卵胞が3つ確認できた場合、人工授精やタイミング療法は見送ったほうがいい?

臼井 彰 先生  東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海 教授の体外受精グループにて研究・診察に従事。医局 長を経て、1995 年より現在の東京・亀有にて産婦人 科医院を開業。5年前より不妊専門の治療センターに。 「妊娠できればいい」のではなく、「健康に妊娠・出産 できる」ような不妊治療を。そのために、患者さんには リスクもきちんと説明しながら治療を進めることが大切 だと考えている。

人工授精など一般不妊治療で、卵胞が3つ以上確認された場合、 その周期は見送ったほうがいいのでしょうか? 臼井医院不妊治療センターの臼井先生にお話を伺いました。

ロビンさん(39歳)Q.今周期は2回目の人工授精で、クロミッドⓇ1日1錠×5日服用後、昨日、周期12日目の 卵胞チェックに行ってきました。24㎜、19㎜、17㎜の卵胞があり、医師からは「三つ子の 可能性があるから人工授精はできない。タイミングをとることもおすすめできない」と言わ れました。多胎妊娠の危険性は十分わかりますし、今周期は見送ったほうがいいということ は理解できます。でも、自力排卵を期待してタイミングをとりたいと思っています。インター ネットで「クロミフェン周期ではHCG製剤を打たないと自力排卵は難しい」という情報を見 て少し不安ではありますが……。やはり、今周期は見送ったほうがいいのでしょうか?

一般不妊治療での多胎妊娠

卵胞チェックの際に、卵胞を3つ確認できたということですが、このような場合、やはり三つ子になる可能性があるのでしょうか。
臼井先生 すべてのケースがそうなるとは限りませんが、可能性はあると思います。
「多胎妊娠は体外受精によって起こることが多い」と思っていらっしゃる方もいるかもしれませんが、実は多胎妊娠は、体外受精より、タイミング療法や人工授精など、一般不妊治療において排卵誘発した場合のほうがずっと多いといわれています。
体外受精は、現在では戻す胚の数を1個に制限する方向に動いていますから、多胎妊娠の可能性も当然低くなります。
しかし、タイミング療法や人工授精では、卵胞の数をコントロールすることができないため、多胎妊娠になる可能性もあり得るのです。

多胎妊娠を避ける

ロビンさんの担当の先生はそれを防ぐために人工授精やタイミングをとることを見送るようにすすめられたんですね。臼井先生も同じ意見ですか?
臼井先生 はい。卵胞が複数確認できた場合、特に3つ以上だった場合は、三つ子以上の重度の多胎妊娠になる可能性があるので、その周期は見送るようにお話しすると思います。
多胎妊娠を避けなければならないのはなぜですか。
臼井先生 三つ子以上の重度の多胎妊娠の場合、母体にも赤ちゃんにも大きな負担がかかります。
母体は排卵誘発剤の副作用が強く出て、卵巣過剰刺激症状を引き起こしたり、重度の妊娠中毒症になるなど、命に関わってしまうこともあります。
ロビンさんのように年齢が高い方の場合は、特にそのリスクが高くなります。
さらに、多胎妊娠だと赤ちゃんも低体重で生まれることが多く、そのために後遺症を引き起こすこともあります。
お腹の中でうまく育つことが難しいので、流産の可能性も高まってしまうでしょう。
また、重度の多胎となると、出産できる施設も限られてきます。
三つ子以上の分娩を受け入れてくれる高度な周産期センターは、東京都内でも数えるほどしかありません。
担当の先生は、きっとこのような多胎妊娠の厳しい状況をよくご存じで、見送ることをおすすめされたのではないでしょうか。

リスクを避けるために

ロビンさんは、人工授精を先生から止められましたが、タイミングはとりたいと思っていらっしゃるようです……。
臼井先生 多嚢胞性卵巣排卵障害ということでなければ、HCG製剤を打たなくても排卵はされると思いますが、人工授精同様、タイミングをとることもおすすめできません。
やはり、多胎妊娠になってしまう危険性はあると思います。
一般不妊治療において多胎妊娠を防ぐ方法はあるのでしょうか。
臼井先生 多胎妊娠は排卵誘発剤によって引き起こされるので、一番の防止策は排卵誘発剤を使わないことです。
使うのならば少なめに。
ロビンさんはクロミッドⓇを1日1錠5日間服用しています。
これは決して強い誘発ではないのですが、それでも効きすぎるようなら薬の量を抑えて半錠にするなど、さらに少なくすることです。
あるいは、卵胞が3つ以上確認されたら1つだけ残し、残りの卵胞は吸い取って人工授精をするという方法もありますが、これは一般的な方法ではありません。
多胎妊娠は予防できるかもしれませんが、本来の目的である妊娠率が上がるというものではありません。
そのような方法よりは、体外受精に進まれたほうが妊娠率は上がると思います。

今後の治療は?

ロビンさんは今後、どのような治療方針を立てたらいいでしょうか。
臼井先生 ご年齢を考えると、1周期でも無駄にしたくないというお気持ちはわかります。
しかし、多胎妊娠のリスクも無視できません。
人工授精は2回と決めていらっしゃるようですが、納得されないようでしたら、もう1周期、排卵誘発剤を使わずにチャレンジされてみてはいかがでしょうか。
その結果次第で、次のステップを考えてもいいのではないかと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。