【医師監修】塩谷 雅英 先生 島根医科大学卒業。卒業と同時に京都大学産婦人科に入局。 体外受精チームに所属し、不妊症治療の臨床に取り組みなが ら研究を継続する。1994~2000 年、神戸市立中央市民病 院に勤務し、顕微授精による赤ちゃん誕生に貢献。2000 年 3月、不妊専門クリニック、英ウィメンズクリニックを開院する。 A 型・しし座。男性不妊治療にも力を注ぐ同クリニックでは、 患者さんのニーズを受けて手術用顕微鏡「MD-TESE」を新導 入。院内での顕微鏡下手術が可能になり、「利便性がよくなっ たので患者さんの負担を軽減できます!」と先生。
とらうべさん(36歳)Q.5 年前から、月経~排卵期過ぎ(17日くらい)にかけて、茶色いおりもの 状の不正出血が続いています。複数の病院でがん検査、エコー検査、ホル モン検査を行いましたが、「そういう体質」ということで放置してきました。 昨年、子宮内膜ポリープが見つかり子宮鏡下手術を受けましたが、その後 も出血に悩まされています。不正出血はよくないと思うのですが、いかがで しょうか? 原因は、古い内膜が残っているせい、または子宮の前屈が強いために月経 血が出にくいからでしょうか。この不正出血を改善する治療法はありますか?
不正出血は検査すべき
やはり不正出血はよくないのでしょうか?
塩谷先生 月経の開始から排卵期を過ぎるまで出血が続くというのは、明らかに問題です。
この方を妊娠に導くためには、原因の究明と解決が大切です。
体質だからといって済ませられる問題ではありませんね。
考えられる5つの原因
どのような原因が考えられますか?
塩谷先生 5つの原因が考えられます。
1つ目は、子宮内膜ポリープ。
この方は昨年 12 月に手術を受けられています。
通常はこれでおりものが改善するはずですが、その後も改善されていません。
実は、子宮内膜ポリープは短期間で再発することがあります。
ちなみに当院では、内膜ポリープの摘出後も出血が続いていた人に、ポリープを取った根っこから微量の出血が見つかった例があります。
ですから、子宮鏡検査でポリープの再発や出血を診てもらうといいですね。
2つ目は、卵巣機能不全です。
正常な月経は3〜7日間で、卵巣からの卵胞ホルモンが子宮内膜に働きかけて月経を止めます。
ですから、もし卵巣機能不全で卵巣の働きが不十分な場合は、卵胞ホルモンの分泌が起こらない、あるいは不足しているために月経を止めることができず、出血が続いているという可能性があります。
3つ目は、慢性子宮内膜炎です。
急性子宮内膜炎は発見しやすいのですが、慢性は軽い出血が続く程度で長引くことがあります。
この場合、抗生物質や抗菌剤などの適切な投薬で改善することがあります。
4つ目は、卵管水腫です。卵管が腫れることで、古くなった血液の水分がその中に溜まり、これが月経後に流れ出ることもあります。
この方の場合は、子宮卵管造影検査では異常がなかったそうなので、可能性は低いですね。
これらの病状で出血が続くことがありますが、これは診察すればわかります。
この方は言われていないそうですから、これも可能性は低いですね。
とらうべさんの場合、この5つの中で可能性が高いのは、子宮内膜ポリープの再発です。
早めの検査が必要
子宮の前屈については、それによって月経血が出きらないという場合があるのでしょうか。また、古い内膜が残っている可能性はあるのですか?
塩谷先生 多くの患者さんを診てきた経験から言うと、月経血が出きらないほど前屈することは考えにくいですね。
前屈のことはあまり気になさらないほうがいいでしょう。
同様に、古い内膜が残っている可能性も考えにくいです。
いずれにしても、子宮鏡を入れるとわかりますから、早急に検査を受けることをおすすめします。
ポリープの再発だけでなく、どこから出血しているのかが見えてくると思いますから。