2回続けて卵管に妊娠。卵管を切除しなくていいのでしょうか?

臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精グ ループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995年より現在の東京・亀 有にて産婦人科医院を開業。2004年より不妊専門の治療センターに。 読売巨人軍の大ファンの先生。開幕戦を楽しみにしていましたが、家を出る 前に愛犬のココちゃんが嘔吐。急いで病院に連れて行ったので、残念ながら 球場では観戦できなかったとか。何よりも“娘”を愛する心優しいパパです。
こーりんさん(26歳)からの相談 Q.10代の頃から排卵障害があり、24歳で結婚した後、すぐに不妊治療を開始。なかなか 排卵せず、8カ月目でやっと体外受精に臨むことができましたが、2回連続で卵管に子宮外妊娠をしてしまいました。2回とも医師からは卵管をどうするかという話はありません でした。このままではまた卵管妊娠をくり返しますよね? 私は体外受精でしか授かれな いので、卵管があったら逆に正常妊娠できないのでは……。切除などのタイミングは先生 が決めるのですか? 私がいうべきなんでしょうか。次ももしかしたら、今回正常妊娠し たとしても、2人目の時もまた子宮外妊娠を経験することになるかと思うと怖いです。

子宮外妊娠

卵管に妊娠するとどのような状態になるのですか?
臼井先生 通常、受精卵は子宮内腔の粘膜に着床するのが正常なのですが、卵管妊娠は卵管内に受精卵が着床し、妊娠してしまうものです。
子宮外妊娠には子宮頸管や卵巣、腹膜などに妊娠してしまうケースもありますが、それはまれで、卵管に妊娠する卵管妊娠がもっとも多いといわれています。
卵管に妊娠すると早期に流産にな るか、もしくは気がつかないでそのまま放っておくと卵管破裂を起こすことがあります。
卵管には伸縮性がなく、限度を超えてふくれると破裂してしまう。
そうすると多量に出血して、最悪は死に至る場合もあります。
体外受精の治療を受けていれば早くからチェックできるのですが、自然妊娠の場合はわかりづらく、なかには救急車で運ばれて手術をしたり、輸血をしなければならなくなるという方もいます。

卵管妊娠の対処

どんな方が卵管妊娠を起こしやすいのでしょうか。
臼井先生 やはり卵管の機能が悪いと起こりやすいのではないでしょうか。水が溜まっていたり、炎症があって通過性が悪くなると、受精卵がそこに留まって妊娠してしまうのではないかと考えられています。
2回くり返されたということですが、先生は特に卵管の処置は考えていらっしゃらないようです。
臼井先生 先生によって、いろいろな考え方があるかもしれません。
子宮外妊娠後の卵管の状態にもよりますよね。
それほど状態が悪くなく、妊娠への影響がないと判断したら、そのままにしておくという場合もあるでしょう。
問題があれば、腫れている所に穴を開けて水が溜まらないようにするという処置で済ませることもあります。

卵管切除の必要性

卵管そのものを切除する必要はないのでしょうか。
臼井先生 状態が悪化していれば卵管を切除するという方法を選択することもあります。
もし、今後自然妊娠は望まず、卵管妊娠の危険も完全に排除したいということであれば1つの選択肢になるかもしれませんが、卵管と卵巣は近くに位置しているので、卵管を切除すると卵巣の血流量が落ちるといわれています。
体外受精だとしても、卵巣の血流量が落ちると卵のできが悪くなるという悪影響が出ることも。
ですから、もし切除をするとしたら、ちゃんと血流を残しながら丁寧に処置することが必要になってきます。
臼井先生だったら、どのような治療を提案されますか?
臼井先生 卵管が腫れていなければ、そのままにしておくと思いますね。
もし処置を強く望まれるのなら切除ではなく、腹腔鏡で卵管を縛るクリッピングを提案すると思います。
自然妊娠は不可能になりますが、それならご負担をかけず、卵管妊娠の危険性を少なくすることができます。
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