高橋 克彦 先生 慶應義塾大学医学部卒業。インターン時代に立ち会ったお産に感激し、産 婦人科医を目指す。1990年に日本初の体外受精専門外来クリニック、高 橋産婦人科を開業。後に広島HARTクリニックと改名。2000年、東京HA RTクリニック開設。「日本初」の実績を次々と打ち立て、日本の不妊治療界 をリードする。2012年のノーベル医学・生理学賞に輝いた京都大学の 山中伸弥教授の右腕と称される高橋和利さんは、実は高橋先生の甥っ子 だそう! 以前から研究を頑張っているのを聞いていたので、受賞の知らせ を大変喜ばれています。
うにゃこさん(31歳)からの相談 Q.一昨年、卵管造影検査をしたところ卵管が詰まりぎみで、卵管采の癒着など、 ※ピックアップ 障害の可能性があるといわれました。タイミング療法、人工授精では妊娠せず、半年後に 体外受精で妊娠、出産できました。その息子が1歳になり、2人目をと凍結卵を1個移植 しましたが残念な結果に。1人目を妊娠する前の検査では、高プロラクチン血症、PCOS もありましたが、2人目の治療を再開した時には2つとも正常でした。ピックアップ障害は 完治しているのでしょうか? 2人目の妊娠に可能性があれば、1歳の息子を連れての採 卵は大変なので、しばらくタイミング療法で様子を見ようか考え中です。
卵管因子と体外受精
体外受精で1人目の妊娠、出産をしたうにゃこさんですが、ピックアップ障害が改善されたと考えてもよいのでしょうか?
高橋先生 うにゃこさんは、体外受精によってすぐ妊娠されたということですので、やはり卵管に原因があったと考えてよいでしょう。
というのは本来、体外受精は、精子と卵子は正常で卵管に問題がある場合に行われる治療法だからです。
卵管に原因があったゆえに、1回の体外受精で妊娠することができたのでしょう。
ピックアップ障害についてですが、軽度であったならば、妊娠したことで改善されて自然妊娠につながることもまれではありません。
体外受精で妊娠・出産して、体に何かしらの変化が起こってもおかしくないですから。
改善する可能性はあるでしょう。
体外受精へ進むタイミング
では、うにゃこさんはしばらくタイミング療法でもよいでしょうか?
高橋先生 一般的に、タイミング療法を行って2年妊娠しなければ体外受精をおすすめします。
うにゃこさんは若いですし、とはいえ卵管に不安もあるでしょうから、2年経っても妊娠しなければ体外受精へステップアップするのがいいでしょう。
卵管のつまり
卵管の詰まりについては、どう思われますか?
高橋先生 質問内容からは詳細がわからないので何とも言えませんが、卵管造影の際に造影剤が腹腔内に流れていないと書かれているので、詰まっているのかもしれないし……。
造影剤が水溶性なのか油性なのかによっても違いが出ますし、造影剤が通ったからといって卵管が正常かというと、実際の機能については判別できません。
完全に卵管が詰まっている場合は別ですが、総じてピックアップ障害と判断されたのでしょう。
時間を大事にステップアップ
最後に、2人目不妊の治療を行う方へメッセージをお願いします。
高橋先生 1歳くらいのお子さんをかかえての治療は大変だと推察いたします。
とはいえ、2年ほどの年月は意外と早く過ぎるもの。
気が付いたら 35 歳になっている、ということもありえます。
うにゃこさんの場合は 31 歳と若い ため、2年後の体外受精へのステップアップをすすめましたが、たとえば 38 歳の方の場合はまた違います。
2年といわず、1年で体外受精へステップアップすべきと考えます。
話は少し変わりますが、2人目の 子どもというのは1人目の子にとっても必要なんです。
密な関係性を持てる、兄弟ゲンカができる年齢差というと、3歳差くらいまでじゃないかな。
そうすると、2年くらいで治療のステップアップを考えるのがいいと思います。
これは医師というより、孫を持つおじいちゃんの視点からの意見として受け止めてもらえればありがたいですね。
※ピックアップ障害:排卵した卵子を卵管内にキャッチできないもの。卵管の炎症などによる卵管采の癒着が原因となる。