多嚢胞性卵巣症候群で生理がきません。薬に頼らずに済む方法は?

松山 毅彦 先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大学付属大 磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、1996年 厚仁病院産婦人科を開設。日本生殖医学会生殖医療専門医。おひつじ座 のA型。忙しく休みが取れない日々で、「温泉にでも行きたいなぁ」と思ってい たところ、夏の学会で別府温泉に行くことに。とはいえ、温泉よりも学会の研 究発表に熱中してしまったそう(笑)。先生らしいですね。
えりさん(31歳)からの投稿 Q. 昨年11月から排卵も生理も起きません。12月に排卵直前までいきましたが、ストレス などで結局排卵できず。その後、不正出血があり、パンパンに膨らんだ卵胞が見つかった ので、プラノバール®で生理を起こしました。2週間後にようやく以前の卵胞は消えまし たが、それから100日経っても生理がきません。このようなことが過去に2回あり、最高 140日も生理がこなかった時は結局プラノバール®を服用しました。今後、プラノバール® で生理を起こすかどうか迷っています。薬を使いすぎて体のサイクルが狂ったのではと いう不安もあります。この状態で、自然に生理を起こすことは可能でしょうか。

薬と生理不順

えりさんは、自然に生理が起こらないのは薬の多用による副作用が原因ではと感じているようです。
松山先生 えりさんが使われている黄体ホルモン製剤プラノバール ®は、小さい錠剤で効き目がわかりやすいことから、ホルモンをコントロールする際によく使われる薬です。
確かに、人によっては吐き気を感 じるなど、何らかの副作用はみられます。
しかし、その副作用が生理不順に影響しているわけではありません。
プラノバール ® を使用したから生理がこないというのは、まったく違う話だと思いますよ。

PCOSにもタイプが…

では、今の状態で自然に生理を起こすことは可能でしょうか。
松山先生 えりさんの症状で何も対処しないまま自然に生理を起こすことは、難しいのではと思います。
定期的にホルモンコントロールをして生理を起こさないと子宮が萎縮してしまいます。
そうなると、妊娠を望んで治療を始めようとしても、まず子宮を大きくすることから着手することになるので、遠回りですよね。
えりさんの場合、生理不順と、医師から診断を受けた多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
この2つの症状に対処しないといけないですね。
PCOSとひと口に言っても、専 門医の間ではいろいろなグループがあるといわれています。
ざっくり分類すると、薬にうまく反応するタイプとなかなか反応しないタイプに分かれるのです。
えりさんは、生理が止まっているわけですから、定期的にホルモンのコントロールをする必要がありますね。
そのためには、やはり黄体ホルモン製剤を使ったほうがいいのではないでしょうか。

その人に合った薬を

薬で治るとわかっていても、えりさんのように、薬そのものに対して抵抗がある人も少なくないと思いますが。
松山先生 当院の患者さんにもそういう方はいらっしゃいますよ。
その場合は強要せずに、体の症状をご理解いただいたうえで、その薬を使う理由をきちんとご説明するようにしています。
目的さえわかれば納得して使っていただけることが多いです。
また、その人に合った薬を選択す ることも1つの方法です。
プラノバール ® に比べて副作用が軽い薬はあることはあります。
えりさんの症状を見ると、インスリン抵抗性ありでグリコラン ® を使用していたと書いてあるので、インスリンに対しても造詣の深い医師に診てもらいながら、きちんと治療を進められていた印象です。
薬そのものに抵抗感を示してしま うお気持ちもわかりますが、なぜその薬を使わなければならないのかを、しっかり担当医と話し合ってみてはいかがでしょう。
体の現状を改めて把握することもできますし、決して無駄なことではありませんよ。
※多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):月経異常や不妊、多毛、肥満などの症状があり、慢性的にアンドロゲン(男性ホルモン)の過剰や血液中の黄体化ホルモンが高値(卵胞刺激ホルモン上昇をともなわない)を示す。排卵巣 内にたくさんの小嚢胞がある。
※グリコラン ®:糖尿病(2型糖尿病)の経口薬。
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