「オリモノ」「かゆみ」で悩んでいませんか?
女性が相談しにくいカラダの悩みについてアンケートを実施したところ、「オリモノ」や「デリケートゾーンのかゆみ」について多くの人が悩んでいることがわかりました。
これらは何か異常を知らせるサインなのでしょうか。
秋山レディースクリニックの秋山先生にお話を伺います。
病気のサインとして オリモノに変化が表れることも
オリモノはすべてが異常のサインということではなく、健康な状態でも見られ、排卵の時期や生理前などに増えることがあります。
では、「オリモノ」とは何なのでしょうか。
正常なオリモノは外陰部の皮脂腺や汗腺からの分泌物、腟壁からの浸出物、頸管粘液、子宮内や卵管からの分泌物などからできています。
腟の中にはだいたい 5~ 6 種類くらいの常在菌がいて、そのうちの一つである乳酸桿菌という菌が腟内を酸性に保ち、他の菌の繁殖を抑えています。
何らかの理由でこの自己防衛のバランスが崩れ悪い菌が増殖してしまうと、体に炎症などの変化が起こり、オリモノにもサインとしてそれが出てきます。
オリモノの状態でわかる疾患をいくつかご紹介していきましょう。
悪臭を伴ったオリモノなら 細菌性の腟症や腟炎の疑いが
本来は腟の中に常在している菌に代わり、他の悪い菌が範囲を超えて増殖している状態を「細菌性腟症」といいます。
腟の感染症の中では最も頻度が高く、腟の洗浄のしすぎや性交回数が多いなどということも原因になります。
無症状の場合もありますが、たいていはオリモノに悪臭を伴うことが多く、生魚が腐ったような臭いと表現されることも。
腟剤を使うことで症状は治まりますが、放置したままだと子宮内感染や骨盤内感染の危険性が増し、羊水の入っている膜に感染すると妊娠後に破水してしまったり、早産の可能性が高くなってしまいます。
雑菌が繁殖し、腟症がさらに悪化して炎症を 起こすと「細菌性腟炎」になる場合も。
この状態になると多量の膿のようなオリモノが分泌され、腟の灼熱感や痛みを伴うこともあります。
カンジダや トリコモナスの感染は 強いかゆみを引き起こします
カンジダというカビの一種で起こる「カンジダ腟炎」も比較的頻度の高い病気です。
この病気はヨーグルトや酒粕のような白いポロポロとしたオリモノの分泌とともに、非常に強いかゆみが出るのが特徴です。
実はカンジダ菌は健康な人でも腟や腸の中に存在していることが多いのですが、それほど強い菌ではないので微量ならば症状を引き起こすことはありません。
しかし、抵抗力の低下や腟内の細菌バランス破綻により異常増殖を起こすと、腟炎を引き起こします。
風邪を引いて体が弱っている時や妊娠時になりやすくなるほか、糖尿病や性交渉、腸からの菌の場合は自分の便による感染で起こることもあります。
治療は飲み薬を使うこともありますが、一般的には腟錠を使うことが多く、外陰部などのかゆみが強い場合は塗り薬を処方して症状を抑えることもあります。
また、黄色く、泡立ったような形状で悪臭があるオリモノ、強いかゆみがある場合は、トリコモナス菌の感染による腟炎が考えられます。
この病原菌は通常の菌より少し大きいトリコモナス原虫という虫です。
性交渉により感染することが大半ですが、下着やタオル、浴槽などから移るケースもあります。
この病気も一般的には腟錠を使って治療をします。
不妊症やがんが 隠れていることもあるので 異常なオリモノや かゆみがあったら受診を
これらの病気を予防するために普段の生活で気をつけていただきたいのは、腟を洗いすぎないこと。
先に申し上げたように外から何もしなくても、腟は自ら細菌のバランスをとって正常な状態を保っています。
オリモノがあるとつい石鹸などでゴシゴシ洗ったり、ビデを使いすぎてしまいがちですが、必要以上に刺激を与えてしまうと常在菌のバランスを崩してしまうので、炎症を起こしたり、かゆみなどの症状をさらに悪化させてしまいます。
この点は気をつけていただきたいですね。
すでにかゆみや悪臭、いつもと違う色や形状のオリモノがあるという人は、恥ずかしがったり、大したことないと思わず、一度婦人科の受診を。
臭いは下着の汚れの酸化などによるもので、調べてみたら正常だったというケースがほとんどですが、もし腟炎を起こしているようであれば適切な処置を早めに行うことができます。
また、オリモノが出るという状態は、時にクラミジアや淋菌、マイコプラズマなどの感染による子宮頸部の炎症や、卵管水腫などの疾患が隠れていることがあり、そのまま放っておくと不妊症の原因になってしまうことも。
年齢が高くなってくると子宮体がんなど命に関わる病気が潜んでいる場合もあるので、違和感があれば、やはり病院で診てもらうことをおすすめいたします。