体外受精を始めて1年半、結果が出ず先が見えません。妊娠の可能性はありますか?

体外受精で1年半治療し、卵巣刺激法についてのお悩みに いくたウィメンズクリニックの生田先生から 今後の治療法についてアドバイスをいただきました。

生田 克夫 先生 名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科 学教室助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴 を重ねたが、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいと いう思いで、教育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の 中心部、栄に開院し、1986 年から体外受精の現場を歩い てきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に 導く。最近は、着床不全の人には特異的に子宮内膜の擦過、 刺激などを行っているそう。問題がなさそうだと思えば新し い治療法も積極的に取り入れ、「何か疑問があれば徹底的 にお話ししますよ」という言葉も心強い。

ドクターアドバイス

◎ FSHの値を下げること
◎ 卵巣を休ませることも必要
◎ 補助的なサプリメントも試してみましょう
ドラゴンさん(42歳)Q.これまで14回の採卵で2個の胚盤胞を移植しま したが妊娠せず、胚盤胞1個を凍結保存中です。 AMHFSHの数値から薬は使えないと言われ、1 回フェマーラⓇを使用した以外はすべて完全自然周 期。このまま同じ方法でいいか、フェマーラⓇやクロミッ ドⓇなどの刺激法のほうがいい卵子が採れる可能性 が高まるでしょうか? 14回の採卵では、ほとんどがDay10 ~13の採卵で、 老化により卵胞の成長が早すぎるためとのことです が、最近Day20を越えて採卵した周期が2回あり、 2回とも胚盤胞になりました。日数をかけて成長した 卵子のほうが質がいいと感じるのですが。長期の治 療でも結果が出ず、先が見えません。何か打開策は ありますか?

これまでの治療データ

■ 検査・治療歴

2007年から不妊クリニックに通い、3回転院。完 全自然周期での体外受精で22周期、14回の採卵を 行うものの妊娠に至らず。
11周期目に1回のみフ ェマーラⓇを使用し、成熟卵が2個できるが、胚盤 胞に至らず。
AMH:2.3(2011 年 11 月 )
FSH:19.5(2012 年1月)
3.5×4.5㎝の子宮筋腫(筋層)あり。

■ 精子データ

精液量:3.5mL
精子濃度:10.3×106/mL
精子運動率:22%
精子形態は正常範囲内。

状況によって変更

ドラゴンさんは今後、卵巣刺激法による採卵にもトライしたほうがいいか迷っているようです。
生田先生 1回フェマーラⓇを使っているので薬を使っていけないことはないと思いますし、完全自然周期法でなくても大丈夫だと思います。
確かにFSHの数値が少し高いのですが、微妙に下げたところで薬を服用すれば、卵子が育つ可能性はあると思います。
ただ、FSHは下げすぎるとまた反応が悪くなることがあるので、調節が難しいのです。
クロミッドⓇなどを使って、ある程度、卵胞が2〜3個くらい成長してくるようなら、途中からHMG注射剤を少し使って卵胞の大きさに差がつかないようしっかり見ていけば、採卵できる可能性はあると思います。

年齢と染色体異常

なにか打開策はありますか?
生田先生 正直なところ、難しいですね。
42 歳という年齢から受精卵に染色体異常が起こる確率も高くなっているので、できるかぎりいい卵子を採れるようにすることですね。
ご本人も、プラセンタや葉酸、漢 方薬を飲んでいらっしゃるようですが、そういったことで卵子の質がよくなるかもしれません。

サプリメントの活用

こういったサプリメントなどは飲んだほうがいいのでしょうか?
生田先生 確実なデータを出すことは難しいのですが、先日行われた日本受精着床学会では、卵子のエネルギー源であるミトコンドリアを増やすという点で、L―カルニチンの研究成果の発表が少しありました。
その前にはメラトニンの発表もありましたし、アンチエイジングが期待できるようなDHEAなど、抗酸化作用のあるサプリメントを試してみるのも1つの方法だと思います。
卵巣などの活性酸素を除去したり、細胞の活性化などを期待できるかもしれません。

卵子の成長と採卵

これまでほとんどがDay 10 〜 13の採卵で、卵胞の成長が早すぎると言われたそうですが。
生田先生 これは、月経時のFSHが既に高いことが影響している可能性が高いですね。
つまり、生理が始まった時に、フライングしている卵子があるかもしれないということです。
そうすると、月経終了時に大きな卵胞ができてしまっていることがあります。
最近、Day 20 を越えて採卵した周期で胚盤胞ができ、日数をかけて成長した卵子のほうが質がいいと感じているようですが。
生田先生 それなら、生理が来る前に卵巣を休ませる形で、ホルモン剤などでFSHを下げてから始めるといいと思います。
生理の前くらいからFSHが高くなるので、そのタイミングに合わせてフライングしてしまう卵子がいるんですね。
それを抑えるために、前の周期にしっかりと卵巣を休ませる。
もし毎周期続けて行う場合は、採卵後、すぐに胚移植をしないにしても採卵後にホルモン剤を十分に投与します。
そうするとFSHが下がってきますからフライングする卵子も減ります。
そうすれば、ご本人が希望されるような日数で成長してくる形になると思います。
ドラゴンさんは、年齢的に残された採卵可能期間などを考慮して、この1年は移植せず、採卵に集中して数個の胚盤胞の保存を目指し、後で移植する……という方法も検討しているそうですが。
生田先生 そうですね。
現実的な方法として、年齢的な問題のほうが大きいので、1個採卵しては移植してまた1周期お休みして……という方法は若干難しいかもしれません。
それなら、たとえば2〜3周期卵子を保存しておいて、受精卵を2個移植してもいいわけです。
移植にもいろいろな工夫がありますので。
実際に、当院でもそういう方は多いですよ。
また、2個戻すと1個戻した時よりも着床しやすいというケースもあります。
いくつかの受精卵は正常に着床する力を持っています。
ですから、良好な受精卵の移植をしても着床しない場合、質としてはあまりよくない受精卵でも一緒に戻すことで、形態良好な受精卵をさらに着床しやすくさせるという可能性があるのです。
2個が協調して内膜に働くんですね。

胚盤胞があるというコト

最近になって胚盤胞が2個できたことは、明るい兆候でしょうか?
生田先生 胚盤胞ができたということはいいことと思いますが、2個卵胞が膨らんだことはたまたまだと思います。
たとえて言えば、かけっこに参加しようかなと思っている卵子が、偶然ひょっこり2つ顔を出したので反応が出た、ということでしょう。
ですから、長い目で見てください。
卵子が採れるかぎり、妊娠の可能性はあります。
いわゆるスタンダードな方法でダメだったら、無理のない形で妊娠しやすくなる方法をいろいろと試してみることですね。

妊娠に向けてできること

生田先生でしたら、どのような治療をされますか。
生田先生 刺激の方法を根本的に変えるのは難しいと思うので、さきほどお話ししたような補助的な薬剤を積極的に使って、刺激をする時にFSHの値を反応しやすい状態に持っていき、一定の速度に従って卵胞が大きくなるよう調節していきます。
また、受精卵だけでなく、周りの環境も徹底的に整えて、なるべく着床しやすい状態にします。
卵巣の中で眠っている卵子が起きてきてかけっこをするわけですが、そのかけっこをしていく間に、いかにいい卵子に育てるかが大切。
ですから、卵子が育ってきて 0.1 〜0・ 15 ㎜に育つ時に、ミトコンドリアの需要が一気に増えるので、いいミトコンドリアがなるべく増えるよう、卵巣環境も整える必要があると思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。