胚はどのタイミングで移植するのが望ましいのでしょうか?

胚の着床率を上げるためには、採卵周期にすぐ移植したほうがいいのか、 凍結をして待ったほうがいいのか、 福田ウイメンズクリニックの福田先生に伺いました。

福田 勝 先生 順天堂大学医学部・同大学院修了。米国カリフォルニア大学産婦人 科学教室留学後、順天堂大学医学部産婦人科学教室講師を経て、 1993 年福田ウイメンズクリニック開院。「患者さんの意向に応える のがプライベートクリニック」という考えは開院当時から変わらない。 愛犬の散歩中に、突然引っ張られて右手の指を脱臼。真横にぐにゃ りと90度曲がってしまったが、とっさに元に戻して散歩を続けたとか。 聞くだけで痛そうです……。

ドクターアドバイス

自然周期やホルモン補充周期のほうが 妊娠率が高いのは確かですが、 キャンセルというリスクもあります

さくらみるきさん(38歳)からの投稿 Q.初めての体外受精に挑戦中です。先日、4個の受精卵のうち、胚盤胞になった1個を 採卵後5日目に移植。先生に「着床率は次の周期のほうが上がりますが、どうします?」 と言われましたが、結局、勢いで移植してしまいました。凍結してお腹の調子を整えて からのほうがよかったのか、新鮮胚で移植したほうがよかったのか、一般的にはどう なのでしょうか?

さくらみるきさん のデータ

■検査・治療歴

第1子は3年前に35歳で出産。 その時はタイミング療法人工授精7回目の妊娠。 今回は人工授精を5回。 年齢のことも考え、今周期から 初めての体外受精にチャレンジ。

■現在の治療方針

体外受精においての排卵誘発はロング法。 月経1週間前からブセレキュアⓇ、 月経3日目から注射、 月経から12日目で採卵。7個採卵のうち、 すべて成熟卵だったが、受精したのは6個。 そのうち4個が正常分割、採卵から5日目で 1個が胚盤胞に。残りの3個は5日目で桑実胚。 うち1個は何とか胚盤胞になるかも、という状況。

■精子データ

運動率70%、 奇形率34%で問題なし。

ガラス化法の確率

さくらみるきさんは採卵した周期にすぐ移植しましたが、担当医の先生や実際に体外受精をした人から「胚は凍結して、次の周期に移植したほうが着床率が上がる」と聞いて、少し後悔されているようです……。やはり、凍結胚移植のほうがよかったのでしょうか?
福田先生 昔は、卵巣過剰刺激症候群や子宮内膜の環境が悪い、余剰卵があるなどの理由から胚を凍結することが多かったのですが、近年、凍結技術が進み、急速に凍結ができるガラス化法が確立されてからは、何も問題がなくても胚を凍結して移植する施設が増えてきました。
その理由の1つとして、さくらみるきさんの担当の先生がおっしゃるように、確かに採卵した周期より、凍結融解胚を自然周期やホルモン補充周期で移植したほうが妊娠率が高いというデータが出ているからです。
当院でも比較すると、そのような結果が出ていますね。

胚と内膜の同期化

なぜ自然周期やホルモン補充周期に移植したほうが妊娠率が高いのでしょうか。
福田先生 胚を凍結すると、子宮内膜の環境を整えてから移植することができます。
妊娠するためには、胚の発育と子宮の内膜の同期化ということが必要になってくるんですね。
この2つの流れがきちんと合っていないとうまく着床しませんから。
ということは、妊娠するためには凍結融解胚での移植がベスト、ということになりますね。
福田先生 そう考える施設もあるかもしれませんが、僕は100%凍結胚移植がいいとは思っていません。
いかに凍結技術が進んだとはいえ、リスクはゼロではない。
精子においてもそうですが、胚も融解する時にダメージを受けてしまうことがあります。
変性してしまったら移植できませんから、キャンセルもありうるということです。
年齢が高い方で採れた卵子が少ない場合、それはショックなことですよね。
また、さくらみるきさんも「勢いで移植してしまった」とおっしゃっていますが、患者さんには当然「早く移植したい」という気持ちがあると思います。
いくら妊娠率が高いといっても、あれもこれも凍結胚移植、ということではなく、子宮内膜の状態やリスク、それに患者さんの心情も加味したうえで、移植の時期を選択していくべきだと思います。

採卵周期と黄体補充

今回は結局、採卵周期で移植をされていますが……。
福田先生 担当の先生も、子宮内膜やホルモンの状態を十分チェックし評価したうえで、この時期の移植を判断されているのだと思います。
間違った選択はされていないと思いますよ。
排卵誘発にはロング法を用いているそうですが、ロング法ではGnRHアゴニスト製剤の点鼻薬を使用します。
さくらみるきさんが使っているブセレキュアⓇがそうですね。
この薬を使うと黄体に対する黄体ホルモン(LH)の刺激が低下しますから、当然、黄体ホルモンの分泌も減ってきます。
そうなると黄体機能不全を起こしやすくなってしまうので、黄体ホルモンを補充しなければいけません。
それがきちんとできていれば、採卵周期の移植でも問題ないと思います。

治療はケースバイケースに

さくらみるきさんの通っているクリニックでは、今回は次の周期を提案したものの、本来は凍結ではなく、採卵周期での移植を基本としているそうです。そのような施設もあるのですね。
福田先生 施設によっては採卵周期、つまりフレッシュな胚での移植がいい、という考え方の所もあるようですが、僕はそれもちょっと違うと思うんです。
受精卵の因子だけを考えたらそうかもしれませんが、それでは子宮内膜の環境はどうするのか、ということになりますよね。
ホルモンの問題だけであればホルモンをちゃんと補充して新鮮胚で移植する、また、卵子がたくさん採れた場合は、逆に考えれば卵巣過剰刺激傾向にあるので、その場合は凍結してすぐに戻すのを避けるようにするなど、僕はケースバイケースだと思っています。
患者さんによって状況が異なるので、何が基本とは決めずに、柔軟に考えていますね。
今後の治療方針は?
福田先生 今回、採卵周期で移植されたのは間違いではなかったと思いますが、もしそれで結果が出なかったら次は移植周期を変えてみるというのも1つの方法だと思います。
先生から説明をよく聞いて、前向きに治療を続けていただきたいですね。
※タイミング療法:基礎体温や尿中または血中のエストロゲンや黄体形成ホルモンを測定して、排卵日を予測し、その排卵日前後に性交渉を行う不妊治療の一つ。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。