太っていると妊娠しにくい ?

俵史子先生の体質改善ROOM

妊娠・出産のためには健康な体づくりが大切です。

体質改善の指導に力を入れている俵先生に、 太りすぎや痩せすぎの影響を聞きました。

自分のためにも、赤ちゃんのためにも 今日からできる体質改善、 始めましょう!

俵史子先生 浜松医科大学医学部卒業。2004年愛知県 の竹内病院トヨタ不妊センター所長に就任。 2007年、俵史子IVFクリニックを開業(のちに 俵IVFクリニックに名称変更)。浜松医科大学 臨床講師、生殖医療専門医。春から経験豊富 な男性培養士が培養部長に就任し、培養部 もパワーアップ。早速成績向上を認めているそ う。「開院以来初の男性スタッフを迎えて、クリ ニック全体にいい緊張感が出ました」と先生。
夏休み明けの誕生日さん(40歳)Q.私は、標準体重より13㎏オーバーの肥満で、いろいろ なダイエットをしても1~2㎏痩せてはまた増えるとい うくり返しで、なかなか痩せられません。妊娠するには BMI22~23が理想的ですが、私は28から変化なし。 何が何でも10㎏は落としたほうがいいですか?

標準より 20 %肥満で 不妊のリスクは2倍に

BMIの基準からみると、 18 ・5以下は「痩せ」、 18 ・5〜 25 は「適正」、 25 以上は「肥満」となっています。
BMIが 22 くらいだと健康状態がよく、妊娠にも理想的だといわれています。
肥満と妊娠の関係は、標準体重より 20 %体重過多の場合、不妊症のリスクが2倍になるというデータも報告されています。
一番の問題は、排卵障害です。肥満女性の約半数に、無月経、排卵遅延、黄体機能不全などの月経異常を認めると言われています。
特に高度肥満の場合は、無排卵となる可能性が高くなります。
排卵障害の原因の一つは、肥大した脂肪細胞から産生される過剰なエストロゲンにより、下垂体性ホルモンなど排卵に関与するホルモンの分泌に異常をきたすこと。
他に、脂肪細胞由来のタンパクの異常が、卵巣自体に影響し排卵を起こしにくくさせるという報告もあります。
さらに、インスリンなどの他の内分泌代謝異常を起こしやすくもなるなど、排卵障害の原因は多方面にわたってきます。
たとえ排卵が正常であったとしても、着床率が低下するなど、排卵障害以外にも肥満が妊娠に悪影響を及ぼすというデータが報告されています。
また肥満の状態で妊娠すると母体へのリスクが非常に高まります。
体重が多ければ多いほど、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などの合併症も増えるので、やはり妊娠前から理想体重に近づける努力をしてほしいです。
よく「不妊治療をしてホルモン剤を使うと太る」という声を聞きますが、これは一時的なものです。
自然の月経周期でも、黄体期には体は水を溜めようと働くので、むくんだり、食欲が増すことがあります。
でも、黄体期が終わってしまえば元に戻る。
ホルモン剤を飲んでいる時も同様です。太ってしまうというのは、食欲にまかせて、その後も同じように過食を続けているからではないでしょうか。
妊娠を望むなら、体重管理は必要です。
この方もBMIが 28なので、体重を落とすことが必要ですが、いきなり 10 ㎏減の目標は厳しいのでは。
まずは、5〜 10 %の減量を目指してみてはいかがでしょうか。
体重が 70 ㎏なら、まずは 3.5 ㎏ 減らすなどで、健康に近づき、心血管障害や糖尿病のリスクを低下させるうえで有効だといわれています。
もちろん、妊娠にもいい影響があると思います。
ただ、年齢が 40 歳とのことですから、のんびりはしていられません。
ご主人やご家族にも協力してもらい、目標の期間をしっかり決めて、短期集中のダイエットに取り組みましょう。

肥満は排卵や着床に悪影響。 まずは5~10%減量を目標に!

肥満と不妊の関係(海外の学会データ、文献より)

○妊娠率が低下

排卵が順調でもBMI35 以上だと正常な女性に 比べて26%妊娠しにく い。(※1)

○体外受精の治療へ影響

肥満にともなって正常受精卵の数は 減少、HCG投与日のエストラジオー ルレベルは低下し、妊娠率および生 児出産率の低下が認められた。IVF を受ける不妊症患者において、治療 期間中は正常体重を維持すること がすすめられる。(※2)

○移植のキャンセル率へ影響

BMI40以上の病的肥満女性 においてのIVFのキャンセル 率は優位に上昇が見られる。 (※3)

○代理母が肥満である場合も妊娠率が低下

代理母のBMIで妊娠率を比較し てみたところ、BMI35未満の人 だと59%だったが、35以上だと 32%だった。(※4)

○出生率が低下

顕微授精を受けたカップルに おいて、肥満男性のカップルに おける生児出産の割合は、正 常BMIの男性のカップルよりも 84%低下するという結果が得 られた。(※5)

(出典元)

※1=Human Repro.2007 Dec ※2=Obstet Gynecol.2011 Jul ※3=Obstet Gynecol.2006 Jul ※4=Fertility.2009 Oct ※5=Fertil Steril.2012 Nov
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