精子の活性化因子について教えてください。今後の治療はどうすべき?

塩谷 雅英 先生 島根医科大学卒業。卒業と同時に京都大学産婦人科に入局。体外受精 チームに所属し、不妊症治療の臨床に取り組みながら研究を継続する。 1994~2000 年、神戸市立中央市民病院に勤務し、顕微授精による 赤ちゃん誕生に貢献。2000 年 3月、不妊専門クリニック、英ウィメン ズクリニックを開院する。A 型・しし座。不妊治療について1冊にまとめ た、英ウィメンズクリニックのジネコ別冊『Hanabusa with Jineko.net/』 が大好評!「 不妊治療や検査が初めての方に、不安を解消してもらえる よう、わかりやすい内容になっています。ぜひ読んでみてください」と先生。
だーこさん(38歳)からの投稿 Q.13回の人工授精を行った後、初めて顕微授精しましたが受精しませんでした。 当初は体外受精の予定でしたが、卵子の状態があまりよくなくて顕微授精に変 更。先生には「受精障害は顕微授精でカバーできるけど、今回受精卵に至ら なかったのは、精子に活性化因子がない可能性がある」と言われました。活 性化因子は精子が生まれ持ったものですか? それとも何かが原因でなく なったりしますか? 受精卵にならなければ、妊娠もできません。このまま治 療を続けて妊娠できるのでしょうか。

活性化因子??

まずは、精子の活性化因子について教えてください。
塩谷先生 活性化因子とは、詳しくは卵細胞活性化因子(sperm factorスパームファクター)といい、もともと精子の細胞質内にあります。
この卵細胞活性化因子の本質は、まだ解明されていないのですが、 PLC-zeta ピーエルシーゼータという物質が、卵活性化のカギである可能性が高いと考えられています。
だーこさんが何個の卵子が採れたのかは書かれていませんが、ある程度の卵子は採れたのに、どれも受精しなかったために、この相談をされたのかなと思います。
そうであれば、卵細胞活性化因子が原因で受精しなかった可能性は十分考えられますね。
ただ、卵細胞活性化因子が完全に欠如している人はほとんどいないといわれています。
ご主人の精子は、卵細胞活性化因子が不足していて、卵子の細胞質に入って卵子を活性化する力が弱かったのかもしれません。
それと、卵子の細胞質の未熟性に問題がある可能性もあります。
卵子には、核と細胞質があります。
顕微授精は、この核が成熟したのを確認してから行うのですが、核が未熟だと受精できないことがあります。
さらに細胞質のほうは、成熟したかどうかが確認できないため、細胞質が未熟であれば、どんなに状態のいい精子を入れても受精できません。
そういう意味で、卵子側の問題の可能性も考えておきたいですね。

卵子の活性化

治療法はありますか?
塩谷先生 精子の卵細胞活性化因子の不足や欠如が原因の場合は、顕微授精後の卵子に人工的な刺激を加えることで、卵子を活性化させる方法が2つあります。
1つ目は、電気刺激法です。
これは卵子を電極に挟んで電気を流す方法で、安全性も確認されています。
2つ目は、カルシウムイオノフォア法です。
当院では、この化学薬品を使う方法でほとんどの方が受精しており、受精がまったく起こらない人は非常に稀です。

体外受精?顕微授精?

治療の可能性が広がりますね。
塩谷先生 受精の可能性は十分にあります。
この方法以外にも、ご主人の精子の濃度や運動率がいいので、次回は体外受精を試みてもいいと思います。
卵子の状態がよくなかったというのは、数が採れなかったということかもしれません。
ご主人の精子は体外受精を期待できる数値なので、卵細胞活性化因子が不足している程度であれば、体外受精によって活性化が起こる可能性はあります。
顕微授精は卵子に精子を直接入れるため、受精するには精子の活性化だけが頼りになるのですが、体外受精は、精子が自分で卵子の膜を破って、活性化因子以外のもので活性化させる働きがあるのです。
ですから、体外受精を試してみる価値はあると思います。
※カルシウムイオノフォア法:受精卵をカルシウムイオノフォアという薬剤処理で活性化させる方法。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。