚盤胞のほうが妊娠率・ 着床率が高く、良いグレードだったら 30 %くらいの方が妊娠されます。
まこさんの担当医の先生も「胚盤胞がいいのではないか」とおっしゃっていますよね。
しかし、やはりBCという評価が気になります。
当院のデータだと、BCの胚盤胞を戻しても、妊娠率は5%程度なんですね。
ですから、グレードが低い場合は、必ずしも胚盤胞で戻したほうがいいとはいえないと思います。

初期胚はよく観察

では、どうすればよいのでしょうか。
北村先生 初期胚が良好な状態ということですね。
すでに凍結されたようですが、この胚を融解した後にもう一度培養して、胚盤胞まで育つかどうか見てみる。
そのうえで2つを比較・検討して決められてもいいのではないかと思いますね。
当院では、なるべくロスがなく、効率的に 移植するために、初期胚をよく観察することがあります。
この方の場合は良好な胚でしたが、良好な初期胚でなかった場合、凍結は避けて、なるべく培養するようにしているんですね。
そうすると、初期胚で良い状態でなくても、培養してみると良好な胚盤胞に育ち、妊娠されるというケースが結構あります。
ですから、初期胚の良い状態のものを、というより、培養して最終的に胚盤胞まで育つということが重要なのかな、と思いますね。
まこさんの場合も、ある程度卵子の数が採 れるのであればきちんと培養して、良い胚盤胞ができるのかどうかをじっくり見ていくことも必要なのではないかと思います。

AMHは検査しよう

ほかにできることはありますか?
北村先生 AMH(抗ミュラー管ホルモン)の値が記述されていませんが、もし測っていないなら、一度検査を受けてみてはどうでしょうか。
高値であるようならPCOSの疑いもあります。
なかなか良い受精卵ができないのは、その影響もあるのかも。
PCOSは糖代謝の異常、インスリン抵抗性と関連しているケースもあります。
もしPCOSであれば、インスリン抵抗性を改善するメトホルミンを。
それで効かないようなら、新薬のジャヌ ビアⓇなどによる薬物治療で受精卵の状態が良くなっていくこともあるので、そのような治療を併行されてもいいかもしれませんね。
また、体外受精に関しては、これまで排卵誘発はロング法からアンタゴニスト法までいろいろ試されていますが、まだ低刺激法を試されていないならクロミフェンによる排卵誘発を行ってみる。
移植法については、妊娠の可能性が上がるとはいいきれませんが、二段階移植などにトライしてもいいかもしれません。

治療を休む手もある

まだ妊娠される可能性はあるのでしょうか。
北村先生 移植の回数は結構重ねられていますが、年齢的にはまだ 31 歳とお若い。
これまで申し上げた方法を試されて、妊娠につながる可能性はあると思います。
それから、まこさんは治療を始めて4年。
今、精神的に少しお疲れになっているのではないでしょうか。
体外受精をずっと続けていると、体にも心にもストレスがたまりがちです。
年齢的にはまだ余裕があるので、思いきって治療を少しお休みされてみるのも1つの選択かと思います。
月経の周期を 30 ~ 35 日くらいに管理できるようであれば、数カ月間、様子を見られてもいいのでは。
まだ自然妊娠のチャンスもあるのではないでしょうか。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。